6月2日は「裏切りの日」。
日本の歴史で”裏切り”といえば、なんつってもこのコレでしょ。
1582年6月2日、「敵は本能寺にあり」と明智光秀が主君の織田信長を討った本能寺の変が起きた。
いまの日本で裏切り者といえば、男なら明智光秀、女なら「裏切りは女のアクセサリーよ」で有名な峰不二子と考えられている。(たぶん)
松永久秀や小早川秀秋の裏切り行為も有名だし、中国史でいうならやっぱり呂布か。
ただ呂布は三国志の最強キャラで、その裏切り行為はもはやスガスガしいし、最期はわりとかわいそうだから日本での人気はかなり高い。
では、西の裏切り者といえば誰か。そしてその理由は?というのが今回の話。
まえにアメリカ人とこの神社へ行ってきた。
個人的な経験からいうと、京都の貴船神社はこのアメリカ人だけでなく、タイ人やリトアニア人、香港人からも人気が高かった。
外国人を連れて行くなら、自然豊かなこの神社はかなりのオススメ。
貴船神社の境内を歩いていると、日本語を学んでいたアメリカ人が「おい、これはすごいな。何て言うんだ?」と言ってある木を指さす。
ああ、それはヅラじゃない、桂だ。
というのは置いといて、彼は貴船神社にあった桂の木を見て驚いた。
これはウィキペディアにあった桂の画像
桂を英語で何と言うのかスマホで検索したら、「the Japanese Judas tree」(日本のユダの木)と出てきた。
その画面を見て、2人で不思議空間へ突入。
ユダって、キリスト教の聖書に出てくる「イスカリオテのユダ」のこと?
ユダは人名で、イスカリオテとは彼の出身地を表すと言われている。
聖書には複数のユダさんが出てくるから、ほかと区別するために「イスカリオテのユダ」と呼ばれているワケだが、欧米人がユダと聞けば普通はこの裏切り者を連想するはず。
ユダはイエス=キリストを裏切り、30シェケルの金で売り渡そうとユダヤ教の祭司長らにもちかけた。
あるときキリストがゲッセマネで祈りをささげていると、ユダは彼に近づきキスをする。
それよってその人物がキリストだと分かった祭司長や群衆らは彼を捕まえて連行し、のちにキリストは処刑された。
キリストを売ったことを後悔したユダは、最期は首をつって死んだと聖書にある。
『使徒言行録』によると、ユダはその金で土地を買ってそこに落ち、内臓がすべて飛び出して死んだことになっている。
どっちにしても彼はキリスト教世界で最大最悪の裏切り者だ。
自殺するユダ
「この中の1人がわたしを裏切る」と予言するキリストと、あわてる弟子たち(最後の晩餐)
さて、小五郎なら分かるけど、ユダと桂に一体どんな関係があるのか?
そのときいたアメリカ人が調べてみると、もともと桂の木はアメリカやヨーロッパにはなかった。
ユダが首をつって死んだというセイヨウハナズオウは「Judas tree」と言われていて、これが桂に似ていることから、英語圏で桂の木は「日本のユダの木」と呼ばれているという。
彼の話では、欧米社会ではユダに対して「自分を味方だと信じ込ませてから、後ろからナイフで刺すような人間」というイメージがある。
卑怯な裏切り者がいたら「あいつはユダのようだ」と言うらしい。
ユダは世界中で有名だ。
ダンテの『神曲』では地獄の最下層、氷地獄コキュートスで魔王に噛み締められ、苦痛に苦しむユダが描かれている。
映画ではイタリアマフィアが裏切り者を処刑するまえに、「死の口づけ」をするシーンが出てくる。この元ネタは、ユダがキリストを裏切ったあの合図。
日本でもユダはいろんなアニメやマンガで取り上げられている。
『ゴルゴ13』の13は「ゴルゴダの13番目の男(=ユダ)」を示しているという。
『聖☆おにいさん』はとても日本人的な発想で、ダンテの『神曲』に出てくる地獄から解放されたユダが、キリストと仲直りしたというハッピーエンドになっている。
代表的な裏切り者といっても明智光秀は日本人からの人気はそこそこあるし、「光秀まつり」なんてイベントも行われている。
それに対して、西洋世界のユダはダークで非情で卑怯な存在で、「共感ポイント」がまったくなさそう。「ユダまつり」なんて開いたら、悪魔崇拝者のイベントと思われるかも。
明智光秀は宗教には関係ないし、日本人には「水に流す」という発想があるから、同じ人物をいつまでも憎み続けることはない。
と言いたかったけど、牟田口廉也がいた。
現代の日本人としては数百年前の裏切り者より、同じ日本人の命を粗末にした人間のほうが許せないはず。
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梅雨と紫陽花(あじさい)は、日本人と中国人のコラボレーション。
「イスカリオテのユダ」は、明智光秀や呂布とは違い、宗教関係者ですよね。
政治家や軍人に分類される人で、欧米の有名な裏切り者だったら、ここはやはり「ブルータス、お前もか!」とジュリアス・シーザーに言わせたブルータス・ジュニアではないでしょうか。
以下、Wikipediaより引用:
> この台詞で最も有名なのは劇作家ウィリアム・シェイクスピアの『ジュリアス・シーザー』における台詞で、シェイクスピアの影響から西洋では “ラテン語: Et tu, Brute?” は親しい者からの裏切りを意図する格言として定着した。