【チャールズ1世】無能で働き者の王は処刑するしかない

 

ドイツの軍人ゼークトは、軍人には次の4つのタイプがあるという。

有能な怠け者は指揮官にせよ
有能な働き者は参謀に向いている
無能な怠け者は連絡将校か下級兵士が務まる
無能な働き者は処刑するしかない

ゼークトが本当にこんなことを言ったのか、確実なことは分かっていないが、最後のオチが秀逸で、この言葉がよくネットで使われる。
適切な判断力のない人間が積極的に働くとかえって状況を悪化させ、まわりの人の仕事が増えて大迷惑になるから、無能な働き者に対しては強制的に活動を止めるしかない。
これが下級兵士ぐらいならいいが、強大な権力の持ち主だと本当に始末に困る。

 

チャールズ1世(1600年 – 1649年)

 

1625年に即位したチャールズ1世は、スペインやフランスと戦争をしたが敗北し、イングランドの国庫はスッカラカンになり、財政は破綻寸前となった。
そのためチャールズは法律を無視して、国民から強制的に税金を集めようとし、それに反対する者がいたら、問答無用で逮捕して牢屋にぶち込んだ。
それで1628年、英議会は王に対し、「議会の承認なしに課税しない」「正当な理由なしで国民を逮捕・投獄しない」といった国民の権利を保証することを要求した(権利の請願)。
「わかった。その約束は守ろう」という賢明さがあれば、チャールズ1世の首から上が無くなることはなかっただろう。

「王の権利は神から与えられたもの(=誰も王のすることに反対してはならない)」という王権神授説をとっていた彼は権利の請願に逆ギレし、それを出した中心人物を捕らえてロンドン塔へ入れてそこで獄死させる。

チャールズ1世はこれを鎮圧しようとしたが、逆に負けてしまい、賠償金の支払いに迫られた。その賠償金のため、または再びスコットランドと戦うために、王は議会を招集して課税の承認を取ろうとした。
しかし、議会で国王は袋叩きにされ、課税の承認を得るどころか、16411年のきょう11月22日(いい夫婦の日)、チャールズ1世の悪政を列挙した「議会の大諫奏」(大抗議文)がイングランド議会で可決された。
それを国王は「ふざけるな!」と怒り、その受け取りを拒否したことで、議会との対立は決定的となる。翌年1642年に清教徒革命(イングランド内戦)が起こり、これに敗れたチャールズ1世は捕らえられた。
彼は裁判にかけられ、

「暴君、反逆者、殺人者、この国の善良な人々に対する公共の敵」

とボロクソに言われ、1649年に首を切断された。

戦争を起こし、負けるとその穴埋めに国民に重税を課す。周囲の人間が忠告しても耳を貸さず、その悪政に抗議すると激怒し、逮捕・投獄する。そんな無能で働き者の王はもう処刑するしかなかった。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。