毎年4月にイギリスで行われる世界最高峰の競馬の障害レース、それがグランドナショナル(Grand National)。
動物愛護団体がこれに大反対して、ことしは中止させてやる! との声明を出していた。
そんななかで先日15日、グランドナショナルを開催したところ、団体のメンバーがコースに侵入したからレースは遅れて、100人以上が逮捕された。
日本のネット民の反応は、ほぼ全員一致で「いい加減にしやがれ」。
・なんでこういうやつって法を破ることでしか抗議できないのか
・一歩引いて中立の目線でみれない
だから問題を起こす
・綺麗ごとをいう人間よりは100倍マシ
・犯罪者だぞ、頭大丈夫か
・何主張してもいいが、他人に迷惑をかけるヤツサイテー
人間はすべての生き物に対して敬意や愛情をもつべきーー。
そんな動物愛護の精神には全人類が共感する。が、その運動については意見がいろいろあって、こんな過激なやり方をする人たちにはヨーロッパでも批判が多い。
いまのヨーロッパじゃ考えられないけど、むかしは貴族が「Fox Tossing」という名の“虐殺”を楽しんでいた。コイントスの「toss」には放り投げるとか、地面にたたきつけるといった意味がある。
「Fox Tossing」とは文字どおり、キツネを空中に放り投げる遊びやスポーツのこと。
日本では「キツネ潰し」といわれるこのゲームは、17~18世紀にヨーロッパの一部の貴族の間で人気があって、城や宮殿の中庭などで行われた。
まずリッパな服装をした男女がペアになって、数メートルの細長い布(スリング)の両端を向かい合うようにして持って立つ。
そしてキツネなどの動物を解き放つ。
参加者は自由に動き回るキツネの動きをよ~く見て、布の上を通った瞬間、布の両端を勢いよくひっぱる。
するとキツネはポ~んと空高くはじき飛ばされるから、その様子を見て人びとは楽しんだり、キツネの“高度”を競ったりした。
「キツネ潰し」を楽しむドイツ貴族
数メートルの高さに放り投げられた後、落下するキツネには何のフォローも配慮もないから、地面に叩きつけられたキツネは「グチャッ」と潰れることが多い。
ポーランド王のアウグスト2世(1670年~1733年)がドレスデンで有名な「Fox tossing」のコンテストをした時には、647匹のキツネ、533匹のウサギ、34匹のアナグマ、21匹のヤマネコが殺された。
Augustus II the Strong, the King of Poland and Elector of Saxony, held a famous tossing contest in Dresden at which 647 foxes, 533 hares, 34 badgers and 21 wildcats were tossed and killed.
Fox tossing の大会を描いた絵(18世紀)
『地獄楽』でこんな場面があったような?
「キツネ潰し」は、男女がカップルになってするスポーツとして人気があった。
これに夢中になる皇帝もいて、神聖ローマ皇帝レオポルト1世が宮廷で「Fox tossing」を開催した時には、そこに仕える少年たちに混じって、レオポルト1世も嬉々として、傷ついた動物たちを棒で殴り殺したという記録がある。
こんな娯楽をした後、上流階級の人たちは建物に入って盛大な宴会を楽しむこともあったという。
(the guests would head off in a torchlit procession or go indoors for a grand banquet.)
いまのヨーロッパで動物愛護団体の活動が盛んなのは、こうした残酷行為の反動かも。
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