日本語には「英語読み・現地読み」の地名があって混乱するわ

 

日本もやっと動いたか。

朝日新聞(2022年3月30日)

首都「キエフ」の表記をウクライナ語の「キーウ」に変更へ 日本政府

ロシア軍の侵攻を受けて海外では、ウクライナの首都の表記をロシア語に基づく「キエフ(Kiev)」から、ウクライナ語の「キーウ(Kyiv)」へ変える動きが相次いでいた。
日本国内でも変更を求める声が上がっていて、政府や外務省もこれからは「キーウ」を使うことにすることにしたという。
ロシア語の「チェルノブイリ」は変更なし。
と思ったら、あとから外務省が「チェルノブイリ」をウクライナ語の「チョルノービリ」に変更した。

2008年にロシアと戦ったグルジアも、ロシア語に由来する「グルジア」の呼び方を嫌って、今では英語読みの「ジョージア」になっている。
そのせいで日本ではアメリカのジョージア州とごっちゃになる人が続出したが、ジョージア人の国民感情からしたらこの変更は仕方ない。

 

日本語では海外の地名について、基本的には現地の読み方を採用しているから、外国人といると戸惑うことがある。
たとえばこれは、浜松で英語を教えているイギリス人とカフェに行った時のこと。
そこにあったメニュー表を開くと「ウインナーコーヒー」があって、それがどんなコーヒーなのかさっぱりわからなかったイギリス人は「ナンデスカコレ?」と聞いてくる。
言われてみれば、ボクも「ウインナーコーヒー」を謎に思ったことはあるけど調べたことはなかった。
それでスマホで調べてみると、それはオーストリアの首都「Wien」であることが発覚。
これを現地の言葉(ドイツ語)では「ウィーン」と発音し、英語だと「ヴィエナ」という。
「ウィーンの(ウィーン風の)」というドイツ語「Wiener(ヴィーナー)が、日本ではカタカナで「ウインナー」となった。
でもイギリス人は現地読みではなくて、「Viener(ヴィエンナ)」と英語読みをするから、「ウインナーコーヒー」という文字を見ると「ウインナーを入れたコーヒー?」と恐怖をおぼえる。

日本に住んでいた知人のドイツ人もコメダで「ウインナーコーヒー」を見つけて肉の方を想像した。
「まさか。でもこの国では、ラーメンにソフトクリームをぶち込むクレージーなことをするから、ひょっとしたら…」と思ったけど、ホイップクリームを浮かべたコーヒーと聞いて安心した。
しかし、ドイツ人にドイツ語が通じないとは。
カタカナの壁の厚さよ。

 

外国人と英語で話をしていると、地名が出てくるとたまに時間が止まる。
ロシア人の口から「ピーターズバーグ」という言葉が出てきたから、「それはペテルブルグ(ペテルブルク)のこと?」と聞くと、「ああそうでした。日本ではロシア語の発音をしてましたね。」と言う。
スペイン人と話をしていて「スペイン」は英語で、「エスパーニャ」がスペイン語と言うことを知らなかったから少し迷子になった。
これなら、江戸時代の日本人が使っていた「イスパニヤ」を使い続けた方がよかったのでは?
フランス語では末尾の「s」を発音しないから、首都の「Paris」は「パリ」でいいけど、英語では「パリス」になる。
「エァスィンズ」という英語を初めて聞いて、それがギリシアの首都アテネと分かる日本人がいるのかと。
イスラエル人はエルサレムを英語で「ジェルーサレム」と言う。
日本語のエルサレムは、ヘブライ語の「イェルシャライム」のカタカナ表記と思われる。

こういう現地読みを尊重する日本の”伝統”からすれば、キエフからキーウへの変更はむしろ遅かった。

 

 

世界の国名・地名:語尾の「イア(ia)」はラテン語で「~の国」

不思議な日本の漢字①読めないっ!の地名。枚方・十三・垈…

欧米人の不満。日本や韓国の地名が漢字2文字の理由は?

世界の見方や常識が変わる15の地図。これが本当の地球だった。

 

コメントを残す

ABOUTこの記事をかいた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。