韓国人には国民食と言ってもいい身近な食べ物が「キムパプ(キンパ)」。
「キム」は海苔(のり)、「パプ」はご飯の意味で、野菜や卵などをご飯に包んで海苔で巻いて作るこの食べ物は、つまり日本ののり巻きだ。
1910~45年の日本統治時代に朝鮮半島へ伝わったのり巻きが、韓国で独自のアレンジが加えられていまのキムパブになった。
それがなぜか歴史が逆転し、韓国でキムパブが先にできて、それが日本へ伝わったと主張する人もいる。
侍、刀、剣道、空手、歌舞伎、折り紙、寿司、たくあん、桜といった日本文化の起源はわが国にある! と韓国でダレか言い出すと、「ふざけんな!」と日本で反発が起こることはよくある。(韓国起源説)
そんな話を知人のトルコ人にすると、「日本と韓国にもそんなコトがあるんですか!」と言う。
「も」とは?
きょう9月22日は1903年に、ブルガリアがオスマン帝国からの独立を宣言したから独立記念日になっている。
ブルガリア帝国は14世紀にオスマン帝国に滅ぼされ、約500年間もの長い間、その支配下にあった。
だから、ブルガリアはオスマン帝国の文化的影響を強く受けることとなる。(オスマン時代のブルガリア)
*1878年にオスマン帝国がロシアとの戦争に敗北したことで、ブルガリア公国として独立。
そんな歴史もあって、ヨーグルトはトルコで生まれてブルガリアへ伝わったっつーのに、ブルガリア人がその起源を主張するからトルコ人をイラっとさせる。
日韓の起源論争を聞いて、知人の頭にはこの「ヨーグルト論争」が浮かんだ。
そう言えば、ヨーグルトの語源は「ヨウルト」という古いトルコだったけ。
だが待ってほしい。
ヨーグルトの起源は、実際のところ「人類」だ。
約7000年前にヨーロッパ、中近東、アジアのあたりで人類が家畜として羊を飼うようになる。
そして羊の乳の入った容器に、たまたま乳酸菌が入り込んでできた飲み物がヨーグルトの始まりと考えられている。(ヨーグルト)
ヨーグルトを発明したのは紀元前5000年ごろのダレかだから、その起源を主張するのは無意味。
ただ、トルコ独自の製法が現代のヨーグルトの元になったかもしれない。
トルコはヨーグルトの消費量が世界一。
多くの国民がその発祥の地はトルコだと信じているから、ブルガリア人がそれを主張すると、「は?なんて?」とカチンとくる。
では、なんでヨーグルトというとブルガリアが有名なのか?
この食品が世界的に知られるようになったのは、ノーベル賞を受賞した微生物学者のイリヤ・メチニコフ(1845年 – 1916年)の発見による。
彼がブルガリアを旅行した際、現地の人が長寿である理由は伝統食品のヨーグルトにあると考えて、「ヨーグルト不老長寿説」を発表した。
これでこの食べ物がブレイクする。
『明治ブルガリアヨーグルト』もこの説の延長にあると思われ。
知人のトルコ人はヨーグルトをめぐるブルガリアとの「文化の奪い合い」は、トルコが支配した歴史に由来すると考えている。
あれはブルガリア人にとっては屈辱的だった。
それに、ブルガリアのヨーグルトが世界的に有名になったことも事実だ。
トルコへのライバル心があるから、彼らはヨーグルト発祥を主張するのだろうけど、正解はトルコだからその点は譲れない。
でも、21世紀のいまそんなことで隣国と争っていても、メリットよりデメリットのほうが大きい。
だから彼としてはヨーグルトの故郷よりも、そのことで国民の敵対心に火がついてしまうことを不安視する。
日本人にとっての「韓国起源説」も同じで、事実は主張しないといけないとしても、熱くなって問題を大きくする必要はない。
こういうもめ事は世界の「隣国あるある」のひとつだ。
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