ロシアとウクライナとの戦争が始まってから、よく聞くようになったワードが「傭兵」。
例えばロシア軍が誇る世界最強クラスの特殊部隊『スペツナズ』の200人を、アメリカの傭兵部隊が全滅させたという報道がある。
東スポweb(2022年03月12日)
プーチン大誤算! ロシア最強特殊部隊が米民間傭兵に全滅させられた
数日でウクライナを制圧できると楽観していたロシア側は、ウクライナの粘り強い抵抗にあい、思わぬ苦境におちいった。
それで犯罪記録があったりして、本来なら活動が禁止されているようなアブナイ人間でもロシアは傭兵として募集しているという。
ハンギョレ新聞(2022-03-14)
激化するウクライナ戦争、「傭兵」問題も波紋
正規の軍人ではない傭兵にはジュネーブ条約での捕虜の権利が認められていないから、相手軍に捕まった場合、拷問や処刑を受ける可能性がある。
使い勝手のいい「コマ」である傭兵を雇用者はどこまで守ってくれるのか、あまり期待はできなそう。
そんな傭兵もカネなどの個人的な利益で戦争に参加した人間だから、そんな兵士を投入すると、戦場では国際法を超えた荒っぽいコトをして、この戦争をさらに悲惨なものにするかも。
そのことについては今後、いろいろと分かっていくだろうから、ここでは世界的に有名な傭兵を紹介しよう。
ヨーロッパでは戦争が起こると、金で契約して戦う傭兵(傭兵部隊)が昔からいて、その存在はまったく珍しいモノではなかった。
そんな傭兵の伝説的な人物で、日本では高校生が世界史で必ずならうのがアイズ・ヴァレンシュタイン、じゃなかったアルブレヒト・フォン・ヴァレンシュタインだった。
アルブレヒト・フォン・ヴァレンシュタイン
小貴族の出身で傭兵となったヴァレンシュタインは、多くの傭兵を率いて傭兵隊長となって戦場でその頭角をあらわしていく。
神聖ローマ帝国で反乱が起こると、彼は皇帝フェルディナント2世に味方し、反乱軍を鎮圧したことで「この男、できる!」と皇帝のお気に入りとなる。
そしてドイツ、スウェーデン、フランスなどが参戦して「最後で最大の宗教戦争」とか、「人類史上最も破壊的な紛争の一つ」といわれるヨーロッパの大戦争、三十年戦争(1618年–48年)でヴァレンシュタインは神聖ローマ帝国の皇帝軍を指揮して戦う。
傭兵隊長が帝国軍のトップというのも、現代の感覚だとちょっと違和感があるかもだけど、この時代のヨーロッパではこんなことがあった。
リュッツェンの戦いでは、スウェーデン王グスタフ・アドルフを戦死させるという活躍を見せたヴァレンシュタインも、最期は皇帝フェルディナント2世の命令で暗殺されてこの世を去る。
強敵だったグスタフ・アドルフがいなくなり、ヴァレンシュタインの存在価値がなくなったことがこの暗殺の原因の一つだという。
実力があって皇帝から頼りにされる伝説的な人物でもしょせんは傭兵、結局は使い捨てだ。
傭兵は現地調達、つまり金や貴重品の略奪を収入源としていたから、荒っぽくて残忍なことをして人びとからは恐れられ、忌み嫌われていた。
でもヴァレンシュタインは略奪をしない代わりに、占領地で税金(軍税)を徴収するという血を流さないスマートなやり方を採用する。
この発想がその他大勢の傭兵とは一線を画す。
これが後に近代的な常備軍に発展したという。
三十年戦争での虐殺
機関銃、爆弾、戦車、戦闘機がなかった時代で、800万人以上の死者を出した三十年戦争は「人類史上最も破壊的な紛争」といわれている。
傭兵が子どもや女性などの非戦闘員を、不必要に殺害したことがこの原因の一つになった。
三十年戦争の惨禍を再び起こさせないため、グローティウスは『戦争と平和の法』を書いて現在までつづく国際法が形成されていく。
しかしウクライナでの戦争で、傭兵が国際法を守って戦うかは疑問、というか絶望的な賭けだ。
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