日本にある「台湾の食べ物」。台湾人がOK/許せないもの

 

台湾観光は日本人に人気で、最近は海外の修学旅行先で人気ナンバーワンにもなった。
台湾に行って知って、親しみを感じるようになった人が増えたこともあって、日本ではこのところ、スーパー・コンビニなんかで「台湾モノ」を見かけるようになったのだが、それを見て、台湾の人たちはどう思うのか?

 

 

映画のセットみたいな昭和感ただよう台湾の食堂。
“日本が失った日本”を見つけられるのも台湾の魅力だ。
画像は「Hsu Hsu」さんのもの。

 

ここは日本人観光客ではなくて、地元の台湾人のための店
日本統治時代からつづく店かも。

 

まずは、ファミマが今年の冬に出した「台湾魯肉(ルーロー)まん」

 

甘辛のタレで煮込んだ豚肉を白米にのせる魯肉飯(ルーローファン)は、「早い・安い・ウマイ」の牛丼みたいな一品。
10年前の記憶では、食堂で1杯100円ぐらいで食べることができたけど、量は少なめで小腹を満たすていどにしかならない。
とても身近で庶民的な食べ物のルーローファンは、まさに台湾人のソウルフードだ。

本来バラ肉など脂身を多く含んだ豚肉に、台湾式醤油・米酒・砂糖・エシャロット・干しエビ・八角などを材料として甘辛く煮込み、煮汁ごと台湾米と混ぜ込んだかけご飯である。

滷肉飯

 

ご飯にのせる部分を具にした「台湾ルーローまん」の写真を知人の台湾人(20代・女性)に見せて、どう思うか聞いたら、逆にこんな質問をされた。

八角は大丈夫なんですか?台湾料理で八角が苦手な日本人はよくいて、あれは台湾人と日本人の大きな違いだと思います。台湾の魯肉飯って八角がけっこう強いんですよ。」

彼女が旅行会社に勤めていて日本人の団体ツアーを担当したとき、お客さんに出す食べ物はすべて八角を抜いておくように! という指示があって、「日本人はそれほどイヤなのか」と驚いた。
だから魯肉飯というチョイスを見て、真っ先にこの疑問が頭に浮かんだという。

ファミマの「ルーローまん」に入ってる八角は少量で、「台湾っぽさ」を感じられるぐらい。
海外のものを出すときは、相手先の人や事情に合うよう現地化するのは世界の常識、ゴールデンルールだ。
台湾にあるものを、そのまま日本で再現すればいいほど世の中甘くない。
どんなに近くても同じじゃないから、日本人と台湾人の味覚や好みの違いを把握して、日本人の口に合ったものに変えないといけない。

これは食べ物に限らず、人権や自由、民主主義といった概念でも同じ。
「欧米に比べて日本は遅れてる~」とか言う人には、現地化・日本化という大事な過程をスキップしているウッカリさんがけっこう多い。

 

次は、近所のドラッグストアで見つけたコレだ。

 

 

 

先ほどの台湾人に見せて感想を聞いてみたら、「なんでこれが“台湾ドーナツ”なのかわかりません」と思ったことを率直に言う。
それどころか見た感じ、台湾にもよくあるミスドのドーナツみたいとか言い出す。
彼女がイメージする台湾のドーナツは揚げたもので、外はカリっと歯ごたえがあって中はフンワリ柔らかい。
「こんな感じです」と送ってくれたリンクがこちら
「練乳風味」が特に台湾の特徴とも思えず、台湾人からすると美味しそうだけど、これが「台湾ドーナツ」の理由がよくわからない。

ヤマザキのHPには、

「近年、台湾では衣をつけて揚げることで、外はカリッと中はふんわりとした食感に仕上げたドーナツが人気を博しており、日本からの観光客の間でも話題となっています。」

と書いてあって、これだと台湾人の説明と合致する。
上の台湾ドーナツはこんなイメージでつくって、仕上げに練乳風味のチョコをコーティングし、さらに粉糖をトッピングしたという。
そう言えば外側がじゃっかんカリッとしていた気がするし、粉糖をまぶしたところに、そこはかとない「台湾感」があったような?
出来たてアツアツのドーナツじゃないから、これが限界かもしれない。

 

「台湾ルーローまん」は台湾人が見てもすぐに分かる台湾の食べもので、日本人の味覚に合うように変えられたもの。
「台湾ドーナツ」は台湾要素が不明な普通のドーナツ。
台湾のドーナツにインスピレーションを受けてつくられた、“日本ドーナツ”と言っていい。
前者は台湾の食べものにじゃっかんのアレンジを加えたモノで、後者はモトがよくわからないほど魔改造されたモノになる。

そのどちらでもないのが昔から日本にある「台湾ラーメン」。

 

 

ナポリにナポリタンがないように、トルコにトルコライスがないように、台湾ラーメンは日本にしかない(ボクの知る限り)。
よく言われる起源は台湾料理店の台湾人が1970年代に、台南名物の「担仔麺」を元につくった料理という説。
名古屋人の舌に合わせて辛い味にしていまの台湾ラーメンが出来上がったこともあって、これは台湾料理ではなく「名古屋めし」のひとつとされている。

名古屋でこのラーメンを食べた台湾人に感想を聞いたら、

「まず台湾ラーメンという名前にビックリしました。ボクには辛すぎるから、水を入れると美味しくなりますね。あれが台湾ラーメンと呼ばれる理由は、台湾人のボクにはわかりません。別に不快な気持ちはないですよ。面白いと思います。」

とのこと。

 

 

はじめの台湾人に、日本にある「台湾モノ」全般についてどう思うか聞くと、

「それだけ日本人が台湾に親しんでいるということですから、わたしはいいと思いますよ。むしろうれしいです。」

と話したあとで、こう言った。

「そんなことより、日本にいる中国人が『台湾料理店』を経営していることのほうが問題です。わたしも日本へ行ったときに食べましたけど、出された料理は台湾のものと違って中国の料理でした。」

これはド正論。
台湾人にとっては、日本人のつくる「台湾っぽい食べもの」は特に気にしないか、好意的に見ることはあっても、日本人相手に中国人が台湾料理でもうけていることには腹が立つ。
そういえば前に静岡にある「本格台湾料理」を名乗る店が、実は中国人経営で中国料理を出す店だと台湾人に聞いて驚いた。「日本人があの食べ物を台湾料理と誤解するのは不愉快です。」と言っていたから、彼にもこれは許せないらしい。
これは海外にあるスシ店に置き換えれば、日本人にもよく分かる案件。
日本にあるこっちの「台湾モノ」は許せないという知人に、共感する台湾人は全土で90%を超えると思われ。

 

 

台湾 「目次」 ①

台湾 「目次」 ②

日本を旅行した台湾人の話①違い・驚き・好き/嫌いなこと

台湾人がアニメを見て感じた「日本と台湾の学校との違い」とは?

台湾人のアイデンティティー:90%が台湾人、中国人は5%

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。