【徴用問題】韓国側の被害者意識に、ついていけない日本企業

 

2018年に徴用工訴訟で、韓国最高裁が日本企業に賠償を命じる判決を出して、パンドラの箱が「パカッ」と開かれた。
文政権の時には放置されていたこの問題は、きょねん尹(ユン)政権になってから解決へと動き出す。
日韓で話し合いを重ねて、いまはそのゴールラインが見えてきた。
とりあえず韓国が財団をつくって日韓の企業からお金を集めて、それを原告にわたすという案に固まりつつある。
日本政府としては、日本企業が基金を拠出するというところに引っかかっていて、これが具体的にどうなるかは不透明だ。

でも韓国としては、最高裁が日本企業に命じてた賠償金を、名目を変えたとしてもすべて自分たちで払うというのではメンツが崩壊してしまう。
それでパク外相は、「日本企業の自発的な参加」を日本に強く要請している。

ハンギョレ新聞の記報道によると、それを求められた日本企業にはこんな壁があった。(3/3)

日本企業が「日帝強制動員被害者支援財団」という名称に強い拒否感を示しており、この案もまた最終合意に至るかは不透明だ。

日本政府、被告企業は「賠償に参加しない」方針固めたもよう

 

自身を被害者、日本を加害者と考える韓国としては、その関係性を強調する「日帝強制動員被害者支援財団」という表現は常識的で当然だ。
でも、あの判決を日韓合意や国際法に反していると考える日本に、「日帝(大日本帝国、日本の帝国主義)」や「強制」といったワードはきっと政治性が強すぎる。
それに本来ならこれは、韓国側が約束を守っていれば起きなかった問題だから、日本企業としては「被害者はトラブルに巻き込まれたわれわれ」が本音では?

もともと日韓では意識がまるで違っていたのだ。
あれは当時の法律にもとづいて、日本人も朝鮮人も台湾人も行ったことだから、日本のメディアは「徴用(問題)」と表現する。
日本政府は「旧朝鮮半島出身労働者問題」だ。
でも韓国では、朝鮮人を強制連行し奴隷のように働かせた、国際法に違反する行為というイメージから「強制徴用」と日本を非難する表現を使う。
安重根が伊藤博文を暗殺したことを韓国では義挙、日本ではテロと呼ぶように、歴史認識の違いは「日韓あるある」でどちらかに統一することは不可能だから、それぞれが別々の表現を使うしかない。
国内ならそれでいいとしも、接点をもつと摩擦が起こる。

お金を出すのは仕方ないとしても、日本企業が「日帝強制動員被害者支援」というテンションにはついていけないから、そんな財団を嫌がるのは当然だ。
それにこの名称では日本国内の受けも悪いし、もし基金を拠出した企業名が判明したら、イメージや売り上げに影響が出るかもしれない。
中立的な「元徴用工支援財団」ならあるいは。

かといって、韓国側が「日帝強制動員被害者支援」を変更するのは嫌がるというか、たぶん無理。
「日本企業の自発的な参加は譲れない!」と韓国外相が求めても、「それって強制じゃん」のツッコミは避けられないし、日本企業に参加の意思があっても、韓国内の被害者意識がそのハードルを上げている。
この状態がどう動くかサッパリわからないが、いまから思えば、日韓が「徴用」と「強制徴用」と別々の用語を使っていた時点で、こうなるフラグは立っていた。
韓国最高裁が開けたパンドラの箱はどう閉まるのか。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。