「富士山を見にハイキングをしようと思うんだが?」
と言ったら、2人のインド人とネパール人と中国人、それとタンザニア人の留学生(全員20代の男)が名乗りを挙げたんで、1月2日に一緒に行ってきたわけだ。
きのうは中国人から聞いた話を書いたんで、今回はインド人の話を書いていこう。
・治安
まずインド人(とほかの外国人)が驚いたのは、ハイキングコース沿いに登山者が簡単に触れるような近さで山ほどのミカンがあったこと。
「もちろんミカンはインドにもある。でもインドでは果物畑にはフェンスがあって中に入れないか、外から見えないようになっているから、こんなに近くでミカンのついた木を見たことがない」と言って、ミカンの木にレア感を感じたようでそれを背景に写真撮影を始める。
こういう日本の日常はインドなら自殺行為になり、ハイカーはバッグに入るだけのミカンを入れるから、きっと木はすぐにハダカになると言う。
もちろん日本人にもそういうヒトはいるから、こんな看板が設置されていた。
フェンスで囲むなどして、盗難を物理的に不可能にすることが常識という彼らからすると、「インドだったら、こんな警告は何の意味もないですよ~」になる。
でも、こんなミカン畑は日本人の良心や誠意を象徴しているという。
日本に来てから、研究室の女性が夜9時に一人で帰ることに驚いたけど(インドだったから無事に帰宅できるかどうかはギャンブル)、日本に住んでいるとそれはまったく問題ないとわかった。
日本なら、バイクに乗った人間にスマホをひったくられる危険がないから、外でも安心してスマホを取り出して使うことができる。
こういう日本の治安の良さは本当に素晴らしい。
・天然の刑務所
海の向こうに伊豆半島が見えたんで、「伊豆はむかしは流刑地で(源頼朝が特に有名)、山の多い伊豆半島はいわば『天然の刑務所』だったんだ」と話すと、「イギリス植民地時代のアンダマン諸島がそんなところです」とインド人。
1857年にインド大反乱(インド側の視点では「独立戦争」)が起こると、イギリスはこの反乱に加わった人間を犯罪者としてどんどんアンダマン諸島へ送った。
でも、いまではそこは観光地になっているというから、アル・カポネが収容されていたアメリカのアルカトラズ島(ザ・ロック、囚人島、監獄島)と同じか。
一度も異民族に支配されたことがなく、「世界最古の国」なんていわれる日本には、現代のインド人にはアイデンティティーになっている独立戦争や独立記念日がない。
だからインド人に比べると愛国心も薄い。
アンダマン諸島にイギリスが建設した刑務所
・日本の生活で大変なこと
浜石岳の頂上に着いたらランチタイムだ。
中国人はおにぎりでタンザニア人はサンドウィッチ、2人のインド人は自作のカレーとバナナを持ってきた。
日本での生活は治安がいいし快適で気に入っているけど、ヒンドゥー教徒の彼らは宗教上の理由から、肉はシーフードとチキンしか食べられないから、日本での「イヤなところ」をあえて挙げるなら食事で困ることが多いという。
浜石岳に来る途中で寄ったコンビニでもそんなことがあり。
店内で、「このハンバーガーはとてもおいしそうだ。材料を確認してほしい」と頼まれたから、裏面を見て「牛肉が入っとる」と言うと、インド人は残念そうにハンバーガーを棚に戻す。
外国で暮らしているから、いろんな失敗をするのは想定内。
でも、個人的に恥をかいたり困ったりするミスならまだいいけれど、宗教のタブーを犯すことだけは絶対にしたくないから、肉食大国でヴェジタリアン料理の少ない日本での生活では気をつかうことが多い。
その点、キリスト教徒のタンザニア人と無宗教の中国人には食の制限がないから、日本に住んでいて食べ物の当たりはずれはあっても、「困難」というのは一切ない。
日本という国は無宗教の人間には住みやすいのだ。
・日本で驚いたこと
日本でビックリしたことは物価、特に果物の値段の高さ。
インドはマンゴーの生産量が世界第一位だから、値段はとにかく格安で、彼が住む南インドでは1キロで100円ほど、農家から直接買うとキロ当たり30円ぐらいという。
インドではマンゴーを個数ではなくて、1キロ(3~5個)単位で考えるのが普通。
彼の自宅にはマンゴー畑があって「マンゴーは無料が当たり前」という感覚だから、日本のスーパーで1つ500円のマンゴーを見たときは信じられなくて、店がケタを間違えていると思ったほど。
でも日本ではそれが適正価格で、輸入品ではなく、国産のマンゴーだと一つ数千円すると知って言葉を失った。
この2人だけじゃなくて、日本に来たインド人なら治安の良さと果物の値段の高さはきっと衝撃的だ。
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