きょう7月22日は、1099年にゴドフロワ・ド・ブイヨンが「聖墳墓教会の守護者」になった日だ。
ナニそのスープの素みたいな?という日本人のツッコみは不可避のゴドフロワ・ド・ブイヨンとは、第1回十字軍の指導者の一人でエルサレムの初代聖墓守護者となった人。
フランス人の彼はローマ教皇ウルバヌス2世の呼びかけに応え、聖地エルサレムをイスラム教徒の手から取り戻すため1096年に第1回十字軍に参加する。
エルサレムが全世界のキリスト教徒にとって、最も重要な聖地である理由はナニか?
それは、ここに聖墳墓教会があるから。
聖墳墓教会はキリストの墓とされる場所にある教会堂で、キリストが磔(はりつけ)で処刑されたゴルゴタの丘はこの場所にあったと言われている。
神の化身であるキリストの墓がイスラム教徒の支配下にあるということは、キリスト教徒にとっては屈辱的ということもあり、ウルバヌス2世が「トキはきた。いまこそ聖地エルサレムを奪回しよう!」と訴えると、人びとの口からは「デウス・ウルト!(神のみむねのままに!)」の叫び声が上がった。
それでブイヨン、…いやゴドフロワは十字軍の遠征に参加して、1099年にエルサレムの攻略に成功すると聖墓の守護者となる。
異教徒から聖地を取り戻した男は、ヨーロッパでは英雄になるしかない。
ということで彼はアレクサンドロス大王、カエサル、アーサー王、シャルルマーニュという世界史の中でも別格のスーパースターとともに「九偉人」の一人に選ばれた。
やるじゃんブイヨン。
ゴドフロワ・ド・ブイヨン
それから1000年が過ぎた21世紀の現在でも、聖墳墓教会はキリスト教世界で最も神聖で重要な場所とされている。
イエス=キリストはキリスト教の原点だ。
彼はすべての教派の始まりとなる存在だから、聖墳墓教会は東方正教会(ギリシャ正教)、アルメニア使徒教会、カトリック教会、コプト正教会、シリア正教会など複数の教派によって共同管理されている。
どこか特定の教派がこの教会の管理をすることになったら、大モメになることは分かり切っている。
それでどのグループにとっても平等になるよう、共同で管理するスタイルになった。
この教会は夏は朝5時、冬は4時に開門され、キリスト教の聖職者が中へ入って祈りを捧げている。
ということは、教会の門を開ける人が必要になってくるワケだ。
カギを持っていて門の開け閉めを担当するということは、その人物は実質的にこの聖墳墓教会を“管理”することになる。
でも、どのキリスト教のグループにとっても、ここは絶対的に中立・公平でないといけない。
では、一体どこのダレが聖墳墓教会のカギを所有しているのか?
それは、パレスチナ人のイスラム教徒だ。
イスラム教徒の一族にこの教会のカギの管理がまかされているのは、サラディン以来およそ800年の伝統で、結果的にキリスト教のどの教派にとっても中立だから、現在でも毎朝、イスラム教徒が門を開けている。
ちなみに報酬はないらしい。
キリスト教徒にとっては最高レベルで神聖な聖墳墓教会があるから、エルサレムは重要な聖地になっている。
イスラム教徒と戦って勝利し、そこを奪い返すことに成功したから、ブイヨン(ゴドフロワ)はアレクサンドロス大王、カエサル、アーサー王、シャルルマーニュと並ぶ「九偉人」の一人になったというのに、現代では、その最も重要な部分をイスラム教徒にまかせていた。
まあ、「イスラム教徒の手から聖地エルサレムを奪回せよ!」、「デウス・ウルト!」とか言ってた1000年前と違って、イスラム・キリスト教の共存が理想とされる21世紀らしい眺めではある。
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