「初めて見た!」と外国人 動物供養は世界で日本だけ?

 

日本にはいろいろなお寺があって、山口県萩市にある雲林寺は強烈なネコ推し寺だ。

 

 

「ネコを捨てた世はほろびる」がキャッチコピーのこの雲林寺では毎年7月に猫や熱帯魚、インコなどの動物供養をしている。
その際には猫形の特別な木魚「玉猫」が使われるとか。

さて1882年に開園した日本で最も古い動物園で、キリンやカバの繁殖に初めて成功するなど素晴らしい歴史を刻んできた上野動物園で、1943年にとても悲しい出来事があった。
太平洋戦争中だったこの時、空襲を受けて動物が逃げ出すことを防ぐために、園内にいたゾウ、クマ、ライオン、ヒョウ、トラ、ニシキヘビ、アメリカバイソン、チーターが処分(薬殺や餓死)されたのだ。
東京でこれらの生き物が一斉に脱走するというのは、映画やアニメの展開だからこれは仕方ない。
戦争になれば、海外でもきっとこんな悲しい対応はする。
だとしても、上野動物園みたいに浅草寺からお坊さんを招いて、動物供養をするような国は日本以外にあるだろうか?

 

これまでキリスト教文化圏の欧米人、インドネシア人やバングラデシュ人などのイスラム教徒に浜松市にあるお寺を案内した。
そのとき「こんなのは初めて見た!」と彼らが口々に言ったのが、亡くなった動物を慰霊するこのペット観音。

 

 

家族の一員であるペットが息を引き取れば、悲しい思いをするのは人類共通で、死体を丁寧に土に埋めることはある。
でも、こんな動物供養は聞いたことがないと外国人は言う。
キリスト教やイスラム教ではそんな発想は出てこないらしい。
ではここはお寺だし、仏教ならどうだろう?

明治時代にチベットへ行った日本人僧の川口慧海が、チベット人のと殺方法についてこう書いている。
*「とさつ」で漢字変換しても「屠殺」が出てこない。どうやらこれは「不適切語」と認識されているらしい。
ちなみに仏教では一般的に肉食を禁止しているけど、チベット人の仏教徒は日常的に食べていた。

ラサ府では殺す度にお経の本を頭に載せてありがたい事を聞かして遣るというということもない。

「チベット旅行記 (河口 慧海)」

 

つまりラサ以外のところでは、チベット人はお経を聞かせてから動物をあの世へおくっていたのだ。
日本の動物供養とは前後の順序が違うだけで、動物の成仏を願う気持ちは同じ。
ヒトが生きるためには肉を食べないといけない。
でも罪悪感はあるから、命を奪う代わりに慈悲はかける。
チベット人はそうやって、仏教思想と現実生活を両立させていた。

キリスト教やイスラム教と違って肉食を禁止する仏教なら、「ペット観音」の発想も通じるかも。
そう思ってタイ人やミャンマー人をここに連れてきて聞いても、「こんなのは初めて見ました!」と欧米人と同じことを言う。
でも、こうした日本人の思いやりはとても素晴らしいと、どの外国人も称賛する。
動物供養が広く行われている国なんて、やっぱり世界で日本だけなのか。
「ネコを捨てた世はほろびる」と主張する宗教施設があるのはこの国だけだろうけど。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。