「ダメだ!あんな男との結婚なんて、絶対に認めん!」という父親の大反対を押し切って、娘がその男性と結婚した場合、親子で言い争いになって、昭和なら父が娘にビンタをしたかも。
日本なら、”ギリ”あったとしても娘に暴力をふるうことぐらい。
そんな日本の感覚からすると、インドは価値観も文化も、実は存在する世界線も違うのでは?と思ってしまうような事件が最近あった。
カーストの違う男性と結婚したことを知り、激怒した父親が21歳の娘を射殺する。
イギリス紙『デイリー・ミラー』の記事(24 Nov 2022)
Dad shoots daughter and mum helps dump body after ‘she married man from different caste’
その後、赤いスーツケースに詰め込まれている女性の遺体が発見されたことから、父親が娘を殺害し、母親と一緒に死体をスーツケースに入れて運んで捨てたことが発覚。
これはカーストの違う人間と結婚することで、一族に”恥”をかかせて名誉を汚すと考えた親による名誉殺人らしい。
この事件に日本のネット民の感想は?
・あえて言おうカスであると
・これがある限りインドは中国の上には行けない。
・欧米の意識高いポリコレの人達はインドには文句言いに行かないのか
・旦那のカーストが低い日本はおかしい
・これがあるからインドは永遠に発展できない
けど日本からしたらどうでもいい話
インドでは昔から、こういったカーストの違いをめぐる争いが絶えない。
3年前には、カーストの違いを超えて結婚した夫婦が捕まり、親族らに石を投げ付けられて2人とも殺される事件があった。
AFPの記事(2019年11月8日)
異なるカーストのインド人夫婦、親族が石で殺害 「名誉殺人」か
他にもヒンドゥー・イスラム教の対立もあるし、宗教をめぐって人が殺される事件が起こるのはインドと日本の大きな違いの一つ。
ではそれついて、インド人はどう思っているのか?
日本に住んでいたインド人に聞くと、「こうした衝撃的な出来事はときどき起こって、そのたびに自分も胸が痛む。インドには古い考え方をしている人が本当に多いんだ」といった話をするのだが、でもどこか「どうでもいい話」と他人事のように思っているような印象を受けた。
インドと日本の違いはなんつっても多様性で、州が違うと言葉も変わるから、同じ国民同士でも話ができないことがある。
あるインド人はシッキム地方へ行った時、ホテルのスタッフはヒンディー語ができないし、彼もシッキム語は分からなかったから、共通語の英語を使ってチェックインして簡単な会話もした。
この場合、どっちかが英語を話せないとアウト。
日本国内でも言葉が通じないから、日本人同士が外国語を使って話をするという状況はもう架空の日本だけど、インドではそんなことが日常茶飯事で常識の真ん中にある。
インドの大学では英語で授業が行われているし、大卒の人間ならまず間違いなく英語を話すことができる。
ボクが日本で知り合うインド人はそんな”上流”の人ばかりで、完璧な英語を話すし知識も豊富だ。
デリーに帰ったインド人がSNSに、親族を集めて娘の誕生日パーティーをしている写真をアップしたのを見て、広さや調度品からホテルの一室かと思ったら、それは彼の自宅と知ってビビった。
彼ら夫婦が日本のアパートに住むことになって、最初に2LDKの部屋を見た時、「あの狭さは衝撃的だった!」と思った理由がやっとわかった。
そんなエリート層にいるインド人からすると、カーストの違いから身内を殺害するのは教育を受けていない人間で、自分たちとはまったく縁も接点も無い。
彼らは自分と同じぐらい自由に英語を話せて、金も地位もある人と付き合うから、「名誉殺人」をするような人間とは文字通り、住む世界が違うのだ。
そういう人間は英語を話せないから、母語が違えば会話もできない。
だから、そういう事件をニュースをネットで読んで「ひどい話だな」と思っても、すぐに頭から消えるというから、受け止め方はたぶん日本人と変わらない。
言葉やカーストの他にも、社会の中で住む世界がハッキリ分かれているインドは多様性にあふれすぎ。
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