ポーランド人が見た日本 同じ習慣・違う感覚・驚いたこと

 

パリ五輪に出場するバレーボール男子日本代表が、事前合宿の場所として東ヨーロッパのポーランドを選んだ。
知らなかったのだけど、ポーランドは男子バレーで世界ランキング1位の超強豪国らしい。
せっかくだから、それにあやかって今回はワルシャワ出身で、日本の学校で英語を教えていた経験のあるポーランド人女性から聞いた話を紹介しよう。

これがポーランドの基本スペック。

面積:32.2万平方キロメートル(日本の約5分の4)
人口約3,840万人(2019年)
首都:ワルシャワ(約176.4万人)

ポーランド共和国(Republic of Poland) 基礎データ

 

ーーまず、悲報があるですけど、日本でポーランドはあまり知られていません。

知ってるww

首都ワルシャワよりも、つるりんこシリーズの『シュワシュワ』のほうが有名なくらいです(いや知らんけど)。
地理的にも文化的にも遠いポーランドと日本で、似ているところって何かありますか?

もちろん。
日本人と同じように、ポーランド人も家に入る時にはふつうは靴を脱ぐの。
床は畳じゃなくてフローリングだから、私は家でスリッパをはいてた。
*彼女は今はアメリカに住んでいる。

ーーへ~、「欧米人=靴をはいたまま家に入る」ってイメージがあったから、それは意外ですね。
日本の文化には、鯉のぼりやひな祭りみたいに中国に起源をもつものもあるんですが、畳はそうじゃなくて、日本で生まれた独自の文化なんです。

 

ワルシャワの街並み

 

ーーまえに、日本へ来たイギリス人のカップルからこんな話を聞きました。
コンビニに入ると、店員から「いらっしゃいませ」と言われて、何も返事をしないのは2人とも心苦しかったそうです。イギリスではあいさつをしたら、必ず返すのが最低限のマナーらしくて。

あなたも日本でそんな思いをしましたか?

その気持ちわかるー。
日本の文化ではOKというのはわかるけど、あいさつをされて無視するのはツラい。
かといって、「いらっしゃいました!」とも言えないから、日本でそう言われたら、軽く頭を下げることにしていたわ。

ーー「きたよー」とか返事をされても店員は困りますからね。何かリアクションをするなら、会釈が最適解です。
ほかに日本で感じた違いってあります?

ある。
『アリとキリギリス』の話には驚いた。

 

キリギリス「やあ、アリ君、いつもお仕事頑張ってるね(つまんねー人生だな)」
アリ「やあ、キリギリス、ヴァイオリンを弾くのは楽しいかい?(おまえ、もうすぐ詰むからな)」

 

ーーそれは、古代ギリシアのイソップ物語にある有名な話ですね。
暑い夏、アリは一生懸命に働いていたのに、キリギリスは楽器を弾いて楽しんでいた。そのまま秋が過ぎて冬がくると、キリギリスは食べる物が無くなって困ってしまった。そこで、アリに食べ物を分けてもらって、キリギリスが泣いて感謝して心を入れ替える。
日本語で言うところの「自業自得」や「因果応報」の話です。

そう、それ。
日本の学校でその話を聞いた時、最後にアリが食べ物をあげると知って驚いた。
私が子どものころポーランドで読んだ『アリとキリギリス』でも、キリギリスは音楽を楽しんでいて、冬に食べ物が無くなって困った。でも、アリは食べ物を与えなかったから、キリギリスは飢え死にしたの。
何をするのも自由だけど、その責任は必ずとらないといけない。
日本の話を聞いて、「同じ結果になったら、物語の教育的な意味が無くならない?」って疑問に思った。

ーーイソップ物語にあるオリジナルでは、最後にキリギリスは死んでしまうけど、日本ではそうなっていないんです。
幼稚園児や小学生が読む話が「死」で終わると重すぎるから、教育的配慮でそうなっていると思いますよ。
話を聞いて思ったけど、日本に比べて、ポーランド社会では「選択と責任」が重視されているかも。
それと、まえに読んだ本で、神道の影響を指摘する人がいたんです。
神道では死を最大の穢れと見なしているから、『アリとキリギリス』で日本人はその描写を避けた。さらに、神道では、木や石などの自然物に「神」が宿っているという考えが重視されているから、擬人化されたキリギリスを昆虫よりも、ヒトに近い存在と認識したと。
その説が正しいかどうかは分かりませんが、日本の文化には、死を強く避ける傾向があることは間違いないです。

同じ話でも、国によって内容が変わるのはよくあることよね。
『セーラームーン』もそうだった。
ポーランドで見たものは、天王はるかと海王みちるが「とても仲良し」っていう設定だったのに、日本のオリジナル版では2人がレズビアンと知って驚いた。

ーーそれは日本人にも衝撃を与えましたから、2人は「百合界のカリスマ」と言われています。

それに、私が読んでいなかっただけで、ポーランドにも、最後にアリが食べ物をあげるバージョンがあるかもしれない。
価値観は時代によっても変化するから、今のポーランドにある『アリとキリギリス』の最後がどうなっているのかは知らない。

*最近の日本では、鬼を退治しないニュータイプの『桃太郎』がある。
「ぼくは鬼と戦わない。話し合いで解決しようと思う」と桃太郎が刀を置いて鬼ヶ島へ行き、鬼と一緒に酒を飲んで語り合い、仲良くなるというもの。

ーー日本人のボクからすると、ヨーロッパ人の動物愛護の感覚のほうが不思議ですね
物語ではキリギリスを見殺しにするのに、現実ではカニやエビを調理する時、痛みを感じさせないように、気絶させてから殺さないといけないとか。

ヨーロッパ人の動物愛護:カニやエビを”安楽死”させるわけ

ほとんどの日本人はこの感覚に共感できないと思います。

どっちの気持ちもわかるwww

 

 

日本 「目次」

「ポーランドは親日国」の3つの理由②日露戦争での日本の勝利

動画で英語を学ぼう 226 ポーランド人は日本をどう思う?

日本の「ウクライナ降伏論」を、ポーランド人はどう思う?

「韓国起源説に怒る日本人」で、ポーランド人が思ったこと

米国人が感じた日本人とポーランド人の違いは「サービス精神」

 

1 個のコメント

  • > 物語ではキリギリスを見殺しにするのに、現実ではカニやエビを調理する時、痛みを感じさせないように、気絶させてから殺さないといけないとか。

    アリとキリギリスはどちらも(擬人化された)昆虫であり、対等の立場です。なので相手に教訓を与えて自己責任を取らせる。相手はおそらく死ぬだろうが、もしかすると生き残るかもしれない。
    これに対し、人間に捕らえられたカニヤエビは「食料」であり、人間に食われるため確実に殺されます。すなわち人間が完全に生殺与奪の権を握っているわけです。したがって殺すときにはせめて苦痛のないようにしてやろうと。これはつまり「憐れみ」と「安楽死」の発想なのでしょうね。

    日本人としては、相手が自分の間違いを認め謝罪した時点で、憐れみを感じて情状酌量してやってもいいと思いますが。たかがいっとき(働くべき時に)遊んでいただけ、特に損害を及ぼした訳でもないだろうに。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。