【日本文化の特徴】七夕・冷やし中華でわかる“創造性”

 

ほんじつ7月7日は七夕の日。
天にいる織女(日本では織り姫:おりひめ)と牽牛(彦星:ひこぼし)が年に一度、この日だけ会うことがきるというロマンチックこの上ない日。
中国で生まれて日本へ伝わったあと、この文化は独自の発展をとげ、短冊に願いごとを書いて笹竹にくくりつけるという日本式の七夕が出来上がった。
6月の終わりに設置される夏の大祓の「茅の輪」では、笹竹が使われるから、江戸時代になると願いごとを書いた短冊をその笹竹に結びつけるようになったという
七夕は朝鮮半島やベトナムにも伝わったけど、これは日本だけの風習だ。

日本文化の特徴「つくり変える力」、中国由来の七夕も独特に

 

 

7月7日は「冷やし中華の日」でもある。
1年を24の季節に分けた二十四節気では、この日に「小暑」(しょうしょ)となることが多く、夏の本格的な暑さが始まるということでこんな記念日ができましたよと。

七夕のように、中国に由来するモノやコトは日本ではよくあって、それが日本人の価値観や好みに合わせて変化していくことも多い。
というか、ひな祭りや鯉のぼりみたいに、もう元となった中国の文化が分からないほど魔改造されたものばっかのような?

ラーメンなどの麺類もそう。
いまではラーメンは中国で日本料理の一つになっていて「日式拉面(ラーメン)」と表記されている。
ラーメンで使う「中華麵」も中国由来、のはずだ。
そう思うのだけど、浜松に住んでる知人の中国人は、日本によくある黄色く縮れた中華麺を中国では見たことなく、「あれは日本で生まれた麵じゃないですか?」なんてことを言う。
言われてみれば、ボクが中国で食べた麺料理は白くてうどんのような麵か、米でできた麵ばかりで日本にある中華麺を見た記憶がない。
中国人の知らない中華が日本にはある。

 

そんな中華麵で作られる、日本の夏を代表する一品が「冷やし中華」。
俳句では夏の季語になっている冷やし中華は日本生まれで、その起源としては、1933(昭和8)年に東京の揚子江菜館で生まれたという説と、1937年に仙台の龍亭で生まれたという説がよく語られる。
中国人や台湾人に冷やし中華に近い食べ物を聞くと、そろって「涼麺」を挙げた。
でも、中国・台湾人は基本的に冷たいものを食べないから、氷で冷やした日本の冷やし中華とは違い、涼麺は常温のものが多くて「冷たい」という感覚はないらしい。

ラーメンや冷やし中華のほか、日本に来てから初めて「蕎麦(そば)」を食べたいとう中国人もいた。
中国は広いから、蕎麦を食べる地方があるかもしれない。でも、その中国人にとっては冷たい蕎麦を、具のない汁につけて食べる日本のスタイルは新鮮だった。

 

具材を放射線状に、縦に盛り付けるのは富士山をイメージしているという。

 

七夕や冷やし中華のように日本文化の大きな特徴として、中国から伝わったあと、新しい価値観や表現が加えて別ものにしてしまう“日本化”がある。

20世紀前半の歴史家で思想家の津田 左右吉(つだ そうきち:明治6年 – 昭和36年)は著書でこう主張した。

支那からとり入れた文物が日本の文化の発達に大なるはたらきをしたことは明かであるが、一面またそれを妨げそれをゆがめる力ともなったということ、それにもかかわらず日本人は日本人としての独自の生活を発展させ独自の文化を創造して来た

「支那思想と日本」

*支那は中国のこと。
現在、この言葉は中国への侮辱語や差別語になるからNG。

 

多くの日本文化の起源が中国にあることは事実で、それは隠すことじゃない。
でも、それは決して中国のコピーではない。
日本人の創意工夫や試行錯誤によって創造された独自の文化だ。
日本文化の特徴はゼロから作り出すことより、海外から伝わったものをベースに新しいモノを作り出すクリエイティビティにある。
七夕の短冊や冷やし中華を見たら、それを実感できる。

 

津田左右吉

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。