【日韓の外交戦】韓国「早急な解決を」→日本「だが断る」

 

きょう9月5日は、1914年の第一次世界大戦で「マルヌ会戦」が始まった日。
ドイツとしては総攻撃をしかけてフランスをすぐに制圧した後、反転してロシア軍と戦おうと考えていた(シュリーフェン・プラン)。
でもフランス軍が強力な抵抗を見せて、ドイツが想定していた短期決戦は不可能となり、長期戦へともつれこむ。

 

最近、日本と韓国の“外交戦”でも「マルヌ会戦」があったらしい。
中央日報の記事(2022.09.05)

韓日微妙な強制徴用「温度差」…韓国「早急な解決策」、日本「一貫した立場」

日本も韓国もいまの関係は最悪レベルにあるという認識は一致していて、できるだけ早く修復したいとも考えている。
でもそのためには、徴用工問題を解決しないといけない。
立場が同じなのはここまでで、その方法論となるといつも意見が分かれる。
「懸案の早急な解決策をまとめたい」と強調する韓国の朴(パク)外相に対し、「日本の一貫した立場」に基づいて韓国側とコミュニケーションしていくと林外相は釘を刺す。
韓国の望む短期決戦を日本が阻止したカタチだ。

日本の「一貫した立場」とは、過去の合意に基づいて問題を解決しようとするもの。
徴用工問題は1965年に、日韓両政府が「完全かつ最終的に解決された」と確認したことですでに終わっていて、あとは韓国側が解決すべきと日本政府は考えている。
日本はこの協定に基づいて、5億ドルというばく大な経済協力金を渡したのだから、いまになってこの約束をひっくり返してはいけない。

毎日新聞のソウル支局長・坂口裕彦氏もこう書く。(2022年7月23日)

日本政府は「韓国最高裁が出した判決によって生じた問題は、韓国国内で解決すべきだ」と主張している。(中略)「国同士で約束したことは守るべきではないか」という日本政府の主張は妥当に思える。

徴用工問題 「今度こそは」か「言葉だけならいらない」か 重大局面の日韓関係

 

後から自分の言葉を否定する相手とは、個人レベルでも関係は築けない。
国民の反発もあって、解決策をまとめることがむずかしい韓国政府は、日本に謝罪や賠償金の支払いなどの”誠意”を要求している。
だとしても最優先されるのは国同士の約束で、その点で日本が譲歩することはできない。
やっぱりこれは、基本的に韓国が解決すべき事案だ。

 

つい先日もスピード解決を求める韓国に、「だが断る」と日本はノーを突きつけた。

産経新聞の記事(2022/9/2)

日韓首脳会談「早ければ今月」と韓国示唆 日本側否定

日韓首脳会談について金聖翰(キム・ソンハン)大統領府国家安保室長は「(日本と)具体的な時期を議論した」と公式に述べ、今月中にも首脳会談が行われることを示唆した。
それに対して、日本政府高官は「徴用工問題の解決を求めただけであり、首脳会談の日程については一切協議していない」と韓国側の発表を高速否定する。

首脳会談が行われるかどうかは韓国側にかかっていて、納得できる解決案を提示すれば日本はすぐに応じるはずだ。
一刻も早く関係を改善させたい気持ちは日本も同じなのだから。
でも韓国はそれには応じず、「未来志向的な関係」を急いで求めるから、日本がそれにストップをかける「マルヌ会戦」状態が続いている。
歴史上のマルヌ会戦は短期決戦をしかけたドイツが負けた。
韓国側には不幸フラグが立ったわけだが、この日韓の”外交戦”は先が見通せない。

 

 

近くて遠い日本と韓国 「目次」 ①

近くて遠い日本と韓国 「目次」 ②

やっと行われた日韓の外相会談、しかし不安しかない

日本の新聞が文大統領に「”反日”体質・歴史のわい曲」と批判。

3月1日は「反日の日」。日本人の韓国旅行は危険なのか?

 

コメントを残す

ABOUTこの記事をかいた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。