台湾人女性が日本語を使っていて、自分に自信をなくしたわけ

台湾の南部、京都の高雄に由来する高雄市には、地域住民の寄付によって立てられた安倍晋三元首相の像がある。
ことし4月、高市氏が訪台してその像に献花し、「安倍元首相がどれほど多くの素晴らしい財産を日本人や台湾の皆さんに残したかを知った。日台の深い友情を守り続けていく」と述べた。
そんな高市氏が日本の首相になったことで、台湾との絆はさらに強くなる予感しかしない。

今回のゲストは20代の台湾人女性だ。彼女は台湾の大学を卒業した後、日本に来て現在は日本企業で働いている。ここでは名前を「娘娘(ニャンニャン)」にしえt、彼女の悩みを聞いてみよう。

 

ーー外国人が日本に住んでいると、日本の影響をうけて性格や価値観が変わることがある。知り合いのバングラデシュ人女性は一時帰国したら、家族や友人から「笑い方がひがえ目になったし、態度もおとしくなった。前みたいな元気がなくなったけど大丈夫?」と心配されたらしい。
娘娘も5年も日本に住んでいたら、中身が「日本人化」してこない?

それはありますね。自分に自信がなくなった気がします。

ーーえ? 台湾の名門大学を卒業して英語も日本語もできる、高スペック女子のニャンニャンが? 周りの日本人が自信をなくすならわかるけど。

日本の社会は上下関係が厳しくて、日本語には丁寧な言葉が多いから、日本語を話しているとなんとなく自信がなくなってしまうんです。

ーー台湾語には丁寧な言い方はないの?

もちろんありますよ。友達や家族には「你(ニー:あなた)」と呼びますけど、お客さんには丁寧な「您(ニン)」を使いますし、「〜さん(様)」の意味で「〜先生」と言います。

ーー職場ではどう? アメリカも日本ほど上下関係にうるさくなくて、日本語みたいな敬語はない。知り合いのアメリカ人女性は新入社員だったころ、50代の上司を呼び捨てやニックネームで呼んでいた。それもファーストネーム。20代の新人が石破茂部長に向かって「シゲル」とか「シゲ」って呼ぶようなものだから、日本だったら許されないね。外国からやって来たという設定のアニメキャラなら、そう言うかもしれない。

台湾でもそれはダメですよ。上司には日本みたいに、「苗字+役職名」で呼ぶことが多いです。でも、日本の社会みたいに、年齢や性別によって言葉を細かく使い分けることはありません。日本に比べると、台湾では対人関係の距離が近くて、どんな人にもフレンドリーに接することができるんです。店員も最初は丁寧でも、すぐに「タメ口」を使ってきます。

ーーそう言えば、別の台湾人からもそんな話を聞いた。日本語の一人称には「俺」「わたし」「ぼく」「自分」とたくさんあって、自分と相手の立場に応じて適切な言葉を選ばないといけない。でも、台湾では上下関係をそこまで重視しないから、「我」しか使わない(例外はある)。相手が年上でも性別が違っていても、自分のことは「我」と言えばいいからラクなんだって。

私は女でいつも「わたし」を使っているので、そういう大変さはありません。わたしの場合は、たとえば「〜させていただきます」という言葉が丁寧すぎて好きじゃないんです。自分の立ち位置を下げて相手に敬意を示す考え方はわかりますけど、「なんで自分をそこまで下げるの? そんなにへりくだる必要がある?」って思っちゃいます。

ーー韓国人もそんな不満を言ってた。「“〜します”で十分でしょ!」って。東アジアはわりと文化が共通しているけど、敬語文化は日本で異常に発達したのかな。なんでだろ?

本当にそう思います。「〜します」だけで十分ですよ。日本語で相手を尊重する言葉を使っていると、自分の価値が下がるような感じがして、自信がなくなっちゃうんです。私が間違った敬語を使って「そういう言い方は失礼だ」と言われると、凹みますし。

ーー僕もそんな経験をした。英語でアメリカ人と話していて、ちゃんと伝わっているか不安になって「アンダースタン?」って聞いたら、「そんな偉そうな言い方をするな」って怒られたことがある。それは、上司が部下に言う感じらしい。なんかそれは、上司がポンコツな部下に言う感じらしい。

ネイティブじゃない人にはやさしさが必要ですよ。

ーー日本人は初心者にはかなりやさしい。外国人が「コレ、オイシイデス!」と言うと、「日本語が上手ですね」って褒めるのに、ある程度話せる外国人には厳しい。そんな気がしない?

そうですね。最初のころは何度も大げさに褒められて、逆に引きました。今は日本語を褒められたいと思いませんけど、失敗は大目に見てほしいですね。

 

 

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この記事を書いた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。
また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。

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