きょう野球のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の準々決勝の試合が行われて、アメリカがベネズエラに勝利した。
ネットを見ると「次元が違う!」と恐れおののく人もいたけど、決勝で日本と対戦したとしても、大谷さんがあと5人いたら勝てるレベルだから、つまり現状絶望的だ。
さて、そのWBCでは日本代表の活躍とともに、「粘り強くやる」という意味の「ペッパーミル(コショウひき)パフォーマンス」がいまブームになっている。
Keep grinding that pepper, Lars! #WorldBaseballClassic pic.twitter.com/TtayELPcEI
— MLB (@MLB) March 12, 2023
甲子園球場で行われている高校野球の試合で、宮城の選手がペッパーミルパフォーマンスをしたところ、塁審から注意を受けた。
すると試合後、チームの監督は「これだけ日本中で話題になった。なぜダメなのか理由が知りたい」と不満そうに語る。
対して日本高野連はこんなコメントを発表。
「高校野球としては、不要なパフォーマンスやジェスチャーは、従来より慎むようお願いしてきました。試合を楽しみたいという選手の気持ちは理解できますが、プレーで楽しんでほしいというのが当連盟の考え方です」
この一件、ネット民の反応は分かれた。
・ダメに決まってんだろ ああいうウェーイ系のノリが甲子園の雰囲気をどんどん壊していく
・注意しないとやりたい放題になるだろ
・こういうのはしっかり注意し続けて秩序を守ってほしい
・選手に伸び伸びやらせてやれよ
・憧れの大谷もやってんだから仕方ないだろ
・ガッツポーズはOKでペッパーミルがダメとは?
(喜びを誇示する派手なガッツポーズは慎むように、とのきまりはあるが、ガッツポーズ自体は認められている。)
ちなみに青学大駅伝部の原晋監督は、「いまだにこんな管理者(審判)いるんだ!?」と塁審に批判的だ。
日本の高校で英語を教えていたアメリカ人を、座禅体験に連れて行ったことがある。
「座禅をする」は英語でどう言うのか?
彼が言うには「do (zen)meditation」でOK。
同じ“する”でも空手や柔道なら「do」、 サッカーや野球なら「play」になるらしい。
日本の高校で働いていた彼から見ると「do」と「play」の違いは、日本人とアメリカ人のスポーツに対する見方をよく表している。
play は「遊ぶ、楽しむ」といった意味で、アメリカの学校では生徒はスポーツを楽しむことを目的にやっている。
でも、日本の学校の体育や部活動では「遊ぶ」ということは否定されて、一生懸命さや真剣さが重視されている。
もちろんどっちも「100:0」ではなく、傾向として。
部活動が終わると野球部員は一列に並んで、グランドに向かって一礼したのを見た時、彼は特にそう感じた。
あるていど日本人のことを知っている彼は、グランドに敬意や感謝の気持ちを表すこの行為を、自然界に精霊がいるという神道のアニミズム的な考え方によるものと理解した。
それが合ってるかどうかは別として、日本人がスポーツで、こうした礼節やマナーを大事にしていることは間違いない。
彼の話では、こういう行為はアメリカ人の価値観や考え方とは違うから、日本について知らない人だと、生徒たちが並んで一礼する目的や意味はなかなか理解できない。
そのアメリカ人が顧問の先生に話を聞くと、部活動や体育の授業でおこなうスポーツでは「人間教育」がとても大切だという。
頭を丸刈りにしているのも、余計なことを考えず野球に集中できるから、それが“高校生らしい”と顧問は力説したらしい。
*最近は丸刈りを廃止する学校も出てきた。
それに監督と選手、先輩と後輩の上下関係や協調性を身につけることも大事で、企業もそういう人材をほしがるから、ここでの経験は生徒の将来に役に立つ。
顧問の先生が強調していた「人間教育」や「人間形成」というのが、彼には意味がよくわからない。
でも、他の部活の顧問も同じ話をしていた。
彼の感覚からすると、アメリカで教師の役割は具体的な知識や技術を教えることで、「人間教育」は教師のする仕事ではない。
だからアメリカなら、高校生がガムを噛みながら野球をしてもいいけど、日本でそういう態度は「教育的」に問題になるから許されない。
「野球部員なら全員が頭を丸刈りにする」という発想も、アメリカだったら教師も生徒も理解できない。
日本の学校の先生の話を聞いていると、日本人にとって野球や他のスポーツは楽しむことを目的にしているとは思えないから、それは「play」(遊び)じゃない。
たしかに日本の体育や部活動では人間教育が大事で、「礼に始まり礼に終わる」といった武道の精神があると思う。
日米野球の違いについて英語版ウィキベテアには、アメリカの作家のこんな言葉がある。
集団のアイデンティティ、協力、ハードワーク、年功序列といった日本人の人生観は、スポーツのほとんどすべての面に浸透している。サムライ野球のやり方はアメリカとは違うのだ。
“the Japanese view of life, stressing group identity, cooperation, hard work, respect for age, seniority and ‘face’ has permeated almost every aspect of the sport…. Baseball Samurai Style is different.”
Comparison of Major League Baseball and Nippon Professional Baseball
横浜DeNAベイスターズの元選手で、アメリカでもプレーをしたことのある筒香さんは、日本の野球について「楽しいはずの野球なのに、子供たちは楽しそうに野球をやっていない」と話す。
東洋経済オンライン(2018/01/16 )
DeNA筒香「球界の変わらない体質」にモノ申す
筒香さんがドミニカ共和国へ行って野球の指導を見た時、指導者は何も言わず、子供たちが自由にのびのびとプレーをしていたのがとても印象的だったらしい。
小学生の選手がジャンピングスローやグラブトスを当たり前のようにやっていて、それでミスをしても、指導者は何も言わない。
だから、「子供たちは失敗を恐れず、何回も失敗しながら新しいことにチャレンジしていきます」ということだ。
一方で日本の子供たちは「大人、指導者の顔色を見てプレーをしている、怒られないようにプレーをしている」と指摘する。
だから筒香さんは、日本野球も選手が楽しむことを重視するべきだと強調する。
上の話はきっと他のスポーツにも当てはまる。
アメリカやキューバだったら、野球の大会で選手が「ペッパーミルパフォーマンス」をしてもきっと誰も何も言わない。
ベネズエラ、プエルトリコ、ドミニカといった野球の強豪国でも、こんなパフォーマンスで選手に注意することはなく、自由にのびのびとプレーをさせていたはず。
子供の個性や違いを尊重して、楽しくスポーツをさせることも「人間教育」のひとつでいまの時代はこれが大事だろう。
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