【ビールの起源】現代日本人と古代エジプト人の共通感覚

 

4月23日はビールの日。
1516年のこの日、ドイツ南部のバイエルン公国で「ビール純粋令」が出されたことにちなんで、ドイツでこの記念日がつくられた。
「ビールは大麦、ホップ、水のみを原料とすべし!」と原料をきめたこのビール純粋令は、いまのドイツビールの原点のようなもの。
ドイツのこの記念日にあやかって、日本でも4月23日は「地ビールの日」になっている。

現代の日本のサラリーマン、じゃなくてビジネスパーソンにとって、仕事が終わったあとの一杯はもはや至高。
そんなビールの起源はおそろしく古く、紀元前4000年以上前までさかのぼることができるのだ。
古代メソポタミアで放置状態にあった麦の粥(かゆ)に酵母が入り込んで、自然発酵したことがビールの始まりという。
人類最古の記録としては、紀元前3000年ごろに、メソポタミアのシュメール人がビールのつくり方を刻んだ粘土の板碑が見つかっている。

 

 

20年以上前にエジプトを旅行中、泊まっていた宿のエジプト人従業員から、「オレは18時に仕事が終わるんだ。そしたらビールでも飲もうぜ」と酒に誘われた。
「一日の仕事のご褒美はビール」という感覚はエジプト人も同じなのか。とシンパシーを感じるのはいいとして、でもちょっと待ってほしい。
この従業員はイスラム教徒じゃないのか?
そう思って話を聞くと、たしかに自分はイスラム教徒だから本当はダメだけど、たまにホテルの中で客とお酒を飲むことがあると言う。
客がホテルのビールを買うから、オーナーもここでの飲酒を問題にしていない。

まあそれは分かるとして、イマイチ腑に落ちない点は、このホテルでは客が従業員の飲み物代を払うことになっていたこと。歌舞伎町のお店かな。
ヤツが瓶ビールを2本持ってきてボクの目の前で開けて、2本分の代金を請求してから、こっちは初めてそのシステムに気づいた。
「なぜオマエの分まで?」と納得いかなかったけど、でももう瓶ビールは開いているから、取り消しはできないと言い張る。
こんな感じで、強引に自分のペースに引き込むエジプト人はけっこう多い。
だからエジプト旅行では肉体的疲労より、精神的ストレスがたまっていく。
それでも現地の人から、エジプトの話が聞ける機会は貴重だ。
イスラム教の影響が強いエジプトでビールを売っている理由や、この従業員みたいにお酒を飲むイスラム教徒がいる理由をたずねると、エジプト人には昔から酒があって、ピラミッドを建てた労働者もビールを飲んでいたと彼は言う。
なんと、これは初耳学。
昼間にピラミッド観光を終えてから、レストランでビールを飲んだボクとしてはデジャブ(既視感)を感じてしまう。

この従業員の話は正解だ。
古代エジプトでは、庶民がビールを飲めたのは週に1回ぐらいだったのに、ピラミッド建設に汗を流した労働者は毎日ビールが飲むことができた。
だから奴隷による強制労働ではなくて、報酬のビールを目当てに参加した庶民の自発的労働によって、ピラミッドが建設されたと、エジプト考古学者の吉村作治氏が『キリン』のホームページに書いている。

奴隷が働かされた、は大ウソ。庶民が建造に参加したのは、ビールが飲めるからだった

 

もちろん数千年前のエジプトで作られていたビールは、いまの日本のスーパーやコンビニで売ってるものとはまったく違う。
この当時のビールは、麦芽を水で練ったものを焼いて「パン」を作り、それを水に浸(ひた)してアルコール発酵させたものだったという説がある。
だから古代エジプトのビールは、かなりドロッとした飲み物だったと思われ。
でも、ビールの中身が違うとはいえ、「仕事終わりの一杯は至高」という現代日本人の感覚は、ピラミッドを造っていた古代エジプト人と同じだったのだ。

 

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。