中国庭園の特徴 丸い入口の意味・イメージした世界観とは?

 

浜松市の「浜名湖ガーデンパーク」には、いろんな国の庭(庭園様式)を集めたスペースがあるもんで、ゴールデンウイークに台湾人を誘ってそこへ行ってみた。
するとそこにあったこんな分かりやすい建物を見て、「うん。ドー見ても中国ですね」と笑う台湾人。

 

 

台湾人の説明によると、この丸い門は「月亮門(げつりょうもん)」といって満月を表す。
中国の伝統建築(遠くに庭園)にあるもので、入口だけではなく、ある区画から別の区画へ移動するときにもこんな月亮門を通る。
中国語では「月」だけでもいいけど、一般的に月を意味するときは「月亮」という言葉を使うらしい。
日本人には漢字の「亮」に引っかかって分かりにくいと思うから、英語の「ムーン・ゲート」で覚えてもヨシ。

この月亮門(ムーン・ゲート)の形や瓦(かわら)には、それぞれスピリチュアルな意味があるという。
門の上にあるそり返った屋根は中国の夏の半月を表し、屋根の瓦の先には魔除けの飾りがつけられている。

The shape of the gates and their tiles have different spiritual meanings. The sloping roofs of a gate represent the half moon of the Chinese summers, and the tips of the tiles of the roof have talismans on the ends of them.

Moon gate

中国の月亮門は19世紀後半、イギリス人によって海外領土であるバミューダへ伝えられた。
すると、現地ではなぜか幸運と幸せのシンボルになる。
これをくぐるとラッキーらしい。

 

これは京都の源光庵にある「悟りの窓」。
月亮門とどっかでつながりがあるかも。

 

王や貴族などごく一部の上級国民が国のカネや土地を支配し、民衆は牛や馬のような重労働をさせられる。
こんな不正で不平等な社会になるのは、貨幣経済や私有財産制があるからだ。
16世紀のイギリスの作家トマス・モアはそんなイギリス社会を批判して、誰もが自由で平等でいられる素晴らしい国を「ユートピア」と名付けた。
ユートピアとはラテン語で「どこにもない場所」(英語ならNo place)といった意味になる。
貨幣経済や私有財産制を廃止した平等世界というのは、まるで共産主義社会のようだけど、そんな理想世界も今のところユートピアで、空想の世界にしかない。

この世に存在しない理想世界を中国では桃源郷(神仙世界)といって、中国の庭園はそんなファンタジー世界を表現しているのだ。
(「浜名湖ガーデンパーク」の説明やウィキベテアにそう書いてあったから、きっと合ってる。)

この理想郷は大きな池のまわりに通路を配置し、自由に歩き回れるようにして、通路の途中には座って休憩したり、風景を眺めたりするための小さな東屋などがある。
中国庭園では池・石・木・橋・亭を取り入れて、理想の桃源郷を表現しているという。

以下、満月をイメージした月亮門(げつりょうもん)の内側にあった中国人の桃源郷(in ガーデンパーク)。

 

 

 

 

 

 

台湾人が「中国の庭園っぽいですね」と言ったポイントがこの飛石(とびいし)。

 

中国庭園には築山(つきやま;人工的に作られた山)が作られて、そのてっぺんには、儒教と易経の考え方における美徳、安定性、忍耐を象徴しているという。
いまの中国の庭園にはそこに、屋根があって腰を掛けるスペースが設置されている。
ソース:Artificial mountains and rock gardens

 

中国庭園に広がる独特な世界観を作っているのが、この太湖石(たいこせき)などの奇石だ。

 

 

これを置くだけで異世界感がマシマシに。

 

太湖とは蘇州のあたりにある大きな湖で、その周辺からは、長年の侵食によっていくつもの穴があいて、ゴツゴツした不思議な形になった石灰岩の奇石が切り出される。
それを太湖石という。
唐の時代の漢詩の天才で、超インフルエンサーだった白 居易(はく きょい:772年 – 846年)が太湖石を都に持ち帰り、紹介したことがきっかけで有名になった。

12世紀にいた北宋の皇帝 徽宗(きそう)は太湖石が好きで、理想的な庭園をつくるために遠くから大量の太湖石を都へ運んでこさせた。
ほかにも珍しい石・木・花なんかも運ばせて、その輸送に邪魔になる民家や橋があったらぶっ壊す。
すぐれた芸術家だった徽宗は、きっとスバラシイ桃源郷をつくり出したのだろうけど、いまでは中国の歴史でマレにみる無能皇帝として有名だ。

中国皇帝・徽宗はマレにみる無能だが、日本人は感謝していい

 

では以下、ボクが中国で見た庭園から、神仙世界ってやつを感じてほしい。

 

 

 

 

 

こんな大きな奇石の中には洞窟があって、そこに入ることができるところが日本庭園とは違う。
中にいると、なんか不思議な世界の片鱗を感じる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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アメリカ人が京都で感じた、フランスと日本の庭園の違い

タイ・ベトナム人の疑問「日本のお寺に”庭”がある理由って?」

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。