「蔣介石は民主化の父」発言に、台湾人と日本人が怒ったわけ

最近、日本のテレビ番組がやらかした。台湾の歴史について「不適切」な説明をしてしまい、批判が殺到し、放送後にミスを認めて謝罪した。
日本にはかつて台湾を統治していた歴史があるが、現在の台湾は日本に対してとてもフレンドリーだ。個人的には、「日台関係」と書いて「マブダチ」と読んでいいと思っている。そんな大切な友人を怒らせることがないように、今回は台湾の近代史を学ぼう。

 

1912年のきょう8月25日に、宋教仁(そう きょうじん)や孫文らが国民党を結成。
しかし、国民党は絶対的な権力者だった袁世凱に嫌われ、宋が暗殺されるなどして、数年後に消滅した。
命の危険を感じた孫文は「そうだ日本、行こう」と亡命し、1914年に東京で中華革命党を結成した。この党が後に中国国民党(国民党)となる。
ちなみに、孫文は中国や台湾では一般的に「孫中山」と呼ばれている。この「中山」が日本人名であることを知っている中国人や台湾人は意外と少ない。

中国・台湾人が尊敬する「孫中山(孫文)」は日本人名だった

第一次世界大戦が終わった翌年、1919年に中華革命党が進化して「中国国民党」が成立し、21年には中国共産党が誕生した。この時、日本という「共通の敵」がいたため、国民党と共産党はタッグを組み、1924年に第一次国共合作が成立。
しかし、1945年に日本がアメリカに降伏し、中国から撤退すると、蒋介石をトップとする国民党と毛沢東をトップとする共産党の内戦がはじまった。これに敗れた蒋介石や国民党員は台湾へ逃げ込み、日本に代わって台湾を統治するようになる。その後、国民党は台湾で独裁的な政治を行い、それに反発する形で民主化運動が発展していく(台湾の民主化)。

 

最近、日本のテレビ番組がこんな歴史を否定するような放送をし、物議をかもす。
産経新聞の記事(2025/8/25)

テレビ愛知の番組、蔣介石を「台湾民主化の父」 ホームページで謝罪「歴史認識の不足」

テレビ愛知が制作した台湾の旅番組の中で、蔣介石を「台湾の民主化の父」と紹介した。
ボクはその番組を見ていなかったけど、ネットで台湾人や日本人がSNSで「あの説明は絶対におかしい!」と怒っていたから、この発言は知っていた。確かにこの認識はマズイ。
批判を受けて、テレビ愛知は「このような誤りが起きたのは、歴史認識の不足と、通訳との確認作業が丁寧に行われなかったことが主な原因だ」と謝罪した。

戦後、国民党は強権政治をおこない、1947年に「二・二八事件」と呼ばれる台湾の住民を大量に殺害する事件を引き起こした。この事件の犠牲者の数には800人~10万人と諸説あるが、台湾行政院はを1万8千~2万8千人と推定している。
二・二八事件は現代台湾の最大の悲劇と言っていい出来事だ。
この事件の背景についての研究が進み、2006年には、その最大の責任者は蔣介石であったと発表された。

【結果的に親日】台湾人を分断した、悪夢の二・二八事件

台湾の民主化運動は、国民党の一党独裁に対してはじまった。それに、こんな虐殺事件を起こした人物を「台湾民主化の父」と呼ぶのはおかしい。台湾人や台湾の歴史を知っている日本人にとっては、このような美化は見当違いというか、挑発行為だ。
蔣介石が亡くなってから20年以上後の1996年に、台湾で初めて総統直接選挙が実施され、それを実現させた李登輝が「民主化の父」とされている。

 

ここで書いたことは台湾の基礎的な歴史だ。だから、日台友好団体「日本李登輝友の会」の柚務局長も「あまりにも初歩的な間違いだ」と呆れている。テレビ番組が放送される前に、台湾の知識がある人が内容や表現に問題がないかチェックしていたはずなのに、どうして致命的な誤りが見逃されたのか分からない。
日本のネット民も首をかしげている。

・こんなんワザと以外ありえないだろw
・何をどう間違えたら蒋介石が民主化の父になるんだ?
・歴史を忘れた民族に未来はない
・言ってみれば韓国で李完用を褒めるような間違い
・アメリカは蒋介石への支援を打ち切った。そんな台湾を救ったのが根本博

台湾で国民党を支持する人たちの中には、蔣介石を「民主化の父」と信じたい人もいて、これが今回の出来事の背景になったと思われる。

 

 

台湾 「目次」 ①

「釣りに行ってくる」と言って台湾を死守した日本人・根本博

いまも台湾人に感謝される日本人、明石元二郎は何をした?

日本を旅行した台湾人の話①違い・驚き・好き/嫌いなこと

台湾人がアニメを見て感じた「日本と台湾の学校との違い」とは?

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この記事を書いた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。
また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。

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