1891年12月21日、アメリカで世界初のバスケットボールの試合が行われたことから、この日は「バスケットボールの日」になっている。
ちなみに、このスポーツを考案した人の名はネイスミスという。
そして3日前の18日は1865年に、リンカーンによる奴隷解放宣言を現実化するために、アメリカで奴隷制度を完全に廃止する憲法修正第13条が成立した日。
そんなことで奴隷制度という非人道的なシステムは、アメリカ史の1ページになって社会からは消滅したワケだが、人々の心から黒人を蔑視・敵視する意識は消えずに残って、いまでも人種差別はアメリカで最大級の社会問題になっている。
現在のアメリカで白人と黒人(や他の有色人種)では、店の入口や駅の待合室を別にするといったあからさまな差別行為は無いとしても、差別につながる「ステレオタイプのイメージ」はある。
特定の人たちに対してある、固定化された印象や偏見が「ステレオタイプ」。
これは、「日本人はよく掃除をするし、礼儀正しい人たちだ」というポジティブなものなら問題ない。
でも、「痴漢や盗撮をするし、日本人は変態民族だ」といったネガティブなものだと問題しかない。
では、アメリカの(主に)白人の人たちは、黒人に対してどんなステレオタイプのイメージを持っているのか?
ジャマイカ出身のある20代の男性のケース。
彼が留学生としてアメリカの大学で学んでいた時、本人は読書と旅行が好きなのに、出会った白人からはよく「スポーツはバスケットボール、音楽はヒップホップが好きだよね?」という勝手な黒人像を押し付けられた。
「いや、ボクはバスケットボールが好きじゃないんだが」と言うと、「え?そうなの?なんで?」と平気で無神経なことを言う白人に閉口した。
この男性の友人で、日本の学校で英語を教えていたジャマイカ人女性がそんな話をしてくれた。
彼女もアメリカ人と接していると、言葉の端々(はしばし)から、黒人に対するそんなステレオタイプのイメージを感じるから、そのたびにイラっとくると言う。
ジャマイカ人男性の経験では、アジア人やヒスパニック系の学生も「黒人はバスケットボールが好き、うまい!」といったイメージを持っていたというから、これはアメリカ社会に広くある偏見だろう。
アメリカ人の持つ人種的偏見をテーマにしたこの論文でも、「黒人はみんなバスケットボールがうまい」という思い込みが代表例として挙げられている。
Racial Stereotypes : The Black Men Are Good At Basketball
この論文にある言葉を拾ってみよう。
*NBAとは、北米のプロバスケットボールリーグのこと。
・Although over 80% of the men in the NBA are African American, every African American man cannot play basketball.
(NBAに所属する男性の80%以上はアフリカ系アメリカ人だからといって、アフリカ系アメリカ人がみんなバスケットボールを上手にできるわけではない。)
・The sport takes talent and has nothing to do with genetics or race.
(このスポーツには才能が必要で、遺伝や人種は関係ない。)
この人はマイケル・ジョーダン1人に対して、シュートをしてもバスケットゴールに当てることのできない黒人が25人いると、面白いことを言う。
少数のバスケの達人を見て、それを黒人全体に一般化するのがまさにステレオタイプ。
アメリカの黒人を集めたところで、『SLAM DUNK』にはならない。
この論文によるとアメリカでは他にも、「ヒスパニック系は英語が苦手、あるいはまったく話せない」という偏見もある。
世界の国や民族にはそれぞれ固有の文化や価値観があるから、ステレオタイプのイメージを持つこと自体は悪くない。問題はその中身。
個人的にも外国人から、「日本人は規律正しい人たちだ」「シャイな人たちだ」と言われるのはかまわないが、「空手のパフォーマンスを見せてくれ!できない?なぜ?」とエジプト人にしつこく言われてウンザリしたことがある。
自分の中にある固定化されたイメージに気づかないまま外国人と接すると、差別意識や悪意が1ミリも無くても、相手を不快にさせてしまうこともある。
「黒人はバスケがうまい!」みたいな固定観念がないか、自分自身をいま一度スキャンしてみよう。
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