ネットを見ると、日本のマスコミに「欧州随一の親日国」や「No.1親日国」と言われているポーランド。
そんなポーランドには日本にはない精神がある、というのが今回のテーマだ。
ちなみに、この国を“東ヨーロッパの国”と言うと、ポーランド人はきっと不快になるので、“中央ヨーロッパの国”と呼ぼう。
日本とポーランドの歴史の違い
長い歴史の中で一度も異民族の支配を受けたことがなく、革命も起こらなかった。だから、皇室はギネスで「世界最古の王朝」として認められている。
ポーランドはそんな日本の反対側にある。
ポーランドは歴史的に、ドイツ(プロイセン)、ロシア、オーストリア(ハプスブルク帝国)といった強豪国に囲まれ、地理的には地獄のような過酷な環境にあり、18世紀には3度にわたって分割された。
1795年10月24日の最後(第三次ポーランド分割)では、上の三カ国に領土を食い尽くされ、ポーランドは滅亡した。
日本は古代から続いていて、植民地にされたり滅亡したりした経験は一度もない。
日本に住んでいたポーランド人(30代・男性)にそんな話をすると、彼は「それは本当にうらやましい。ポーランドでは考えられないほど恵まれている」とため息をついた。でも、他国に何度も侵略され、蹂躙された歴史をもつポーランドには現代の日本にはないような精神があるという。
それは、「私たちとあなたの自由のために」という言葉に集約されている。

首都ワルシャワを走る路面電車。
ウクライナを全力支援する理由
2022年にロシアがウクライナを侵攻すると、隣国のポーランドには難民が殺到した。ポーランドは100万人以上の難民を受け入れ、各自治体が無料で泊まれる施設を用意したり、食べ物など生活に必要な物資を提供した。それとは別に、難民を自分の家に泊める市民もいたという。
ポーランドはヨーロッパの中であまり豊かな国ではないから、こうした負担は国民に重くのしかかる。
先ほどのポーランド人が言うには、こうした積極的な支援活動の根底には博愛精神だけでなく、ポーランドの愛国心がある。もし、ウクライナが戦争に負けたら、ポーランドがロシアと直接的に接することになる。
ポーランドはロシア(ソ連)が原因で何度か滅亡した経験があるため、二度と祖国を失いたくない、自由を守り抜こうとする精神はとても高いという。だから、ロシア侵攻の後、軍事組織に入って訓練を受ける市民も増加した。
私たちとあなたの自由のために
彼は、ポーランド人は自国の自由を守るためだけではなく、他国の自由を守るために、ポーランド人は命をかけて戦うことがあると強調した。
それが第三次ポーランド分割で、ポーランドが地図上から消えた後、ポーランド人が掲げた「私たちとあなたの自由のために(For our freedom and yours)」という言葉に表れている。
この言葉が初めて確認されたのは、1831年にワルシャワで行われた愛国的なデモ活動とされる。
祖国だけなく、他国の自由のために戦うという大義を体現したポーランド人に、アメリカ独立戦争で、義勇兵としてアメリカ軍とともに戦ったタデウシュ・コシチュシュコがいる。
「私たちとあなたの自由のために」のモットーは、現在のポーランドに大きな影響を与えている。ポーランドの外交政策や外交活動は、他国の自己決定権、民主的統治、人権尊重を支援することが使命であるという信念に基づいて進められているという。
To this day, Polish foreign policy and diplomacy are guided by a belief that it is Poland’s mission to support rights for self-determination, democratic government and a respect for human rights in other countries.
自国や他国のために戦って亡くなり、自分の命をかけて守った自由を見ることができなかったポーランド人も多い。
いっぽう、日本の愛国心はとても低い。世界の約80カ国を対象に「もし戦争が起こったら、あなたは国のために戦うか?」というアンケートをしたところ、日本は最下位を記録したこともある。
自国のために戦わない人間は、他国の自由のために命をかけるワケがない。
日本は恵まれすぎていて、「私たちとあなたの自由のために戦う」という精神はないと言っていい。

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