古代の東アジアにおいて超大国だった中国は、圧倒的な文明をもったまさにビッグ・ボスのような国。
それで日本や韓国などの周辺国が漢字や仏教、政治制度などさまざまなことを学んでを受け入れて、それを基に国を発展させてきた。
それから千年以上が過ぎた現代では日本と中国にある文化で、どれがどっちのものか分からなくなった問題が発生している。
最近は中国の伝統衣装である漢服の人気が出てくるなど、中国人の間で自国の文化に対する意識が高まっていることもあって、「団扇(うちわ)」について中国人の間で日本を巻き込む文化論争がぼっ発。
レコードチャイナの記事(2021/5/28)
中国伝統なのに「それは日本のものだ」…今度は団扇をめぐり文化論争―米華字メディア
あるメディアが中国の伝統的な扇を紹介したところ、中国のネットユーザーが「いや、それは日本のものだ」と指摘し、それへの反論が出てきて議論になる。
結果的に多くのネットユーザーからは、「どの団扇が日本式で、どれが中国式なのか分からない」という困惑の声が上がったという。
これはほ日本人も同じだ。
日本中にあるさまざまな団扇を見て、日本のものと中国のものとに分けられる人なんてまずいない。
ただ中国人としては「中国文化を流用した」という意識が強いから、日本にある文化の起源を中国に求める人は多いらしい。
こんな中国人の文化論争に日本のネットユーザーの感想は?
・めちゃくちゃどーでもいいです。
どっちが発祥であるかを考えてどうなる訳でもない。
・そもそも大昔の中国の文化が発祥なだけで
今の中国が発祥ってわけじゃないし
・昔の恋人自慢みたいで見苦しいわ
・杜甫や李白の詩、長恨歌、昔の中国には素晴らしい文化があった。それは日本人にも
憧れだった。
・日清カップヌードルは中国が起源とか言いそうだな。
「今度は団扇をめぐり文化論争」とか、うちわモメなんてしても意味がない。
平安時代後期の扇子
どれが日本式で中国式かはしらんが、団扇は中国生まれで(たぶん奈良時代に)日本へ伝わったもので、扇子(せんす)は日本生まれの文化ということは分かる。
中国から伝わった団扇に日本人が創造力を発揮して、独自の変化を加えたことで扇子という新しい文化が生まれたのだ。
「和楽web」の記事で「扇子は日本人が発明した日本のオリジナルの文化です」とサントリー美術館の主任学芸員・上野友愛さんが話している。(2018.12.29)
サントリー美術館の「扇の国、日本」展|尾上右近の日本文化入門
歴史作家の陳舜臣氏によると、この日本の発明品は平安時代には中国へ伝わった。
夏になると団扇でバタバタやっていたのを、折り畳み式の扇子で懐にはいるように改造したのも日本人である。平安時代から、扇子は日本から中国への重要輸出品だったのである。
「日本的 中国的 (徳間文庫) 陳舜臣」
上の扇は、むかし武将が戦場で使っていたもので軍扇という。
外国人を連れてお城に行ったらこれが展示されていて、スペイン人と台湾人が「あっ!」という顔をしたから、軍扇を知ってるなんて日本の時代劇のファンなのかと思ったら、「『千と千尋の神隠し』で見た!」と彼らがうれしそうに言う。
『千と千尋』は見たことないんだが、スペイン人と台湾人が同じことを連想するのだから、軍扇を振って応援するシーンはかなり印象的なんだろう。
ただ彼らは扇子を中国文化か日本文化か分からなかったから、これは日本人の発明で、中国へ輸出された歴史を伝えておいた。
きょう5月1日は「扇の日」だ。
『源氏物語』で女性が光源氏に扇を贈るシーンがあることや、「5・1」を「恋」と読むことでこんな記念日ができたらしい。
せっかくなんて日本人として、団扇は中国から伝わったもので、日本人がそれを懐にはいるように改良して扇(扇子)という新しい文化をつくったことを確認しておこう。
平安時代の日本は、東アジアのボスにこれを輸出していたのだ。
ブログのタイトルが不適切だと思います。「起源と創造」ですか? 同じ意味じゃないですか。
「起源・創造とその後の維持・発展」が問題なんだと思いますよ。