能力あっても自信ナシ:米国人が感じた中学・英語教育の不満

 

カタカナを発音することと、英語を話すことには軽く12万光年の開きがある。
日本にいたアメリカ人が日本人の友人と一緒にいて、「ランチは○○でいい?」ときかれて、初耳のレストランだったから「OK!」と即答。
「どんなお店なんだろう?」とワクワクしながらついて行ったら、それはマクドナルドでしたというオチ。
「McDonald」を「マクドナルド」と発音するというのは、そのアメリカ人には衝撃的だった。
そんなアメリカ人ならこの変化を歓迎するはず。

朝日新聞の記事(2022年9月23日)

民間の英語スピーキングテスト、都立高入試に利用へ 公立では全国初

東京は来年の都立高校入試から、「スピーキングテスト」の採用を正式に決めた。
これは日本初の試みということで、いま教育関係者や保護者などから大注目されている。

「いやいや、これだと人前で話すのが苦手な生徒もいるから、英語能力のまえに陽キャラ・陰キャラで差が出てしまうんじゃないの?」といった心配は無用だ。
生徒は英語の文章を読んだりイラストの説明をタブレットに録音し、それを提出するから人と向かい合って英語で話すことはない。
後は文法の正しさや発音などの基準から、生徒のスピーキング能力が判定されるという仕組み。

日本人の弱点である「使える英語」、「実践的な英語力」の習得をめざすこの試みには、やっぱり懸念や不安の声もある。
ネットの反応を見ると、この入試改革には否定的な人が多いようだ。

・目的は選抜試験なんだから、スピーキングは要らないよ
・まずは論文の読み書きができるように
そこを目指すべきだと思う。
・日本の若者が英語話せるようになったら
皆海外脱出しちゃうからね
・子供が英語使えるようになるかを最大の争点とすべきじゃないの?
何と闘ってるの?
・庶民に英語いらんやろ。

 

日本の中学校で英語を教えていた知人のアメリカ人は、この必要性を強く感じていて、日本の英語教育では「話す力」を評価するシステムを採用するべきだと熱く語っていた。
そのアメリカ人が勤務していた中学校ではどこも、語彙文法・読解・リスニングを評価していて、スピーキングの力はほぼスルー。
だから、アメリカ人の質問にほとんど答えることができなくても、テストで良い点を取れば「英語のできる生徒」として称賛される。
その一方で、文法の原則を織田信長なみに破壊するけど、英語で意思や気持ちを伝えられて、休み時間にはそのアメリカ人へ話しかけるぐらい積極性のある生徒は評価されず、学校では「英語の苦手な生徒」と見なされる。
試験で高得点をとらないと、それだけでは授業中に褒められるだけで成績には関係ない。
上の生徒よりも「相手に理解してもらう英語を発信する力」は明らかに高いのに、それを評価するシステムが無いから、生徒も自分を英語のできない人間と思い込んでしまう。

日本人の先生は「国際化のいま、外国人に英語で伝える力が日本の子供たちには大事で、日本の英語教育もそういう方向に進んでいる」とみんな言うのに、どう見ても制度がそうなっていない。
公平性に多少の問題があっても、生徒の個性や長所を伸ばしていくことが教育の目的と考えているそのアメリカ人としては、英語の力はあるのに自信を失ってしまう生徒を見るのはツラい。

「英語を話す力」を重視する東京都の姿勢は全国の道府県でも基本的に同じだから、批判はいろいろあったとしても、入試でスピーキング能力が試される傾向はきっとこれから全国へ広がっていく。
やる気も能力もあるのに、それがまわりに認められないから、子供が自信を無くすというのは教育としてそもそもおかしい。
客観性と公平性にとらわれすぎると、子供の個性やストロングポイントを殺してしまう。
中学生の段階から「話力」を重視すると言うだけではなくて、入試で具体的に評価されるようになれば、外国人に「McDonald」と正しく伝えられるぐらいにはなれるはず。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。