エリザベス女王の死去即、ロンドン橋・ユニコーン作戦発動

 

人類の歴史上、最も長く王として君臨したのがフランスの国王ルイ14世(72年:在位1643年~1715年)で、2番目がイギリスのエリザベス2世(70年:在位1952年~2022年)だ。
在位だけでなく、エリザベス2世の国王としての公式名称も長かった。

「Elizabeth II, by the Grace of God of the United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland and of Her other Realms and Territories Queen, Head of the Commonwealth, Defender of the Faith」

(神の恩寵によるグレートブリテンおよび北部アイルランド連合王国およびその他のレルムと領土の王、コモンウェルスの長、信仰の擁護者・エリザベス2世)

そんな世界から愛された女王が先日8日、この世を去った。
するとイギリスの首相官邸などで、10分以内にすべての国旗が半旗にされ、10日には王室が国葬を19日に執り行うと発表する。
新国王チャールズ3世も10日、「立憲君主制を支え、この国と世界の英連邦加盟国が平和で調和しながら繁栄するように努める」と即位の宣誓を行った。

なんという手際の良さ。
国王と元首相では立場が違うのは当然としても、安倍元首相の国葬は9月27日に実施すると、7月14日に発表された。2カ月以上も前だったことを思うと、1週間ほどで準備は大丈夫なのか?
「ずいぶん早くものごとが進むな~」と個人的に思ったら、ワケがあった。

それは「Operation London Bridge(ロンドン橋作戦)」というコードネームの極秘計画。
『007』の次回作みたいな「ロンドン橋作戦」とは、エリザベス女王の死を想定して、イギリスの王室や首相官邸が準備してきたという行動計画のこと。
日本では天皇陛下にそんな不幸があると、”死”という直接的な言葉は避けて「お隠れになる」と表現することがある。
今回の場合、女王が亡くなると秘書が首相に電話をかけ、遠回しに「ロンドン橋が落ちた」と伝える。
*これはイギリスの童謡「マザーグース」にある有名な一節。
この一報で作戦が始まり、世界中に50以上あるイギリス連邦の国などに知らせが届く。

女王が死去するとすぐに新国王が誕生する、10分以内にすべての国旗が半旗にされる、国葬の日にちを発表するといった一連の流れは、事前に緻密に練られていた「ロンドン橋作戦」が発動されたからだった。
いま新国王チャールズ3世がしている公務もこの作戦に基づいていて、これには国民への「お披露目」の意味もあるらしい。

なお、エリザベス女王に敬意を表してJRAの各施設で半旗が掲げられたのは、「Operation London Bridge」とは無関係と思われる。

女王に「その瞬間」が訪れるのはロンドンとは限らない。
今回は静養先のスコットランドで亡くなった。
その事態も想定してあったから、ロンドン橋計画のなかに「ユニコーン作戦」が用意されていて、それに基づいてこれから女王の棺(ひつぎ)がロンドンに運ばれるという。
すべては想定どおり。
だから国内や世界中に悲しみがあふれていても、混乱はまったく無い。

 

おまけ

日本では天皇の不幸の際、「崩御(ほうぎょ)」という言葉を使う。
この起源は古代中国の書『礼記』のこんな一文にある。

「天子の死は崩(ほう)と曰(い)ひ、諸侯は薨(こう)と曰ひ、大夫(たいふ)は卒(そつ)と曰ひ、士は不禄(ふろく)と曰ひ、庶人は死と曰ふ」

つまり、いちばん身分の低い民衆なら「死」で、最も高貴な人には「崩」を使うと。
もちろんこれは古代中国の話。
中国人の話だと天子(皇帝)の死は、山が崩れて地が裂けるような大事件だから「崩」という字を使うらしい。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。