コロナと国民性:日本の成功の理由は、外国人が感じる”違和感”

 

幕末の日本にアメリカから、ペリー率いる4隻の軍艦がやってきて、武力をちらつかせながら開国を求めてきた。
この外圧から日本は“鎖国”政策をやめ、外国との交流を始めることにして国内の港を開放する。

江戸から明治へ時代が変わったころ、エリザ・シドモアというアメリカの著作家が日本を旅行して、日本人の印象を日記にこう記す。

日本は今世紀最大の謎であり、最も不可解で矛盾に満ちた民族です

「シドモア日本紀行 (講談社学術文庫)」

ナショナルジオグラフィック協会初の女性理事となったエリザ・シドモア

 

トキは流れて21世紀のいま、世界中の国がコロナ禍で外国人の受け入れをストップし、最近になってそれが解除されてきた。
“コロナ鎖国”が終わって、日本へやってきた外国人が強烈な違和感をおぼえたのは「マスク」だった。

テレ朝ニュース(2022/11/09)

海外では“マスク離れ”が進んでいます。アメリカの中間選挙で演説をするバイデン大統領。その姿を見守る支援者は密集しているにもかかわらず、誰もマスクを着けていません。

マスクは変? 日本のコロナ対策に外国人が“違和感”

 

新型コロナの感染対策はどこの国でもしているから、これはとても比較しやすい。
アメリカやフランス、韓国などでは屋外でのマスクの着用義務は無くなって、日本でも原則不要となっているけど、まだまだ外さない人が多い。
そんな日本人を見て、アメリカからきた観光客はこう話す。

「皆マスクをしていますよね。アメリカではマスクを着けている人はいませんよ。日本では着けないと場違いな感じがする」

広い新宿御苑へ行ったベルギー人はこう思った。

「そこで不思議な光景を見ました。誰もいない芝生の上で男性1人しかいないのにマスクを着けていたんですよ」

さすがに「今世紀最大の謎、最も不可解で矛盾に満ちた民族」とまで言う人はいなかったが、来日外国人は日本人を見て違和感や不思議を感じている。

このニュースにネットの声は?

・街で忍者やサムライ見かけたようなもんだろ
・アメリカでもマスクしてないと入店お断りの店あるんだけど
・もう観光ガイドブックで日本に来たら屋外で揃ってマスクしてる日本人という奇妙で面白いもの見れますよって紹介しとけよ
・日本人は脳を使うことをやめてしまった民だからな
・アメリカ人も「マスクは変」って同調圧力に屈してるだけだなw

 

”コロナ生活”が長く続いてしまって、素顔をさらすのは恥ずかしい、マスクで隠すのがフツウという人が増えて、『顔パンツ』という日本語もうまれた。
「日本の常識は世界の非常識」という言葉は前々からあって、コロナ禍でそれが加速した感がある。
だから外国人がくると場違いな感じがする。
アメリカでは、メディアはもうほとんど取り上げていないし、コロナは過去の話になっているという。
といっても、外国人が日本人を非難することはない。
アメリカ人の観光客は「それで皆さんが安心できるのであれば良いんじゃないかな。でもとても面白いと思う」と言うし、「厳しいルールで高齢者を守りたいのでしょうね。とても理解できますよ」とオーストラリア人も共感している。
海外ではもともとマスクをする習慣が無い国が多く、「マスク着用=重い病気の人か医療関係者」といったイメージをもつ人もよくいる。
コロナの前から日本人はよくマスクをして街を歩いていたから、来日外国人の違和感ならそのころからあった。

マスクを着けるべきかどうかの“正解”は、国や状況によって変わってくる。
外国人は武力で日本を変えるようしているのではなくて、日本の印象を話しているだけ。
外国人の言葉を神のお告げのように聞く必要はなくて、かといって排除することもなく、判断材料のひとつにしてそれを基に自分で決めればいい。
ただ、いまの日本で屋外でのマスク着用は合理的だ。
11月9日に確認された新規感染者は8万7410人で、北海道では過去最多を記録したし、コロナの感染拡大について専門家は「第8波」に入りつつあると警戒している。
危機的状況に突入していることを考えたら、マスク着用というチョイスはまったくおかしくない。

 

ではここで一年前をふり返ってみよう。
イギリス紙「ガーディアン」に、コロナ禍の“崖っぷち”から復活した日本がどのようにして驚くような成功を収めたのか、その理由を探る記事がある。(Wed 13 Oct 2021)

Back from the brink: how Japan became a surprise Covid success story

東京五輪が終わったころから、新規感染者が過去最多を記録するなど、日本は“大惨事”へ向かって突き進んでいるように見えた。が、「2ヵ月間で日本では驚くべきことが起きた」と記事は注目する。
ヨーロッパでは感染拡大が止まらず、その防止に必死になっている国が多いのに、日本では急激に減り続けている。
外国人から見るとこれは「異常な好転」。
この現象について専門家は次の2つの理由を指摘した。

・ワクチン接種が順調に進んでいる。
欧米でよくある反対運動が日本ではほとんどないから、接種率が増加していった。

・コロナ前からあったマスクの着用習慣。
欧米人と違って、日本人は一般的にマスクをすることへの抵抗感が無い。だから、外国では屋内でのマスク着用が義務ではなくなっても、日本人の多くは、マスク無しの外出を非常識と考えている。

 

外国と比べると、日本はロックダウンを断行して市民生活を制限したり、GPSで当局が人びとの行動を把握するといった人権侵害に近いことをしなかったのに、感染者や死者の数は少なくて、世界的にはコロナ対策がうまくいっていた。
いま外国人が日本へきて感じる違和感こそが、「a surprise Covid success story」の理由だ。
「手のひら返し」もよくあるし、外国人の声に左右される必要はまったくない。
「不思議な光景を見ました」と外国人は言うが、一年前、母国はどんな状態だったのか?
日本人は日本人でいるのが正解だ。
でも、今世紀最大の謎、最も不可解で矛盾に満ちた民族、とまで言われたら考えたほうがいい。

 

 

アメリカ 「目次」

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。