わが浜松市には、JR大嵐駅がある。
「なんだ。オオアラシか」と思ってしまいそうなこの駅名、実は「おおぞれ」と読む。
ほかにも日本には千葉の「飯給(いたぶ)駅」とか岐阜の「打保(うつぼ)駅」とか、誤解を招きそうな山形の「及位(のぞき)駅」みたいな難読駅がたくさんある。
その宝庫が北海道だ。
「長万部(おしゃまんべ)駅」はわりと有名としても、「音威子府(おといねっぷ)」、「北一已(きたいちやん)」、「安足間(あんたろま)」、「雄信内(おのっぷない)」の駅名は考えて分かるものじゃないからかなりハードルが高い。
北海道にはアイヌ語に由来する地名が多いからこうなった。
北一已、安足間、雄信内、長万部はそれぞれ「サケが産卵する川底」、「淵のあるところ」、「川尻に原野のある川」、「ヒラメのいるところ」を意味するアイヌ語だという。
さて先日の2月14日は、アメリカで1859年にオレゴン州、1912年がアリゾナ州ができた日だ。
長万部、音威子府、オレゴン、アリゾナには「先住民の言葉が地名になってる」という共通点がある。
アメリカの地図を見ると、大ざっぱにいって東側は、
ニューハンプシャー州、ロードアイランド州、ニュージャージー州、メリーランド州、ペンシルベニア州、ニューヨーク州、バージニア州、ノースカロライナ州、ジョージア州、フロリダ州
とヨーロッパに由来する州の名前が多い。
日本人でも「new」や「north」といった英語から何となく分かるのでは?
フロリダを植民地にしたのはスペイン人で、この地名はスペインの復活祭「パスクア・フロリダ」に由来するとか。
アメリカの真ん中に近いルイジアナ州は、フランス王ルイ14世にちなんで名付けられた。
ちなみに数年前のネット言葉で、「いまからお風呂に入るし、メッセのやりとりから離脱する」という意味で「フロリダる」なんて言い方があったもんだ。
ヨーロッパ人が上陸してきた東から西へ進んでいくと、アメリカ先住民に由来する州の名前が増えてくる。
アメリカ大使館公式マガジンの「アメリカンビュー」の情報なら信頼できるから、それをソースに見ていこう。
カンザス:カンサ族を表す「Kansa」に由来する。この部族の正式名称は「南風の民」で略してKansa(南)になる。
ケンタッキー:「草地」「野原」を意味するイロコイ語の言葉に由来するという。
オクラホマ:「赤い民」を意味するチョクトー族の言葉に由来する。
ノースダコタとサウスダコタ:「仲間」を意味するダコタ族に由来し、ノースとサウスは英語だからこの州名はその合わせ技。
ハワイは番外編で、「神々の場所」を表すハワイ先住民の言葉が起源だとか。
こんな感じでアメリカにある50州のうち、約半数は先住民の言葉を起源としているのだ。
北海道の地名の訳8割はアイヌの言葉に由来するというから、このへんの事情は似ている。
ただ音威子府、北一已、安足間みたいに、日本人でも読み方がワカランような難読州はアメリカにはないはずだ。
アイヌの言葉に漢字をあてた北海道の地名は、音訳だけじゃないから読み方はけっこう複雑だ。
「オタル(小樽)」や「フラノ(富良野)」ならいいとして、「ヌプルペッ」なんて漢字を見ないと誰が「登別」と分かるのかと。
こういうめんどくささは、英語にはない。
コメントを残す