【法 vs 情】日本人と韓国人の価値観・発想の決定的な違い

 

15年ぐらいまえ、旅行で韓国の首都ソウルへ行った。
その時に「これは日本と違うっ!」と強烈に思ったのが、市内のあらゆるところに食べ物や飲み物の屋台があったこと。
おでんにホットドッグ、トッポッキにチヂミ、それに見たことない謎の食べ物もあってまさに韓国グルメの大洪水状態。
宿の近くに安くてうまいトーストの屋台があったから、朝出かける時によくお世話になった。

日本では祭やイベントの時に見るような屋台が、韓国では平日の首都でいつでもいくらでもある。でも、驚くのはこれからだ。
日本語を学んでいて、日本人との付き合いもある韓国人と合流した後、韓国の印象について聞かれたから、街に屋台のある風景を挙げると、

「そうですね。韓国へ来る日本人はよく屋台が印象的だと言います。でも、あの多くは実は違法なんです。日本ではあり得ないでしょう」

と笑って言う。
違法行為…だと…?
そういうことは、バレないように隠れてするものでは?
「違法屋台」がソウル市内のあちこちにあって、朝から深夜まで営業していて、たくさんの人が気軽に利用しているというのはチョット信じられない。

そんな違法状態が黙認されるワケは、知人の考えによると、韓国人は柔軟な考え方をしていて情をとても大事にするから。

屋台で働く人には基本的に低所得者で、生活の苦しい人が多い。
そして国民はそういうには、できるだけ力になりたいと思っている。
それに現実的な理由として、好きな時に好きな物を食べられることは、市民としては基本的に便利でうれしい。だから、大きな迷惑や問題のある屋台でなければ、そこにあってもかまわない。
日本なら、違法屋台はすべて強制撤去されるのだろうけど、韓国人はそこに「情」を入れて物事を総合的に判断するから、軽微な違法なら黙認されることがある。
それに、叩くべき巨悪が他にある。
もちろんこれは法を軽視することにつながって、遵法精神には欠けてしまう。
そういう問題点を認識しつつも、温情なしで「これが法だから」のひと言ですべてを片づけることを国民は嫌う。だから日本に住んでいる韓国人には、「そういう決まりです」と要求を却下されることに不満や冷たさ、日本人のガンコさを感じる人が多い。

ツッコミどころや疑問はあるけれど、日本人と韓国人の違いについて知人はそんな話をする。
まあ屋台とか、韓国のことは韓国人が判断すればいいとしても、日本に関わることだとその理論は通じない。

 

 

ここ数年、日本と韓国の間でもめにモメテ、一進一退の攻防が続いているのが「徴用」をめぐる問題だ。
この問題がここまで解決困難になった理由に、「法か情か?」の日本人と韓国人の決定的な価値観の違いがある。
2018年に韓国最高裁が日本企業へ、賠償を命じる判決を出したことで地獄の門が開かれた。
この問題は1965年の日韓請求権協定で、「完全かつ最終的に解決」したと両国が確認しているから、すでに解決済み。国家間の合意を、国内法で白紙に戻すようなことは国際法に違反する、というのが日本の立場。
これはアタリマエで、後になって約束をひっくり返されたら、合意を結ぶ意味がない。

でも韓国では、最高裁が原告勝訴の判決を出してしまった。
だから、政府や原告側はそれに基づいて日本企業へ賠償や謝罪を求めて、それを断固拒否する日本とこう着状態におちいって、ここ数年の間まったく動けないでいる。

そんななか韓国で国会議員、大学教授、原告の支援団体の代表が集まって、この問題について討論会が行われた。
全国紙のハンギョレ新聞が紹介する「声」には、日本人と韓国人の価値観や発想の違いが集約されている。(2023-01-27)

国際法をめぐる論争が続いたことで、聴衆から「法の話はやめろ」と抗議の声があがり、討論会がしばらく中断する一幕もあった。ある被害者の家族は「良心の前に法がどこにあるのか。父を奪って使ったなら(金を)出すべきなのではないか」と

「強制動員の解決策、韓国の外交部ではなく法務部が取り組むべき」

 

「徴用」をめぐる問題で、日本人にとって最も大事なことは国際法(=合意)を守ることだ。
でも、韓国人にとっては「法の話はやめろ」で、それは「良心」よりも大きなものではない。
「父を奪って使ったなら、金を出すべき」の部分は、日本企業が韓国人徴用工を強制連行して、働かせたのなら賠償金を出すべきというコト。
もちろんこれは韓国側の主張で、事実と裏付ける根拠がないから日本は認めていない。
駐日韓国大使の尹徳敏(ユン・ドクミン)さんがつい先日、この問題について「法的な問題ではなく、人と人の問題として、日本側も考慮すべきではないか」と述べた。
表現は違うが、「法ではなく良心に基づいて解決すべき」と言っているに等しい。

日本人の反応を見ると「だとすれば、韓国と条約を結ぶ意味はない」と、やっぱり法治の感覚の違いに引っかかる人がネットで続出中。

ただ公では言えないとしても、客観的に見ればどちらが正しいのか、実は韓国側も分かっている。
時事通信の記事で、日韓関係に精通した元韓国政府高官がこう指摘した。(2022年07月20日)

「元徴用工問題に関しては日本の主張が100%正しい。それでも、現実問題として日本が何もしない形では韓国国民は受け入れがたい」

韓国、日本側の軟化期待 元徴用工、「早期解決」明言

 

この問題は日韓請求権協定で解決していて、最高裁の判決は国際法に違反することは韓国側もきっと理解している。
でも、韓国政府には国民感情が最も重要だから、「法」だけで解決することは現実的にできない。
「情」を動かすには、日本の誠意(=謝罪してお金を出す)が必要だと主張するが、「法」の観点から日本は絶対に認めない。
価値観や発想が根本的に違って歩み寄れないから、対立が長引いて大問題になっている。

 

さて韓国の屋台に話を戻すと、2016年にこんなサプライズがあったのだった。

Record Chinaの記事(2016年8月1日)

ソウル市、衛生状態に不安の違法屋台が多過ぎ「いっそ合法化」検討=韓国ネット「ソウルが東南アジアみたいに…」「法を守る人だけばかをみる」

ソウル市が約3200店の違法屋台(多すぎ)について、なんと”合法化”する方向で検討を始めたという。
違法状態には手を付けず、法律を動かして「問題ナシ」とするのは、日本人ならあり得ないし許されない発想だろう。
でも、韓国には慰安婦像という例もある。
市民団体が日本大使館前に違法で建てたのに、国民感情から合法化されてしまった。
日本人からすると、なんでここまで簡単に法が負けてしまうのか不思議なんだけど、韓国人としては「現実問題として仕方ない」ということだろう。
まず行為が先にあって、後から法を変えて、整合性をとろうとする発想は「徴用」をめぐる問題にも見られる。

「法の話はやめろ」、「良心の前に法がどこにあるのか」と叫んだり、これを支持する人も同じで、そう言い続けていればいつか日本が動くと考えているのだろう。
でも、日本はソウル市とは違う。

 

 

韓国を知りましょ! 「韓国カテゴリー」 目次 ②

「日本」カテゴリー目次 ⑤ 韓国や中国から知る日本

【韓国のミカタ】中国には敵意、日本には優越感でいいのかな?

【日本に勝ちたかった】韓国人の対日感情の原点、金九の無念

マジで?韓国人が誇る新羅の王(脱解)は、日本人だった!?

 

4 件のコメント

  • 韓国では最近、今年3月に開催される野球のwbc大会に国家代表として安佑鎭(アン·ウジン)という去年の韓国野球最高の投手を選抜しなかった問題で騒いでいます。安選手が現在、韓国野球界で最も優れた投手ですが、高校時代に校内暴力(後輩を殴打した事件)の前科のため、韓国野球委員会では悩んだ末、選抜をあきらめました。しかし、アン選手はその事件によって該当学校でも懲戒を受け、プロに入団しても3年間資格停止と奉仕活動などの懲戒を受け、現在はすべての懲戒から解放されている状況です。しかし、彼が国家代表に選ばれたことに対して野球ファンとマスコミが激しく反発して脱落したのです。彼の代表チーム選抜についてある野球メディアは、「韓国には法より恐ろしい国民感情法があるので」決して選抜してはならないと獅子吼を吐き出しました。事実を乾燥に報道すべきマスコミが感情的すぎる論調を使ったのも荒唐無稽ですが、誇らしく思ってはいけない、国民の感情によって特定人が被害を受けなければならない「国民感情法」というとんでもない文を誇らしく書くことが痛嘆すべきことです。

  • 「日本人はルールに厳しすぎる!」といろんな外国人がよく言います。
    韓国と日本の中間が良いのでしょうね。でもそれは韓国人・日本人が拒否するのでしょうけど。
    安佑鎭選手の場合も、「いじめという悪を絶対に許さない、成熟した市民意識の結果」と支持する人が多いんでしょうね。
    「国民感情法」については、韓国の国民や政府も困っているように見えることが多々あります。

  • もし、安佑鎭が後輩を長い間、悪辣に、言い換えれば罪質が非常に悪く苦しめたとすれば、それでも理解できます。しかし、たった一度殴ったのが全てで、暴行は悪いが分別のない10代の年齢で一度のミスは誰でもできることです。そして懲戒もすべて受け、現在もアマチュア大会には国家代表の資格も剥奪されています。日本の栗山監督も昨年末に来韓時に「誰もが生きているとミスをすることがあるので、안우진に機会を与えてほしい」という意味で発言しています。
    10代の時の些細なミス一つで一生「暴力輩」という朱文字をつけて生きなければならないのはあまりにも苛酷なことです。

    「国民感情法」と呼ばれる魔女狩りは、大韓民国を数十年後退させました。
    朴槿恵 大統領を不法弾劾して韓国社会を破綻させて、韓日関係を1965年に後退させたことが、まさにその「国民の感情」を刺激して「法治」を崩した事件のためでした。

  • 安佑鎭がWBCに参加できないことは、きっと日本にとっても良くありません。
    日本でWBCはサッカーW杯ほど盛り上がっていません。
    それでもライバルの韓国と戦うと注目が高くなるので、韓国が強いことは日本にとっても良いことです。
    栗山監督もそんな意味で、安佑鎭には出てほしかったのだと思います。
    いろいろな才能のあるスポーツ選手が過去のいじめで、消されていくのは国家の損失ですよ。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。