戦争をするには“勇気”が必要になる。
といってもこれは「犯罪をする勇気」みたいなネガティブな意味で、ホメられたことじゃない。
戦争を始めたら、自国と相手国の兵士に多くの犠牲者が出るのは避けられないし、街を破壊して市民を犠牲にすれば国際社会を敵に回すことになる。
それに、ロシア軍の戦闘機「Su-35」だけでも約123億円もするし、高額な兵器をバンバン使う戦争ほどコスパの悪いものはない。
先月はじめの時点でロシア軍の1日の戦費はおよそ3兆円で、すでに国家予算の3倍以上を使っていると現代ビジネスの記事にある。(4/11)
プーチン、ついに“自滅”か…戦費「3兆円」ムダ遣いで、これからロシアが辿る「壮絶な末路」
戦争を始めた当事者は国の内外から非難と圧力を受けることになるから、それを受け止める“覚悟”が必要になる。
だから国のトップには戦争を開始する正当な理由、国民を納得させるリクツが絶対にほしい。
第2次世界大戦の戦勝記念日だったきのう9日、モスクワで行われた記念式典でプーチン大統領は、
・ロシア軍は祖国と未来のために、ウクライナの「ネオナチ」と戦っている。軍事作戦は唯一の正しい選択肢だった。
と国民に向けて演説したのだが、そんな身勝手なリクツは国際社会には通じない。
そもそも祖国と未来のために、いま侵略者と戦っているのはウクライナだ。
戦争を始めた政治家はあまりに大きな責任を負わないといけないから、無理やりにでも”正義”を作り出して自分の決断を正当化するしかない。
こんなロシアのケースとは別で、イヤでも戦争を決断するしかなくなることもある。
それは国家の根本的な利益、つまり国民の命や自国の領土がかかっている場合だ。
先日5月7日は、1915年にルシタニア号が撃沈される歴史的事件があった日。
第一次世界大戦が行われている最中のこの日、当時は世界最大(か最大級)の旅客船ルシタニア号がアイルランド近くを航行していると、ドイツ軍の潜水艦の魚雷攻撃を受けて沈没し乗客約1200名が犠牲となった。
128人の自国民が死亡したことでアメリカが激怒すると、イギリスはこれをアメリカにドイツへ宣戦布告させ、第一次世界大戦に参戦させる”絶好のチャンス”と捉えて積極的に働きかける。
でも、アメリカは消極的だった。
国務長官であったウィリアム・ジェニングス・ブライアンは、アメリカが参戦することを恐れ、抗議を込めて内閣を辞職した。また、大統領であったウッドロウ・ウィルソンはヨーロッパでの問題に自国を関わらせたくなかった。
攻撃されるルシタニア号
128人の国民を殺されて大激怒しても、自国を戦争に巻き込むことには躊躇(ちゅうちょ)してしまうほど、この決断は重い。
そんなアメリカに2年後の1917年、今度はツィンメルマン電報事件が発生する。
ドイツの外相ツィンメルマンがメキシコ政府に電報を送り、もしアメリカが参戦した場合、ドイツはメキシコと同盟を結んでアメリカと戦い、戦争に勝ったら、以前アメリカに奪われたテキサス州、ニューメキシコ州、アリゾナ州をメキシコに返還すると持ちかけた。
これをイギリスが傍受してアメリカ政府へ伝えられ、国内のメディアで報道されると、米国民の間で反ドイツ感情が一気に高まって、第一次世界大戦への参戦はもはや不可避となる。
ひとたびアメリカの大衆が電報を本物であると考えた以上、もはやアメリカが世界大戦に参戦することは避けられなくなった。
メキシコへ送られたツィンメルマン電報
イギリスはこの暗号の解読に成功して、アメリカを大戦へ引き込んだ。
ルシタニア号事件で130人ほどの国民が犠牲になり、ツィンメルマン電報事件で国土が奪われると明らかになった以上、アメリカ政府も決断するしかない。
これなら国民も納得して、大統領に運命をゆだねて一緒に戦う。
アメリカの第一次世界大戦への参戦理由はほかにもあるから、細かいことは各自で調べてください。
国民の命や領土が奪われる事態になったら、それを守るために戦争を覚悟するのは世界のアタリマエ。
ウクライナにはその大義名分があるけど、ロシアには欠片もない。
侵略戦争のツケは未来の自国民が払うことになるから、愚行の責任は本当に重いのだ。
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