どうなる日韓関係:新大統領誕生と韓国、日本メディアの反応

 

3日前に終わった韓国の大統領選挙で史上最大の接戦を制して、次のリーダーに尹錫悦(ユン・ソクヨル)氏に決まった。
当選が決まった瞬間、「我が名はユンユン!」とか言ってくれたら、日本での評価は爆上がりだったのに(ただしアニメファン)、とくそんなことはなくて残念なり。
でも、日本としてはひと安心だ。
なぜなら、反日強硬で知られるライバル候補の李在明(イ・ジェミョン)氏は過去に、

「日本が過去を否定し、歴史を歪曲し、孤立を自ら招けば、遠からず後進国に転落することになるだろう」
「侵略国家である日本が分断されなければならないのに、日本に侵略された被害国家であるわたしたちがなぜ分断というツライ目に合わなければならないのか」

なんて言うほど日本を強く批判して、支持を伸ばしていた人なのだから。
戦後最悪となったいまの日韓関係の転落のきっかけは、2018年に韓国最高裁が日本企業に賠償を命じる判決を下したこと。
日本はこれについて合意を破り、国際法にも違反していると非難しているのに、事実そうなのに、李氏は「植民支配の不法性を確認した正当な判決」と称賛し、逆に対韓輸出を厳格化した日本に「国際法に違反した」と怒る。
こんな人物が大統領になっていたら、危篤状態だった日韓関係は即ご臨終だった。

 

日本とは「未来志向の関係」を目指すと話す尹氏は、文政権下でドン底にまで悪化した両国関係を改善しようとする意欲をみせている。
実際、日本の安全保障を考えた際、日韓・日米韓の連携は欠かせない。
韓国でも日本との関係を重視する保守派の朝鮮日報にとっては、李氏より尹氏の方がダンゼンよくて、悪くない男性から告白された乙女のようなコラムを書く。(2022/03/12)

韓日関係改善、まずは食事会から

「戦後最悪」といっても、そんな状態が長くつづいたから、「人々も次第に無感覚になってきている。あえて関係改善をしなくてもいいのではないか」という雰囲気が韓国にあるという。(これは日本も同じ)
でも冷え切った関係を温めるためにも、まずは「韓日両国の首脳が一緒に食事できるような小さな関係回復から試みてくれれば」と期待をよせる。

国民の利益を第一に考えれば、ユン氏がこう言うのも当たり前。

ハンギョレ新聞(2022-03-11)

次期大統領に決まった尹錫悦氏、対日関係は「過去よりも未来…国民の利益模索すべき」

 

日本の主要メディアも、文氏から尹氏への変化を歓迎している。
新大統領の誕生を、いまの対立に終止符を打つことにつなげられるよう、両首脳が話し合うことの重要性を説く。

でも、毎日新聞が指摘するこの問題をクリアしないと、言葉を交わしても事態は前には進まない。(2022/3/11)

慰安婦問題に関する合意は骨抜きにされた。日本企業に元徴用工への賠償を命じた韓国最高裁の判決を巡っても、文政権は日本側の懸念に応えるような措置を取らなかった。

次期韓国大統領に尹氏 日韓対話立て直す契機に

 

慰安婦合意を無効化し、元徴用工問題での日本の要望を無視したままで、関係改善なんてできるワケがない。
読売新聞もそれを指摘する。(2022/03/11)

最大の難題は、日韓関係だ。韓国の最高裁が、元徴用工(旧朝鮮半島出身労働者)訴訟で日韓関係の根幹を揺るがす判決を出して以降、文政権の無策もあって、関係は悪化の一途をたどった。

韓国政権交代へ 対日関係の改善を期待する

 

慰安婦問題も重要なことだけど、いまは日本企業の資産現金化が迫っているから、順序としてはまず、韓国政府はそれを何とか止めないといけない。

これは朝日新聞の社説(2022年3月12日)

尹氏はまず、現金化が好ましくないとの新政権の考えを明示するべきだ。そのうえで、日本政府との新たな交渉態勢を急ぎ整えてもらいたい。

韓国新大統領 融和の政治への転換を

 

文政権の姿勢を「反日外交」と厳しく非難する産経新聞は、文大統領が慰安婦問合意を否定し、元徴用工訴訟でも解決策を示さなかった不誠実を非難したうえで、「ボール」はいま韓国側にあるとしこんな要求をする。(2022/3/12)

尹氏には、慰安婦に関する日韓合意や、戦後賠償問題の完全かつ最終的な解決を明記した日韓基本条約を順守するところから取り組んでほしい。新大統領が決断しない限りは、日韓関係の改善など望むべくもないことを認識しておくべきである。

韓国新大統領 即座に対日政策の転換を

 

では、日本政府はどうなのか?
岸田首相は「心よりお祝いを申し上げたい」とユン氏にお祝いの言葉を述べて、「新政権と対話をしてみたい」と呼びかけたから、かなり前向きだ。
日本の要求に無視・無策で応えた文政権を日本政府も無視して、これまで「戦略的無視」を貫いていた態度とは違う。

ただ岸田首相は、

「国と国との間の約束を守るということは基本であり、日本の一貫した立場に基づいて健全な関係を取り戻す」
「健全な日韓関係は、ルールに基づく国際秩序を実現し、地域や世界の平和と安定、繁栄のため不可欠のものだ」

とさっそく釘をさした。
ユン氏は文政権の「反日外交」には批判的で、日本関係を重視する姿勢を見せているから、日本としてもまずは食事でもしながら話を聞いてみるつもりらしい。
でも結局は、韓国側が日本との約束や国際社会のルールを守らないと、お食事だけでサヨウナラだ。

 

 

近くて遠い日本と韓国 「目次」 ①

近くて遠い日本と韓国 「目次」 ②

近くて遠い日本と韓国 「目次」 ③

どうなる日韓関係?日本側の見通しは暗く、韓国側は明るかった

 

3 件のコメント

  • > 「日本が過去を否定し、歴史を歪曲し、孤立を自ら招けば、遠からず後進国に転落することになるだろう」
    > 「侵略国家である日本が分断されなければならないのに、日本に侵略された被害国家であるわたしたちがなぜ分断というツライ目に合わなければならないのか」

    こんな発言で支持率を上げられるのだから。

  • 1984年、韓国大統領としては歴史上初めて日本を訪問した全斗煥氏を歓迎する晩餐会で裕仁天皇は、”今世紀の一時期において、両国の間に不幸な過去が存したことは誠に遺憾であり、再び繰り返されてはならないと思います”と述べ、これに応えて全大統領は”地球ができてから始まった両国の隣国関係は、地球が消滅しない限り変わることはできないという宿命”と言いました。
    あの時代の韓日関係に戻ればと思います。

  • そのあとに日韓慰安婦合意が結ばれて、「最終的で不可逆的な解決」を確認しました。
    もう歴史を蒸し返すことなく、未来に進まないといけないと思います。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。