野球の国際大会「プレミア12」がいま日本で開催されていて、日本はあした23日に台湾と試合を行う予定。
その台湾代表のメンバーで日本人の注目を集めたのが、「吉力吉撈・鞏冠」さん。
この選手は台湾の先住民・パイワン族の出身で、日本の放送では「キチリキキチロウ・キョウカン」という読み方が付けられていて、あまりにキャッチーだったためトレンドにも上がった。
台湾の総人口は約2340万人で、そのうちの95%以上が漢人(漢族)で占められていて、先住民は16の民族すべて合わせても約2.5%(59万人)と圧倒的に少ない。
先住民は漢族とは違う言葉や文化、習慣をもっているため、こんな中国人(漢人)とはまったく違う名前の人もいる。
一方、朝鮮半島では、歴史的にほとんど同じ民族で占められていて、現代の韓国社会にこういった複雑な事情はない。
台湾先住民
親日的な国は世界中にあるけれど、台湾の「日本好き」は別次元にある。
先週、台湾で行われた「プレミア12」で台湾代表が試合をしている最中、球場の巨大スクリーンが切り替わり、別会場で試合をしていた「日本 vs キューバ」戦の様子が映し出された。
球場にいた台湾の観客は日本を応援し、日本が勝つと喜びを爆発させる。日本人がこれを知って感激し、ネット上では「謝謝台湾」の言葉が書き込まれたのも記憶に新しい。
自分たちの代表が試合をしているのに、それを“無視”して、日本を応援するのは台湾以外では考えられない。
韓国人の読者が上の記事を読んでこんなコメントをくれた。
「(韓国は)日本を誤解し、日本を敵視し、無視する状況で、正しい国際人の精神を持つことができないということです。それで私は台湾人たちのあんな考えが羨ましいです。」
台湾の人たちが日本を好きな理由の一つに、1895年から1945年までの日本統治について、あまり悪い印象を持っていないということがある。
同じように日本の統治を経験した韓国では、歴史教科書に日本の残虐行為と自国民の苦しみが強調されていて、それが現在の日本に対する認識を形成している。
台湾の歴史教育では、その時代に近代化が実現されたという肯定的な評価もあるため、その日本に対する見方が韓国と根本的に違うのだ。
台湾と韓国での日本認識が違う原因には、このほかにも先住民の存在があると思われる。
日清戦争で勝利した結果、中国(清)に代わって日本が台湾の統治を始めると、先住民がそれに反発し、武力衝突に発展することが何度もあった。
そんな抗日事件の中で最大規模のものが、1930年(昭和5年)に発生した「霧社事件」だ。
セデック族が襲撃し、130人以上の日本人を殺害したことから、日本軍が中心となってセデック族の掃討作戦を開始し、700人(または1000人以上)の先住民が死亡した。
霧社事件のほかにも抗日事件は何度も発生し、多くの先住民が殺害されている。
日本が台湾統治の歴史で、そんなヒドイことをしたのは歴史的事実で、台湾人も知っているが、それでも日本を好きでいてくれる。
「過去は過去で、今は今」と割り切っているのかと思ったら、話を聞くと基本的な発想が違っていた。
前に2人の台湾人と話をしていたとき、霧社事件や抗日事件があっても、日本の印象が悪くならないのか聞くと、「それは原住民の話で、私たち漢族にはほとんど関係ありませんから」と言うから驚いた。
(日本統治時代の朝鮮半島で同じ悲劇があった場合、現代の韓国人がこんなことを言うとは思えない。)
2人ともそんな抗日事件よりも、1937年に起きた南京事件のほうが重要だと言う。彼女たちの認識では、これは30万人の中国人(漢族)が日本軍に殺害された「南京大虐殺」だ。
同じ台湾島であった出来事でも、被害者が原住民なら当事者意識はなく、違う中国大陸で起きた出来事でも、被害者が同じ民族なら自分たちの問題と考えているらしい。
だから、2人とも日本軍は大嫌いだけど、日本の台湾統治については生活が豊かになったと好意的に考えていた。
現代の韓国に先住民はいないから、韓国人にこういう発想はないはずだ。
台湾の複雑な民族構成が日本に対する見方にも影響を与え、韓国との日本観の違いにつながっていると思う。
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