いまカタールで行われているサッカー・ワールドカップで、きのうイングランドがウェールズに3ー0で勝利する。
これでイングランドは決勝トーナメント進出を決めた、ということよりも、ネットの反応を見るとこんな疑問をもつ日本人さんが多かった。
・これって北海道対東京みたいなもん?
だったら一緒にした方が強くね?
・日本でいうと東京代表と大阪代表が試合してるようなもんか
・同じ国で同士討ちとはこれいかに?
・本州代表vs九州代表みたいなもんか
・なんでイギリスだけ4チームもあるの?
この対決をあえて日本に当てはめると、首都のあるイングランドは東京で、方角・面積的にウェールズは四国になる。
*ウェールズは20,780 km²で、四国は18,800 km²。
このイギリス同士の戦い(Battle of Britain)はW杯の歴史で初めてだったから、そういう点でも世界の注目を集めていた。
なんでW杯で「イギリス代表」が存在しないのかは、この国の正式名称がヒントになる。
グレートブリテン及び北アイルランド連合王国
(United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland)
漢字で書くと「英国」で終わるこの国は、ブリテン島にあるイングランド、スコットランド、ウェールズ、それと北アイルランドの4か国で構成される連合王国(United Kingdom)なのだ。
そのへんをよく分かってなくて、個人的にはとてもビターな思い出がある。
スコットランド、ウェールズ、北アイルランドを日本の感覚で「地方」と理解していて、スコットランド出身と言うイギリス人に「ああ、あなたはイングリッシュ(英国人)ですか」と言ったら、「ちがうわっ!」と怒られた。こっちが思わず「ソーリー」と言ってしまうほど、彼の怒りは尋常じゃない。
だから基本的にこの4つは「国」と考えたほうがいい。
なんでイギリスだけがサッカーW杯で4チーム参加できるのかというと、イギリスサッカーの歴史は世界最古だから。
まず1863年にイングランドサッカー協会が設立されて、これが世界で最初のサッカー協会となる。
ちなみに日本ではこの年、浪士組(新撰組)が結成されたり薩英戦争が起きたりして、幕末の動乱期でいろいろワチャワチャしていた。
その後、スコットランド、ウェールズ、アイルランドでサッカー協会がつくられ、1872年に世界最初のサッカー国際試合「イングランド vs スコットランド」戦が行われる。
つまりサッカーの国際試合とは、もともとこの4カ国で行われる試合を指していたのだ。
20世紀になるとサッカーは世界各地で人気になる。
イギリス以外でも国際試合が行われるようになると、それを統括するため、1904年に国際サッカー連盟(FIFA)が誕生した。
FIFAは「1カ国1協会」というルールを定めたけれど、その時すでにイギリスには4つの協会があった。
これを「1つにまとめなさい」と言うと、「できんわっ!」とイギリスは怒ってFIFAに参加しないかもしれない。
最古の歴史があり、人気も実力も別格だったということで、FIFAはイギリスを例外として4つの協会を認めることにした。
それぞれの協会がチームを出すから、いまではW杯で「イングランド vs ウェールズ」の試合が行わるようになって、その背景を知らない日本人には「同じ国で同士討ちとはこれいかに?」とナゾに見える。
ラグビーW杯でイギリスが、複数のチームで出場している理由も基本的にこれと同じだ。
*イングランド、スコットランド、ウェールズの3つと、アイルランド共和国&北アイルランドの混合チーム。
国際組織が設立された時、すでにイギリス内の各国(地域)にラグビー協会が存在していたことが大きな理由になっている。
サッカーやラグビーW杯で4つのチームが出るというのは、可能性が4倍になるのではなく、戦力が分散されることを意味する。
他国にとっては好都合だから、特に反論も上がらず、この状況がつづいてきたと思われ。
(本州代表や九州代表が、韓国やサウジアラビア代表と戦うなんて無理ゲーにもほどがある。)
でも、4分割されても2チームが予選を勝ち上がってW杯に出場したし、日本とほぼ互角のイランを「6ー2」で粉砕したイングランドは今大会の優勝候補と目されている。
4チームでの参加はズルではなくて、1つのチームになったらチートというのがフットボール大国イギリスだ。
スコットランドで有名な物や人:蛍の光、ウイスキー、ゴルフ、ネッシー、メアリ1世
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