【反ドイツ感情】英王室がいまのウインザー家に変更したワケ

 

1917年のきのう7月17日、イギリス国王ジョージ5世が家名をサクス=コバーグ=ゴータから、現在のウインザーに変えた。
名字の無い日本の天皇家ではあり得ないことだ。
これによって王朝名がウインザー朝と短くなったことは、世界史を学ぶ日本の高校生にとっては朗報としても、変更の理由は何なのか?
ジョージ5世は「サクス=コバーグ=ゴータ」の何がイヤだったのか?
ってことが今回の内容ですよ。

 

ジョージ5世

 

イギリスが全歴史を通じて、最もパワフルで光り輝いていた「ヴィクトリア時代」にその話は始まる。
ハノーヴァー朝のヴィクトリア女王があるとき「これは反則レベルですっ」というような金髪で青い目をしたイケメンと出会って、一目ぼれしてそのまま結婚してしまう。
その男性はドイツのザクセン=コーブルク=ゴータ家の公子で、ドイツ語名を「アルブレヒト」という。
彼はドイツ人だから、イギリスでは英語で「アルバート」と呼ばれた。
国際結婚をしたヴィクトリア女王が亡くなって、息子のエドワード7世が英国王に即位するとハノーヴァー朝は消滅し、父親の家名をとって「サクス=コバーグ・アンド・ゴータ朝」が始まる。
王朝名が変化したといっても、ヴィクトリア女王の血統は引き継がれているから、ハノーヴァー朝が継続されたと考えていい。

新王朝の初代国王となったエドワード7世と日本とのつながりは深い。
1905年に日英同盟を結んだのは彼の時代だったし、日本の連合艦隊がロシアのバルチック艦隊を撃滅したと聞いて、エドワード7世は司令長官だった東郷平八郎提督に感嘆し、激励のメッセージを贈った。
ちなみに明治天皇にはイギリスの最高勲章である「ガーター勲章」を贈っている。
そんなエドワード7世は1910年に病気でこの世を去った。

 

 

エドワード7世の葬列(1910年)

 

1910年に父・エドワード7世の後を受け継いで、息子のジョージ5世がイギリス国王となる。
その4年後、1914年に第一次世界大戦がぼっ発し、イギリスとドイツが敵同士になってコロシアイを始めると、ジョージ5世はかなり困った。
おじいちゃんのアルバートはドイツ人だし、ドイツ皇帝のヴィルヘルム2世は従兄(いとこ)にあたるから、同じ血族で戦うことには気が引ける。

でも、国民の間には反ドイツ感情(Anti-German sentiment)が生まれて暴動が起こったり、ドイツ人と疑われた者が襲われたり、ドイツ語っぽい名前の人の店が略奪を受けたりした。

In Great Britain, anti-German feeling led to infrequent rioting, assaults on suspected Germans and the looting of stores owned by people with German-sounding names

Anti-German sentiment・First World War 

ドイツ製品のボイコットを呼びかけるポスター(1919年ごろ)
イギリスで商売するドイツ人ビジネスマンには、第一次世界大戦中に残虐行為を行ったドイツ兵としての「もう一つの顔」があると訴える。

 

従兄弟と戦争するのはツライ。
でも、英国王としては国民感情を優先するしかない。
ということでジョージ5世は1917年に、王室の家名をドイツ由来のサクス=コバーグ=ゴータから、王宮のあるウィンザー城にちなんでウィンザーへと改称した。
国内の反独感情がこの変更を後押ししただけで、国王はそのままだから王朝の中身に変化ナシ。
戦後に家名が戻されることはなかったから、ウィンザー朝の王は初代のジョージ5世に始まって、現在のエリザベス2世で4代目となる。
そのエリザベス2世がイギリスの歴史で初めて即位70周年を迎えて、このまえ「プラチナ・ジュビリー」のイベントが開かれたのは記憶に新しい。

英女王・タイ国王・日本の天皇も迎えた「ジュビリー」とは?

「The king is dead, long live the king!」(国王は死んだ、国王万歳!)というイギリスの伝統はこれからも続いていく。

 

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。