料理でわかる、日本とニュージーランドの“お国柄”の違い

 

いまオレたちのガストで、「初夏のご当地麺」キャンペーンを実施中だ。
長崎は皿うどんで広島は担々麵、でもって瀬戸内はレモンラーメンか。
なるほどなるほど。

 

 

日本ではこんな感じに、それぞれの地域の特徴や強みをいかした「ご当地メニュー」がたくさんあって、日本各地のデパートで「全国の美味しい駅弁集めました!」みたいな企画がよくおこなわれている。
では、ニュージーランドはどうなのか?

まずはこの国の基本情報を確認しておこう。

面積:27万534平方キロメートル(日本の約4分の3)
人口:約504万人
首都ウェリントン
民族:欧州系(70.2%)、マオリ系(16.5%)、太平洋島嶼国系(8.1%)、アジア系(15.1%)、その他(2.7%)
言語:英語、マオリ語、手話
宗教:キリスト教36.5%、無宗教48.2%(2018年国勢調査)

以上は外務省ホームページの ニュージーランド(New Zealand)基礎データ から。

 

先週、日本に10年以上住んでいるニュージーランド人とご飯を食べに行ってきた。
そのとき彼は、日本人によくこんな質問をされて困るという。

「ニュージーランド料理って何ですか?」

ニュージーランドという国名は、18世紀にやってきたイギリス人のジェームズ・クックが名づけたもの。
ニュージーランドはもともとイギリスの植民地だったから、一般的にフィッシュ&チップスやパイといったイギリスの食べ物が多い。
それにハンバーガーやピザ、餃子などいろんな食べ物がある。

でも、日本料理には寿司、ラーメン、天ぷらといったものがあるけど、そういう感覚で「ニュージーランド料理とは?」と聞かれると、そんなものは思いつかないから返事に困る。
移民大国のニュージーランドには世界中からやってきた人たちがいるから、ハンバーガーやピザもあるし、餃子やカレーなどいろんな食べ物がある。
西洋料理は当然として、日本、タイ、メキシコ料理など世界中の食べ物があるけど、ニュージーランドに特有でほかの国にはない食べ物と言われると、それは分からない。
先住民のマオリの人たちの食べ物を「ニュージーランド料理」とは言うのはチョットおかしい。

 

実はこのときボクが、日本にはいろんなご当地料理があって、テレビやメディアでよく話題になるから、ニュージーランドにもそんな地域メニューがあるのか聞いてみた。
そしたら彼は上の話をして、「ニュージーランドのご当地料理なんてわからないよ」と両手を挙げる。
そんな“お手上げ状態”の彼に、同じ質問を別のニュージーランド人にしたときの話をする。

そのニュージーランド人は、「オレが一番好きなニュージーランドの食べ物は、近所にあった店の中国人シェフがつくるフィッシュ&チップスだったな」と話すから、日本人のボクとしては違和感しかない。
韓国人のつくるハンバーガーを「日本料理」と言う日本人がいたら、まずは日本料理の定義から話をしないといけなくなる。
でも彼は、それが移民大国のニュージーランドにふさわしい料理だと主張する。

その話を聞いて、「オレもその意見に賛成だ」と彼はこう話す。

「日本とニュージーランドの違いは、何といっても多様性なんだ。日本にはほとんど日本人しかいなくて、同質性がとても高い。ニュージーランドと違って世界中から移民がやってきて、その国の文化を伝えたという歴史が日本にはない。むかしから同じ人間が同じ場所に住んで、その地域を開発していたから『ご当地メニュー』がたくさんあるんだ。」

21世紀のいまでは、国内は当然で海外へ移動する日本人はいるし、外国人が移住してきて文化を伝えることもある。
でも明治時代になるまでは、ほかの地域に移り住むというのは基本的にはなくて、何世代にもわたって同じ家の人間が親の仕事を受け継ぎながら、同じところに住んでいた。
江戸時代には「鎖国」もあったし、歴史的には、外部の人の流入という点でニュージーランドと日本は決定的に違う。

彼の意見であり自慢でもあることは、ニュージーランドの強みはそれぞれの国の良さをいかすこと。
だから「中国人がつくるイギリス料理」というのは、日本にはないニュージーランドらしい多様性をよく表している。
だから地域限定のご当地メニューはなくても、世界中からやってきた移民のつくる本格的な料理がある。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。