日本と欧米の迷信:13日の金曜日・丙午が「不吉」な理由

 

日本に住んでいたドイツ人と話をしてたら、「そういえばおもしろい話がある!」と彼が言い出す。
日本人の友人から少しまえに試験を受けたと聞いたから、その手応えをたずねると、友人はあきらめ顔でこう言った。

「たぶんダメ。受験番号が“49”とか縁起が悪すぎる」

このとき彼は日本で4は「死」、9は「苦」に通じて不吉な数字になるという「忌み数」の考え方を知る。
これは日本の文化で、野球の背番号でも42(死に番)、44、49といった数字は避けられる。
でも外国人選手は気にしないから、彼らの背番号は40番台に集中しているという。
受験にそんな不合理な迷信は関係ないから、42、44、49、444といった無慈悲な番号をもらうこともある。
すべては運か、あえて言えば過去の行いだ。
受験番号が「4649」だと、よろこんでいいのか悲しむべきか悩む。
知人のドイツ人は日本文化に興味があるから、こういう話は大好物。

 

さて、きょう10月13日は1307年にフランスで、国王フィリップ4世がテンプル騎士団の壊滅をねらってメンバーを一斉逮捕した日だ。
このあと騎士団は財産を没収されて、幹部は処刑される。
なんという不吉な日…。
この日が金曜日だったということで、「13日の金曜日は不吉な日」と思われるようになったという説がある。
上のドイツ人に「忌み数」があるか聞いたら、彼もこの「13」を挙げた。

この日が忌むべき日になった理由は、「イエス・キリストが処刑されたのが13日の金曜日だから」とよく言われる。
でも、「13」が不幸を暗示することの由来はハッキリしてなくて、ほかにもこんな説があり。

・キリストが最後にした晩餐には13人いたことから、13は不吉な数となった。
・北欧神話で12人の神が食事を楽しんでいた時、招待されていない神ロキが13人目としてやってきてバルドル神を殺す。すると世界は闇に包まれた。

 

「13日の金曜日は不吉な日」とキリスト教世界では考えられている。
…ということは特になく、ギリシャ人にとっては火曜日(13日は特に)だし、イタリアでは17日の金曜日、スペイン語圏では13日の火曜日が不吉な日とされている。
ちなみに『ゴルゴ13』とは、ゴルゴタの丘でイエス・キリストに荊の冠をかぶせて殺した13番目の男、13番目という不吉な数字を背負った男という意味らしい。

この迷信は英語圏やドイツなどで当てはまって、大リーグで「13」は背番号で最も嫌われている。
アメリカでは1700万人~2100万人が「13日の金曜日」を恐れているとされ、それは歴史上、最も恐れられている日であるというデータもある。

an estimated 17–21 million people in the United States are affected by a fear of this day, making it the most feared day and date in history.

Friday the 13th

 

その結果アメリカでは、この日には飛行機に乗る人が減る、仕事を避ける、交通事故や医療事故が増えるといった話が出回るようになった。
オランダでは逆に、13日の金曜日になると人びとは注意深くなるから、火災や盗難の件数が他の金曜日よりも少なくなるという報告がある。
どんな結果であれ、多くの人がこの日に心理的影響を受けていることは間違いない。

 

そんな欧米の迷信を知ると、日本では干支の「丙午」(ひのえうま、へいご)が思い浮かぶ。
丙も午も「火」に属することから、丙午の年には火事がよく起こると言われていた。
さらに江戸時代にあった「八百屋お七の放火事件」の後から、丙午の年に生まれた女は気性が激しくて男を殺す、その年に生まれた女と結婚した男は早死にするという迷信が生まれた。

日本人と迷信:八百屋お七・丙午生まれの女性が”嫌われた”ワケ

そんなことから、日本人は丙午の年に子どもを産むことを避けるようになる。
大正時代にはそんな迷信を否定する風潮もあったが、同時に、丙午に生まれた女性が縁談の破談を苦にして自殺したという報道もあった。
昭和になってもこの迷信を信じる人は多くいて、1950年から2008年までの出生率のデータを見ると(赤)、丙午の年に当たる1966年の出生率がガクンと低くなっている。

 

 

ただ、1966年(丙午の年)に生まれた子どもは、高校・大学受験が他の年よりもラクだったという話もあるから、もしそうなら、ガチャなら当たりだ。
「受験番号が“49”とか縁起が悪すぎる…」と嘆くレベルなら差別や自殺はないし、令和の日本は本当に近代化した。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。