最近は世界における日本の存在感や影響力が増してきて、ポケモンカードに夢中になったり、「オオタニサーン!」と叫ぶ外国人の話を聞く。
でも、そんなレベルではなくて、日本の文化や歴史について真剣に学ぶ人もいて、このまえそんな外国人がSNSでこんなメッセージを投稿した。
「Once people prayed to the gods to stop the earthquakes and they searched everywhere for the cause, finally realising it was Namazu.」
(かつて人びとは地震を止めるために神に祈り、その原因を可能な限り探した。そしてついに、その原因が「ナマズ」であることに気づく。)
日本列島の地下深くに巨大なヘビがいて、それが動くと地震が起こるという話があって、江戸時代になるとヘビがナマズに変わったという説もあるから、ハッキリした由来は知らんけど、昔の日本では地震とナマズを関連づけて、ナマズが暴れると地面が揺れるという考え方があった。
ここでいう地震を起こすというナマズとは川にいるリアルの生き物ではなくて、大鯰(おおなまず)というナマズの姿をした巨大な空想上の生物のこと。(大鯰)
コイツが地下で暴れると、地上では家が倒れたり火事が起きたりして、多くの人がツライ思いをすることになる。
だからそうさせないように、日本人は要石(かなめいし)を置いて、それで大鯰を押さえる地震封じとした。
有名な要石が茨城県の鹿島神宮にある。
パワフリャな鹿島大明神が頭部に剣を突き刺して、大鯰を押さえつけている。
こうしていれば地震が起きないということで庶民が歓喜する。
でも、日本のすべての神がこんな頼りになる尊い存在ではなくて、たまにはこんなダメ神もいやがります。
あるとき鹿島大明神が用事で出かけることになって、恵比寿が留守をまかされた。
でも、ビールを飲みすぎたせいか、恵比寿は鹿島神宮の要石に体をあずけて寝てしまい、封印の解けた大鯰が暴れて地震が起きて、人間界は阿鼻叫喚の地獄と化す。
それを知った左下の鹿島大明神が馬に乗って大急ぎで戻っている。
でも、これは空想上の物語。
酒を飲んで酔っぱらって路上で寝てしまい、尼崎市の全市民46万人分の個人情報が入ったUSBをなくした会社員がいて、いま超話題になっている。
科学が発展していなかった時代、この世で起こる現象の原因を「不思議な生物」に求める発想はよくあった。
光の屈折によって海上に物体が浮き上がって見える「蜃気楼」を、昔の日本人や中国人は「蜃」(しん)という巨大ハマグリのせいだと考えた。
左上に「蜃とは大蛤(ハマグリ)なり」という記述がある。
さて、きょねん関東地方で地震が起きた際、話題を集めたのがこのツイート。
昨夜の千葉県北西部を震源とする地震発生時の映像を確認したところ、魚や鳥が地震に反応する様子が撮影出来ましたので紹介します。左上に見える茶色の建物は #江東区 の #中川船番所資料館 です。#震度5強 pic.twitter.com/NbMpUTYWhk
— 国土交通省 荒川下流河川事務所 (@mlit_arakawa_ka) October 8, 2021
地震が発生すると、まず魚が騒いで、そのあと鳥が飛び立った。
これは最初に来る(primary)揺れの「P波」と、2番目に来る(secondary)揺れの「S波」の違いによる。
P波の揺れは水中に伝わるから魚が「ウオッ」と驚いて(魚だけに)、その後のS波は水中には伝わらないから問題なし。
一方、鳥たちは大きな揺れのS波にビックリした。
「地震とナマズにはつながりがある」というイメージは古くから日本にあって、地面が揺れる直前、川のナマズが異常な行動をとったという伝承は各地にある。
ナマズは自由に動き回る魚と違って、川底に体をピッタリとくっつけている。
だから、地面のかすかな変化も感じ取って反応して、地震のメッセンジャーとなったとご先祖が考えたことは不思議でもない。
この伝承には、「P波」と関連した科学的な裏付けがあるかもしれない。
中国文化の日本文化への影響②日本風にアレンジした5つの具体例。
> これは最初に来る(primary)揺れの「P波」と、2番目に来る(secondary)揺れの「S波」の違いによる。
P波の揺れは水中に伝わるから魚が「ウオッ」と驚いて(魚だけに)、その後のS波は水中には伝わらないから問題なし。
その説明で正しいのですが、それだけでは、なぜP波が水中を伝わりS波は伝わらないのか理由が分かりませんよね。P波とS波の用語にはそれぞれもう一つの意味があって、それはPressure(圧力)波とShear(横ずれ)波の略語にもなっているのです。
圧力波とはつまり音波と同じパターンの波であり、音は水中のような液体も、地盤のような固体も、空気のような気体も、いずれも伝わります。(ただし伝わる物体によって減衰性は色々あるので、音の伝わる限界距離はそれを伝える物体により様々です。)
その一方、横ずれ波(またはせん断波)とは、たとえばトコロテンの端を手に持って左右にゆらゆら揺すった時に反対側へ伝わるような波です。トコロテンは柔らかい固体ですから横ずれ波が伝わります。ですが、たとえばプールに潜って水の中で(水を手で掴んで)左右にゆらゆら揺すっても、その揺れは水を伝わって行きません。空気でも同じです。つまり、横ずれ波を伝えられるのは固体だけということです。(と言うか、それこそが物理モデルとしての「固体」の定義になっています。)