外国人の疑問:日本人が X線ではなく、“レントゲン”と言う理由

 

最近、日本に住んでいるフィリピン人が、SNSにこんなメッセージを投稿した。

「That’s why it’s called Rentogen in Japan instead of x-ray because of Röntgen.」

だから日本ではレントゲン(Röntgen)にちなんで、「X線」の代わりに、「レントゲン」と呼ばれているんだ。

日本人でもこれをゴッチャにしている人がけっこう多くて、ネットでは「X線写真とレントゲン写真の違いってなんですか?」と質問する人がいる。

このフィリピン人は海外では「X-ray(X線)」と呼ばれているものが、日本では「レントゲン」と言われることに違和感をもった。
それで調べてみると日本での呼称は、19世紀末にX線を発見したドイツの物理学者、ヴィルヘルム・コンラート・レントゲン(1845年 – 1923年)にちなんでいることを知る。
この功績でレントゲンはノーベル物理学賞を受賞した。

 

1896年にレントゲンが撮影したX線写真。
これは彼の妻の手で、薬指に結婚指輪がある。

 

いまでいうX線は、紙や木などは透過するけど、人の骨や鉛にはそうじゃない。
レントゲン自身もこの不思議な線(放射線)のことがよく分かっていなかったから、彼は数学で“未知”を表す X を用いて「X線」と命名する。
世界初のX線撮影装置はドイツのシーメンスが開発して、1898年に日本へ輸入された。

ドイツ人のレントゲンが発見して「X線」と名付けたから、X線(写真)もレントゲン線(写真)も同じものを指している。
海外では「X線(X-ray)」なのに、なんで日本では「レントゲン」と呼ぶのか?
この理由について調べてみても、ハッキリしたことは分からない。
「レントゲンに敬意を表してそう呼ぶ」という説を見つけたけど、なんで外国人はしないのに、日本人がそう呼ぶのかは不明。
個人的に説得力があったのは、「日本人は放射能や放射線という言葉を嫌うから、それをイメージさせないレントゲンを採用した」という説。
世界唯一、原子爆弾を投下された国としては、この言葉に敏感肌になるのは仕方ない。

 

きょねん日本原子力文化財団が発表したアンケート調査の結果によると、日本国民は「放射線」についてこう見ていることが判明。

「放射線」という言葉から思い浮かぶイメージについて、全体として肯定的なイメージよりも否定的なイメージの選択率が大幅に高く、「危険」70.3%、「不安」45.7%という回答が突出している。

原子力に関する世論調査 (2022 年度)調査結果

 

「役に立つ」(25.3%)、「必要」(16.7%)といったポジティブなイメージもあったが、「放射線」と聞くと、日本人はやっぱりそのダークサイドが思い浮かぶ。
危険や不安といったイヤ~な印象をなくして、精神的な負担を軽減するために「X線」ではなく「レントゲン」と言う。
言霊の国・日本なら、そんな理由は十分考えられる。
でも健康を守るには、病院でX線写真を撮らないといけないこともあるし、外国人には分かりづらいから、「X線」で統一したほうがいいのでは?

 

 

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【日本人の発想】人工衛星・新幹線の名称にみる“科学+伝統”

【地震とナマズ】日本人の伝統的発想と現代科学の視点

日本への世界の評価や印象・中南米編「科学と伝統と平和の国」

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。