売国奴!から一転。見えてきたノージャパン運動の“正体” 

 

ワーキングホリデーで韓国からやってきて、東京に1年間住んだ後、いまはソウルで日本語を活かした仕事をしている知人の女性がいる。
2019年の春ごろ、その韓国人から「ことしの夏、久しぶりに日本へ行きます。チケットはもう買いました」というメールがきた。
それでワーホリ時代のいろんな知人に連絡して、会う約束を大体すませたころ、メールがきて「やっぱり行くのを止めました」と言う。
理由は「国内の空気」だった。

その年の7月、日本政府が対韓輸出の厳格化を発表すると、韓国側は大反発して、当時の文大統領は「日本には二度と負けない」と国民の反日感情をあおりまくった。
すると、これに呼応する勢力が出てきて、「日本製品を買わない、使わない、日本旅行をしない」のノージャパン運動が急激に広まる。
ただ、これを主導したのは文氏を支持する左派の人たちだ。
たとえば不買運動団体共同会長のキム氏は、ソウル市内で「大統領様 ありがとうございます」というプラカードを持って文氏を称える集会を開いた人物だから、ただの一国民とは言えない。
ノージャパン運動とは文大統領を筆頭に、特定の人たちが政治的な目的をもって行った運動だったから、現在のウィキベテアには「不買運動は左派組織が主導した官製デモである」と書かれている。(日本製品不買運動

とはいえ、これが国民の支持を得たことは間違いない。
それでそのころに日本へ旅行に行って、その様子をSNSに投稿すると、知らない人から「帰って来るな!」「売国奴め」といった攻撃的なコメントがくるようになる。
そんな空気から、知人は日本旅行をキャンセルした。

でも2023年のいま、そんな反日不買の嵐が遠い記憶になりつつある。

中央日報の記事(2022.12.13)

「ノージャパンはどこへ」… 日本旅行急増、日本産ビールの売り上げも増加=韓国

日本政府がきょねん10月にビザなし入国を再開すると、「これを待ってた!」とばかりに韓国人がドッと押し寄せた。
1月にやってきた全外国人観光客の3人に1人が韓国人だったから、「どこの観光地へ行っても韓国語が聞こえる!」と韓国のネットに書き込む人もアリ。
韓国人は熱しやすくて冷めやすいとは聞いていたが、「売国奴め!」からの変化が激しすぎる。
日本製品の売り上げも順調に伸びていて、4年前に韓国社会に吹き荒れていた「ノージャパン」の嵐はいまはそよ風だ。

保守派の朝鮮日報はあの狂乱をこうふり返る。(2022/09/10)

「文在寅政権期の『ノー・ジャパン運動』、政治家の人気を高めてやっただけ」

韓国の不買運動と日本の輸出厳格化は「双方が敗北した」と結論づけているが、韓国メディアがこう書く場合、韓国側がより大きなダメージを受けたとみていい。
それは置いといて、あのノージャパン運動の正体は結局のところ、文氏をはじめとする左派の政治家が国民の支持を得るために、反日感情を政治的に利用しただけの一時的なブームだったのだ。
いまとなっては、ノージャパンが一体どこへ行ったのか見えなくなっているのだから。

中央日報はこんなタイトルのコラムを載せる。(2023.03.01)

「ノージャパン」という名の亡霊

 

ちなみに上の記事では、こんな日本人の声を紹介している。

「歴史問題に関連して歴代の日本の首相や閣僚が何度も謝罪したのに、韓国国民はよく知らないようだ」
「メディアなど責任ある韓国のオピニオンリーダーがこうした側面をきちんと説明してほしい」

あのボイコット運動が激しくなった原因には、たしかに韓国メディアの「報道しない自由」があった。
こういう意見が全国紙に載ることからも、ノージャパンの没落がよく分かる。

 

 

近くて遠い日本と韓国 「目次」 ①

近くて遠い日本と韓国 「目次」 ②

近くて遠い日本と韓国 「目次」 ③

好き放題やったノージャパン運動、いまそのツケを払う韓国

韓国マート協会会長「日本製品不買運動は1つの文化として定着」

 

2 件のコメント

  • 2019年、韓国で起きていた「NO JAPAN」キャンペーンの”狂気”を覚えています。
    上の本文にも書かれているように、それを主導したのは文政権と彼を支持する左派でしたが、ほとんどの国民も同調していました。ある人は、自分が所有するトヨタのレクサスを打ち破るパフォーマンスを見せたりしました。でも私はそんな狂気の雰囲気の中でも日本に旅行に行き、甲子園で”伝統の一戦”を観戦して帰ってきました。しかし、ほとんどの韓国人は日本への旅行をためらい、旅行に行った人もSNSに旅行写真を載せることは控えていました。しかし、ほとんどの韓国人は日本への旅行をためらい、旅行に行った人もSNSに旅行写真を載せることは控えていました。
    韓国社会は感性的で、全体主義的性格が強いです。多数の大衆の感性を刺激すると、彼らはまるで野獣に変わるような雰囲気が演出されます。韓国左派の政治組織はそんな韓国社会の特性を適切に利用したものです。しかし、その左派組織の主要人物がする行動を見れば、典型的な「내로남불-ネロナムブル」です。文政権の最側近の一人は「韓国より日本の利益のために働く人を清算する」としながらも、自分は日本製高級レクサス車を所有していました。結局、これらの者たちは自分たちの政治的目的のために”反日商売”をしているのです。そんな荒唐無稽ないたずらにだまされていく多数の韓国人が愚かです。

  • あのとき左派勢力は「空気」をうまく作り出したと思います。
    巨大な空気ができ上がると、一般の国民は抵抗できません。
    でも、いま日本旅行が大人気なことから分かるように、それはノージャパンは大きな虚像でした。
    政権が変わると社会も劇的に変わることは、良いことか悪いことか分かりませんね。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。