10月7日、イスラム組織ハマスがイスラエルを攻撃し、地獄の門を開いた。
その後、ハマスとイスラエル軍の戦闘がはじまり、双方の死者はすでに1万を超え、さらに増え続けている。
*最新情報は「2023年パレスチナ・イスラエル戦争」で確認だ。
この危機的状況に、世界中のカトリック教会の頂点にいるフランシスコ教皇が動く、「神の名において、お願いだからやめてください。武器の使用をやめてください」とツイートした。
米CNNはこれを、教皇が神の名において停戦を「懇願」したと表現する。
日本のネット民の反応を見ると、冷ややかなコメントがほとんど。
・神「勝手に名前使うなよ」
・火に油
・いや1000年前は神の名で十字軍送り込んどったやないか
・神様も大変だな
・なにいっても無駄
・神がいれば停戦なんぞ簡単にできるだろ
ハマスが多くのイスラエル人や外国人を殺害し、拉致した後、教皇はハマスに対して人質全員の解放を求めた。が、ハマスはガン無視だ。
怒り心頭のイスラエルはハマスの拠点であるガザ地区を完全包囲し、これでもかと空爆をおこなった。
個人的に意外だったのは、フランシスコ教皇がイスラエルの自衛権を認めたこと。
これは、イスラエル軍による攻撃を容認したってことでしょ。
神が降臨して、人びとに直接「やめよ」と呼びかけるのならともかく、ローマ教皇が平和を求めれば戦いが終わるというのは非現実だ。
でも、過去にはそんな奇跡がおきたこともある。
レオ1世
5世紀、ローマ帝国が恐怖した、最強にして最悪の敵がいた。
それが、ヨーロッパ人に「神の災い」と恐れられたフン族の王アッティラ。
アッティラ軍は圧倒的な攻撃力を持ち、452年にイタリア半島へ侵攻すると、都市を次々と攻略し、皇帝は首都ローマから逃げ出してしまった。
「こんなモンスターを止められるわけない…。もう無理ぽ…」と、誰もがあきらめたかけたとき(たぶん)、ローマ教皇レオ1世が立ち上がる。
彼はアッティラと会見をおこない、この恐怖の大王に軍の撤退を約束させる。
アッティラ軍は本当にイタリアから出ていき、西ローマ帝国は滅亡をまぬがれた。
このミラクルによって、レオ1世は「大教皇」と称えられ、カトリック教会の権威は高まった。
しかし、実際には、アッティラ軍では疫病と飢餓が発生していたから、アッティラもこれ以上の進軍は困難と考え、撤退したと言われている。
『レオ1世とアッティラの会見』
それから一気に時代は進み、1914年にヨーロッパで第一次世界大戦がぼっ発。
すると、ローマ教皇ベネディクトゥス15世は中立を宣言し、「少なくとも、天使が歌った夜(クリスマス)には銃声が静まるように」と連合国と同盟国側に懇願するも、両者から拒否された。
それでも教皇はあきらめない。
1916年と17年に和平の調停を試みると、ついに双方が受け入れ、第一次世界大戦は終結したのだった。
…となるほど現実は甘くなく、ドイツのプロテスタントは「教皇の平和」を侮辱的だと考え、フランスの有力政治家クレマンソーは反フランス的であるとみなし、また双方から拒否される。
ベネディクトゥス15世による外交努力は失敗に終わった。
ただ、それは無力だったかもしれないが、無駄ではなかった。
彼の平和を求める取り組みは、ローマ教皇の威信を高めたと評価されている。
第二次世界大戦での教皇ピウス12世の平和への努力や、ベトナム戦争中のパウロ6世の政策、そしてイラク戦争でのヨハネ・パウロ二世の立場など、ベネディクトゥス15世の活動は20世紀における教皇の模範となったという。
Still, although unsuccessful, his diplomatic efforts during the war are credited with an increase of papal prestige and served as a model in the 20th century for the peace efforts of Pius XII before and during World War II, the policies of Paul VI during the Vietnam War, and the position of John Paul II before and during the Iraq War.
ベネディクトゥス15世
教皇が「神の名において、お願いだからやめてください」と停戦を懇願したことにも、ベネディクトゥス15世の影響があったと思う。
カトリック教会が平和を求める姿勢を見せないと批判されるだろうし。
ただ、今回は相手が悪すぎた。
アッティラよりやっかいだ。
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