アメリカで「スイカと黒人」が人種差別の象徴になるワケ

 

0-2からの大逆転できのう中国ペアにみごと勝利し、金メダルに輝いた卓球の水谷隼・伊藤美誠選手には、きょうはスイカでも食べてゆっくり休んでほしい。

スイカといえば本日7月27日は「スイカの日」だ。
そしてきのう26日はアフリカの国・リベリアの独立記念日。
1847年のこの日、アメリカの解放奴隷が「自由」にちなんでリベリアという新国家をつくって、アメリカから独立した。
ちなみに首都のモンロビアはアメリカのモンロー大統領にちなんでいるのだ。

で、「スイカと黒人」にはどんな関係があるかというと、実はこれには人種差別的なステレオタイプのイメージがある。

食文化にからめて特定の人たちを侮辱することは、ネットを見れば世界的によくあることがわかる。
まえにどこぞの外国人が日本人について「イルカを食べる野蛮人」と表現しているのを見たし、韓国人とネットバトルをしていた外国人は「このドッグイーター(犬喰い野郎)め!」という言葉を使っていた。
食べ物と人種や民族を結びつけて相手を侮辱することは、まったくいいことじゃないけど、世界ではこういう差別的行為が本当によくある。

アメリカ社会では黒人がスイカを大好きで、異常なほどたくさん食べるというイメージがある。
この発想は、アメリカに奴隷制度があった時代に由来する。
奴隷制を支持する人間が黒人を単純で愚かな人間と表現するとき、スイカと少しの休息があれば満足するような人たちだとスイカを使った。

Defenders of slavery used the fruit to paint African Americans as a simple-minded people who were happy when provided with watermelon and a little rest.

Watermelon stereotype

 

スイカを食べることが奴隷の楽しみであり、オーナーは彼らにスイカを与えて“慈悲の心”を示した。こういう人間は南部の白人に多かったという。
イメージとしては、人間が家畜にエサをやるようなもの。
つまり、スイカは「優秀で寛大な白人」と「劣等な黒人」を象徴するものとして使われたのだ。

 

1909年の郵便はがき。
「スイカがあればとっても幸せ!」なんていうこの絵を現在のアメリカで公開したら、責任者は社会から抹殺される。

 

オバマ大統領が嫌いな人間がスイカのイメージで攻撃したことがあったし、2017年にはデトロイト市の消防局で、黒人にスイカをプレゼントした人(おそらく白人)が「人種差別を行った」として解雇された。
だから21世紀のいまでも、「スイカと黒人」の差別的なイメージはアメリカ社会に残っているはず。

でもこうなると、金メダルに輝いた黒人選手に「きょうはスイカでも食べてゆっくり休んでほしい」と言ったら人種差別になるのか?

 

 

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2 件のコメント

  • > 金メダルに輝いた黒人選手に「きょうはスイカでも食べてゆっくり休んでほしい」と言ったら人種差別になるのか?

    そんなの、なるに決まってるじゃないですか。言う側ではなく、言われた側の判断によるからです。
    特に言及しなければならない事実という訳でもないし。
    顔をドーランで黒塗りして黒人を真似るのと同じか、それより酷い行為かもしれないですね。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。