ロシアがウクライナへ軍事侵攻を開始してから、もう3か月以上が過ぎた。
この間、あまりに多くの命・モノ・金が失われたことから、いまウクライナと支援する欧米で停戦の話が浮上している。
でも、どこで「区切り」をつけるかで話がまとまらず、いまはだいたい次の3つの案が出ている。
1,ある程度の領土の割譲を受け入れて、早く交渉をするべき。
2,ロシアをウクライナから追い出して、3か月前の状態に戻したら停戦交渉を始めるべき。
3,2014年にロシアが併合したクリミア半島を含め、ウクライナの全領土を取り戻したら、ロシアと停戦交渉をするべき。
こんな案があるとしてもロシアが交渉に応じないと意味はないから、いまのところ停戦の道筋は見えていない。
戦いがこう着状態におちいるとズルズルと長引いてしまい、双方で被害が大きくなるから、“落としどころ”が必要になる。
これが古代の戦いなら、「日食」という天文現象が戦争を止めためずらしい例がある。
太陽・月・地球が一直線に並ぶことで、地球から見ると、月と重なって太陽が見えなくなる現象が日食。
昔の人間には、まるで太陽が月に食べられているように見えたと思われ。
この神秘の天文ショーは21世紀の人類にはご褒美でも、日食が起こると、地球上には太陽の光が届かなくなるところが出てくるから、昔の人間はとてつもない恐怖や不安を感じたはず。
さて、時代は数百年前、1千年前、さらにさかのぼって約3000年前、現在のトルコではメディア王国とリュディア王国が戦っていた。
*リュディアが世界最古の鋳造貨幣(つまりコイン)を発明したのはマメね。(エレクトロン貨)
一進一退の攻防がつづいてなかなか決着がつかず、戦いは長引いて6年目に突入したとき、とつぜん日食が始まった。
すると昼が夜になったことで、両軍は戦いを止めて和平交渉をすることになったと、古代ギリシャの歴史家ヘロドトスが書いている。
Herodotus writes that in the sixth year of the war, the Lydians and the Medes were engaged in an indecisive battle when suddenly day turned into night, leading to both parties halting the fighting and negotiating a peace agreement.
メディアの王キュアクサレスとされるレリーフ
急に周囲が暗くなったことで、日食のメカニズムを知らなかったメディアとリュディアの兵士は不安と恐怖に襲われて、これを大きな不吉の予兆、「死亡フラグ」と考えて戦いを止めたのだろう。
これで双方の王族が婚姻関係を結び、領土を画定する平和条約を結んで一件落着めでたしめでたし。
そんなことから、たまたま起こった日食がメディア王国とリュディア王国の6年にわたる戦争を終わらせた、この紀元前585年の戦いを「日食の戦い」という。
日食が起きて、昼間なのに暗くなって「え?なに?何が起きてんの?」、「コレって神さまの意思?この戦いに怒ってるってことなの?」と両軍がパニックになって、即座に戦いをやめて和平交渉に入ることを期待できるのは大昔の話。
ジャベリンやスティンガーが使われる現代戦では細かい停戦条件を考えて、広く同意を得ないといけないからとてもムリ。
ウクライナとロシアは一体いつ停戦合意に入るのか。
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