車にランプにゲーム… 意外と日本にあるゾロアスター教

 

きょう1月30日は、1920年に東洋コルク工業(いまのマツダ)が創立された日。
さて、この自動車メーカーのロゴは「matsuda」ではなくて「mazda」なんだが、なんで「tsu(ツ)」ではなくて「z(ズ)」なのか?

その答えは、マツダの社名はゾロアスター教の神に由来するから。
これは古代イラン(ペルシア)でゾロアスターがはじめた宗教で、3世紀のササン朝ペルシアでは国教として広く信仰されていた。
ゾロアスター教の最高神は光(善)のアフラ=マズダー (Ahura Mazdā)だから、「マズダ教」と呼ばれることもアリ。
いまはイランの観光地で有名なペルセポリスを建設し、自分が王になった経緯とその正当性を刻んだベヒストゥン碑文で超有名なペルシアの王・ダレイオス1世は、アフラ・マズダーの恵みによって王になることができたと考えた。
でも7世紀にペルシアがイスラム教徒に征服されると、ゾロアスター教は衰退していく。

…とこれだけなら、日本との接点は1ミリもないけど、この宗教は形を変えて日本人のけっこう身近なところにあるのだ。

 

ダレイオス1世によるベヒストゥン碑文 

 

いまの日本でゾロアスター教といえば世界史でならう重要事項で、よく目にするのはアフラ・マズダーだ。
マツダの社名がこの光の神「Ahura Mazda」に由来することは、

「マズダーを東西文明の源泉的シンボルかつ、自動車文明の始原的シンボルとして捉え、また世界平和を希求し自動車産業の光明となることを願って名付けられました。」

と公式HPの「マツダ」の由来と意味を教えてください。に書いてある。

 

 

1909年にアメリカで創設された白熱電球のブランド名はアフラ・マズダーに由来する「MAZDA」で、 電球は「MAZDA Lamp」と呼ばれた。
それをライセンス元として、東芝がむかし電球や真空管のブランド名として「マツダ」を使用していた。

 

戦前の新聞広告(1941年)

 

古代ペルシア・王・神という関連ワードのが中二病心をくすぐるのか、日本でゾロアスター教はゲームや小説とかの創作作品で使われることがある。
聖典「アヴェスター」には、アフラ・マズダーに敵対する形でアンラ・マンユ(アンリマユ)という悪魔王が登場する。
ゲームや小説の「Fateシリーズ」ではこれをモデルとして、アンリマユというキャラが作られて、『偽り写し記す万象(ヴェルグ・アヴェスター)』という宝具(必殺技)を放つ。
また、善と悪に分かれて戦争状態になった世界を描いた『黒白のアヴェスター』の世界観や元ネタはゾロアスター教だらけだ。
まあこのへんは「知る人ぞ知る」の秘境レベルの話で恐縮。

むかし「アヴェスター」という名前のカフェが静岡にあったし、探せばゾロアスター教(マズダ教)に由来するモノは日本にいろいろあると思うのですよ。

 

 

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ヒンドゥー教の軍神インドラ:インド人と日本人の見方

【ヒンドゥー教と神道】もしインド人を神社へ連れて行ったら?

外国人から見た日本と日本人 15の言葉 「目次」

インド 目次 ①

 

3 件のコメント

  • > 善と悪に分かれて戦争状態になった世界を描いた『黒白のアヴェスター』の世界観や元ネタはゾロアスター教だらけだ。(改行)まあこのへんは「知る人ぞ知る」の秘境レベルの話で恐縮。
    > 探せばゾロアスター教(マズダ教)に由来するモノは日本にいろいろあると思うのですよ。

    それどころか、「神と悪魔の最終決戦」「最後の審判の日」など、聖書(特にヨハネ黙示録)に記述されたキリスト教文化の中にも、ゾロアスター教(を含むペルシア文化)に由来する神話・思想がいくつもあるのでは? と考えられているようですよ。

  • 若い頃に北米で住んだとき、アメリカ人と松田聖子の話をしたら「そんなすごい名前の歌手がいるのか!」と驚かれました。どうやら、日本を代表するMazda自動車とSeikoウォッチの両方に因んだ名前と思ったらしいです。

  • >日本を代表するMazda自動車とSeikoウォッチの両方に因んだ名前と思ったらしいです。
    その発想はなかった!

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。