日本の戦いで言うなら殿 「気絶ヤギ」がころぶ残酷な理由

 

敵の大軍に追いかけられて、すぐ背後にまで迫ってくると、パーティーの誰か1人がよくこんなことを言う。

「ここは俺にまかせろ!お前たちは先に行け!」

これは死亡フラグで、きっとこのキャラはそこで死んでしまう。

アニメで出てくるこんな役割を、戦国時代の戦いでは「殿」(しんがり)といった。
撤退戦で軍の最後部にいて、主君を逃がすために敵と戦って食い止めないといけなかったから、「無双」というほど強く、立派な人格を持つ武将が殿を務めることがお約束。
日本で有名な殿には「金ヶ崎の戦い」での豊臣秀吉がいる。

1570年に織田信長が越前の朝倉義景を攻めた時、大事なところで浅井長政に裏切られて、すべての計算が狂ってしまった。
危険的状況のなか、木下藤吉郎(豊臣秀吉)が「との! ここはこのサルめにお任せください!」と殿を引き受け、信長を先に行かせて、自分も命がけで戦いつつ何とか戦場を脱出する。
秀吉が無事に戻ってくると、信長は黄金数十枚を与えた。
織田軍の中における秀吉への見方は一変し、この後秀吉は織田家の重臣になっていく。
…とよく言われてきたこの話、最近では、殿軍の大将を務めたのは秀吉ではなくて、実は池田 勝正(かつまさ)だったという説が浮上している。

他の人を守るために、自分は犠牲を覚悟して敵と戦う。
日本でいうそんな殿(しんがり)は、世界中の軍隊にいたはずだ。
そして動物界にもいるらしい。

まずはこの動画を見てもらおう。

 

 

 

 

全身が固まって、4本の脚をピンと伸ばしたままコロンと地面にころがる。
でも、すぐに起き上がって、何事にもなかったかのように動き出す。
これは「気絶ヤギ」とか「死んだふりヤギ」と呼ばれるヤギで、刺激を受けてビックリしたり興奮すると、筋肉が一時的に硬直してしまう。
*意識を失っているわけではない。

その様子がわりとカワイイから、このヤギの動画はけっこうある。
「気絶ヤギ」がなんでこうなるかというと、それにはシリアスでヘビーな理由があった。
ヤギが群れになって行動していて、コヨーテなどの肉食獣に襲われた時、1匹がこうやって気絶することで自分の肉を食べさせている間に、他の仲間を逃がすことができるのだ。
まさにスケープゴート。
つまり種の保存のために、こんな自己犠牲の習性ができたという説がある。

「grape」の記事(2017-02-23)

これは群れが肉食獣に襲われた時、1匹が死んだフリをして他の仲間を逃がすという、種を絶やさぬための習性の名残。

ボールを投げられて硬直するヤギ ちょっと難儀な習性

 

これがホントなら「ここは俺にまかせろ!」と言う間もなく、120%確実に食い殺されることになる。
もちろん無事に戻ってきてご褒美をもらったり、集団で英雄視されることもない。
そう思と、このカワイサがかわいそうに見えてくる。

 

 

 

 

 

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。