「の」がある理由:建国記念の日とクリスマスとの共通点 

 

きのうの建国記念の日、ネットをサーフィンしてたら、こんな挑発的な書き込みを発見。

「神話上の神武天皇が即位した日をグレゴリオ暦の日付にしたもの。科学的根拠はなく、こんな非科学的な日を祝うのは日本だけ。敗戦記念日こそ日本が再出発した日だ。」

初代天皇である神武天皇が即位したと日本書紀に記されている日付を、太陽暦に直すと現在の紀元前660年2月11日になって、これが「建国記念の日」の由来になっている。
これは神話だから、事実と証明する科学的な根拠はない。
でも、そんなのはイラナイ。
なぜならこの日は「建国記念日」ではないのだから。

 

カラスが山中で迷った神武天皇に道を教えている。
サッカー日本代表のシンボルマークがこの八咫烏(ヤタガラス)だ。

 

戦前には「紀元節」といわれたこの祝日は、終戦直後に廃止された。
でもそのあとしばらくしてから、「建国の日がないのはおかしい、そんな国が世界のどこにあるのか?」という声が盛り上がって、「建国記念日」としてこの祝日を復活しようとする動きが高まる。
でも当時の野党・日本社会党がその発想は天皇を賛美するもので、2月11日の「建国記念日」は日本を戦前に戻すアブナイ行為だといって反対する。
そして社会党は神武天皇の即位ではなくて、5月3日(1947年)の憲法記念日を日本の建国の日と主張した。
でも民社党は、聖徳太子が十七条憲法を制定したとされる4月3日を推す。
与野党でもめにもめて、「建国記念の日」と「の」を入れることで2月11日にきまった。
建国記念日とならなかったのは、日本が建国された正確な日、科学的な根拠のある日にちがわからなかったから。
1966年に、2月11日を日本建国の日と認めたわけではないと国会で決められて、「建国をしのび、国を愛する心を養う日」ということでこの祝日が成立した。
「初代天皇の即位=日本国の成立」ということを絶対に認めたくない勢力がいたから、こんなややこしいことになる。

1776年7月4日に独立宣言をしたアメリカでは、その日が「独立記念日」(建国記念日)になっている。
フランスではフランス革命の始まりである1789年7月14日が建国記念日(パリ祭)だ。
中国では1949年10月1日に、毛沢東が中華人民共和国の成立を宣言したから、この日が建国記念日(国慶節)。
日本はこういう明確な建国の日がわからないから、「の」を入れることで、誕生日ではなくて「誕生したことを祝う」とちょっとぼかした言い方にしたのだ。

中学校の学習指導要領に、

「日本人としての自覚をもって国を愛し、国家及び社会の形成者として、その発展に努めること」

とあるように、改めまして日本の始まりについて考え、いまの日本をつくってくれたご先祖さまに感謝や敬意の気持ちを持つことは重要だ。
そんなことは世界中の国がしている。

これを、「こんな非科学的な日を祝うのはおかしい」ということになると、クリスマスもダメになってしまう。

 

 

「キリストのミサ」を意味するクリスマス(Christmas)。
その日、12月25日はイエス=キリストの誕生日と言われているだけで、聖書にそんな記述はなく、科学的な根拠はないから事実とは言えない。
キリストがいつ生まれたかなんて、正確に知る人は誰もいない。
だからクリスマスはキリストの誕生日ではなくて、「彼が生まれたことを祝う日」という位置付けをされているのだ。

このへんの事情は、建国された正確な日は不明だから、日本が建国されたことを祝う「建国記念の日」とよく似ている。
キリストの誕生日と同じで、日本がいつ建国されたかなんて誰にも分からない。
「こんな非科学的な日を祝うのは日本だけ」ではなくて、世界中のキリスト教徒も同じだ。
科学ではなくて物語でも、キリスト教徒にとってクリスマスが大切であるように、日本国民にとっても日本の建国を祝う日は重要ナノデス。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。