【疫病封じ】スリランカ人は祇園祭をやらないの?

 

日本最大ではないけれど、「日本三大祭」のひとつに数えられるのが京都で7月に行われる祇園祭。
このタイミングには重要な意味がある。

冷蔵庫も上水道もなかった平安時代、高温多湿の京都にたくさんの人びとが住んでいたから、夏になると感染症が流行して命を落とす人も多かった。
ウイルスの存在を知らなかったそのころの日本人は、病気の原因を怨霊や疫病神など“怪異”のしわざだとガチで考えていた。
それで本格的な夏が始まるころに、疫病除けとして祇園祭をおこなうようになる。

日本代表する祭・祇園祭 その歴史や目的、外国人の反応

 

赤い鬼のような疫病神が家の中をのぞいている。

 

祇園祭で最も知られているのが山鉾巡行だ。
*ただしこれは最も重要な行事ではない。
昔の日本人さんは、キラキラしたとんがったモノに疫病神を集めることができると考えていたから、こんな天を刺すようなするどい鉾(ほこ)を山車に乗せ、街中をまわることで疫病神を吸収して街を清めようとした。
そしてその後、集めた疫病神を処分して疫病封じとする。

 

 

「暑い時期」なら外国にもある。
となるとそのころに感染症が発生したり、体調を崩す人が出ることもあったはずだ。
そして大昔、まだ人類はその原因がウイルスであることを知らなかった。
そんなら形ややり方は違っても、祇園祭のような行事を海外の人たちがしていてもおかしくない。
むしろ疫病除けのイベントを、何もしないというのが不自然のような?
そんな疑問を持ったんで、日本に住む5人のスリランカ人に話を聞いてみた。

 

「夏になると日本では祇園祭という祭があってだな~」とまず話すと、「スリランカは一年中暑いです!夏しかありません!」と彼らに笑われた。
あっ…、たしかに。
一年の月ごとの平均気温の移り変わりを見ると、夏に向かって高くなる「山型」の日本と違って、最大都市コロンボでは25~30度の間を推移しているから、直線が横に伸びている状態だ。
スリランカ人の季節感覚で重要なのは温度よりも雨で、一年は大きく雨季と乾季に分けられる。
そんな年中無休で暑い常夏の国に、春夏秋冬の四季を前提にした話は通じない。
ということで、感染症などが特に集中して起こる時期はないらしい。

でも日本と同じように、スリランカにも昔からさまざまな病気があって、その原因がウイルスであることは誰も知らなかったはず。
病気を恐れる気持ちは人類共通だから、それならもう祇園祭みたいな厄除け行事をやるしかない!
…と思ったんだが、スリランカにそんなイベントがあったという話は誰も聞いたことがない。
仏教の国スリランカの伝統的な考え方によると、人生で起こる良いことも悪いことも、すべては自分のカルマの結果になる。
過去に悪いことをしたから、それがいま病気となってあらわれた。
「疫病神」といった特定の存在ではなくて、カルマによる因果応報と考えるから、病気など不幸なことがおきたら、個人的にお寺に行って仏像に祈ることがスリランカ人には自然の発想。
だから大勢の人が集まって、祇園祭のような厄除けの祭をするこようなことはない。

*彼らがこう考えているだけで、スリランカにこうしたイベントがまったく無いかは分からない。

でも、「スリランカに仏教が伝わるまえ、人びとは木や石に”神”がいると信じていて、災いを避けるために神に祈る儀式をしていたという話を聞いたことがある。でも仏教が広がっていくと、そんな信仰も消えていった」と1人が言うと、別の人が「そういえば、そんな古代信仰を続けている先住民(ヴェッダ人)の知り合いが、彼らはいまでもそんな祭をしていると話していた」と思い出したように言う。

ということで彼らから見て、日本の祇園祭にいちばん近いのは、自然物に神や精霊の存在を感じる先住民のしていた不思議な儀式だった。
千年以上の歴史のある祇園祭には、古代の日本人の信仰の面影があるから、共通した部分があるかも。

そんなヴェッダ人の生活がこちら。
ただ動画で説明しているように、こんな原始的な暮らしをしているヴェッダ人はいまでは本当に少ない。

 

 

彼らが祇園祭の動画を見て、頭に浮かんだのは「アジア三大祭」のひとつ、ペラヘラ祭だ。
*個人的に、この「アジア三大祭」というキャッチコピーを使っているのは日本人しか知らない。

ペラヘラ祭は毎年7~8月に行われているから、時期的に祇園祭とシンクロしている。
この時、ふだんは仏歯寺というお寺にあって、スリランカで最も大事にされているシャカの歯(仏歯)が象の背中に乗せられて、都市の中をめぐって民衆を歓喜させる。
人びとがこの仏歯を拝んだり、豊かな収穫を得られるよう降雨を願ってこの祭が行われるから、目的は違っていても、行列が街中を進む様子は祇園祭の山鉾巡行と似ている。
でも、スリランカ人の好みを反映しているから、ペラヘラ祭はにぎやかなで超派手だ。
電装のゾウを先頭に音楽隊やダンサーがパレードする様子は、山鉾巡行よりディズニーパレードに近い。
これはスリランカ人にとって最も大事なお祭だ。

 

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。