【埋葬文化】人類共通の献花/死体を教会の壁に埋める名誉

 

世界のどこの国でも、文化の始まりは埋葬だ。
そんなことをテレビ番組か何かの本で読んで、「ほ~」っと感心したことがある。
これを満場一致で文化の起源とみなすかどうかは置いといて、いつの時代のどんな場所の人間でも、身近な人が亡くなればとてつもない悲しみを感じるし、そんな気持ちを込めて死者を送り出す方法にはその民族の価値観や考え方が表れている。
遺体を埋葬するにはそもそも死という現象を理解したり、魂の行き先や死後の世界について考えるレベルの知性が必要で、ほかの動物や昆虫にそんな抽象的な思考はムリ。

人類に共通している埋葬文化には献花がある。
墓地に花を飾ることは古来、世界中で行われていて、2013年の時点で、その世界最古の例は約1万2000年前の墓地になるとナショナルジオグラフィックの記事にある。(2013.07.03)

墓地に花を飾った最古の例、イスラエル

イスラエル北部にある洞窟で見つかった古代の墓地の土から、花や茎の痕跡が発見されたという。
日本では縄文時代のお墓で花粉が発見されたから、そのころから献花の文化が始まった。という話を聞いた記憶があるんだが、いまネットで確認してもそんな情報が出てこない。
でもそれで合ってると思うのですよ。

 

いまでも死者を悼(いた)む気持ちは人類共通で、献花の文化も広くあるけれど、埋葬の方法は主に宗教によってそれぞれ違う。
よくあるのが仏教やヒンドゥー教で行われる火葬、キリスト教やイスラム教の土葬で、変わったやり方としては、遺体の肉を鳥に食べてもらうチベット仏教の鳥葬がある。

以前、日本に住むイギリス人をお寺へ案内して、いろいろな話をしていたときに「マジかっ」と驚いたのは死者を教会に埋めること。
キリスト教世界では教会の墓地ではなくて、内部の柱や壁、床に遺体を埋めてしまう埋葬文化があるのだ。

イギリスならここへ行けば、そんな死体たちと会うことができる。

 

 

上のウェストミンスター寺院(Westminster Abbey)はロンドンにある世界的に有名なイングランド国教会の教会。
この建物は1065年の12月28日、つまり956年前のきょう竣工した。
ウィリアム1世(1027年 – 1087年)がノルマン朝の初代イングランド王となってから、イギリスの歴代の王はここで戴冠式を行っている。
ちなみにこの寺院の隣にあるのが国会議事堂(ウェストミンスター宮殿)だ。
イギリスの重要な歴史や伝統が詰まったこのウェストミンスター寺院には、イギリスの偉人や有名の死体も多数埋まっている。

内部の壁と床には歴代の王や女王、政治家などが多数埋葬されている。墓地としては既に満杯状態で、新たに埋葬するスペースはもはやなくなっている。

ウエストミンスター寺院

 

この寺院の内部に埋められた人を見ると、学者のニュートンやスティーヴン・ホーキング、「種の起源」を書いたダーウィン、詩人のチョーサーや音楽家のヘンデルなどなど世界史の教科書に出てくる超有名人ばっか。

くわしい情報はウエストミンスター寺院のホームページをクリック。

Poets’ Corner

イギリスのキリスト教徒にとっては最高に名誉なことなんだが、こういう埋葬文化は日本人の感覚だとホラーだ。

 

 

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1 個のコメント

  • > イギリスのキリスト教徒にとっては最高に名誉なことなんだが、こういう埋葬文化は日本人の感覚だとホラーだ。

    キリスト教のような埋葬文化の伝統を有する社会では、「火葬」が、不名誉な死、呪われた死体の処分、反逆者への刑、蛮族の風習、現代キリスト教文明からの断絶、などを象徴する行為とみなされることもあります。
    そのような考え方は映画にも時々表現されています。例えば映画「SW-EP6」で主人公の父親であった暗黒卿ダース・ベイダーが最後に改心して死亡した後、ラストシーンで主人公による荼毘に付されたのはその一例。また映画「アバター」では、冒頭、主人公の双子の兄が死亡して火葬にされるシーンから始まります。
    これらのシーンは、我々日本人からすると、さほどの違和感はなく「そうなのか」と納得するだけ。ですがおそらく欧米人にとっては、「我らの現代文明とは異なる未来社会、あるいは遥か彼方の銀河のハナシ」として強い違和感を抱かせるシーンになっていると思います。

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