いつ・どう始まった? シドニーとメルボルンのライバル関係 

 

なるほど、これは知らんかった。

読売新聞(2023/06/18)

テレビ番組で「燕三条市」…「絶対に言ってはいけない」とSNSでつっこみ

新潟県には刃物や洋食器で有名な燕三条があるというのは知ってたけど、「燕三条市」がタブーというのは初耳だ。
記事によると燕市と三条市の2つの市があって、モノづくりで共通しているから、まとめにして「燕三条」と呼んでいるとのこと。
つまり、「燕三条市」なんて都市は存在しないのだ。
この2つの地域には江戸時代から対立意識があって、いまも仲が悪いと言われているから、「燕三条市」のワードは人によっては「絶対に言っては…」というほどの禁句らしい。

わが浜松にも静岡市に対抗心があるし、こんなライバル関係なんて全国的にあって、そもそもそれは日本だけの現象じゃない。

 

日本に住んでいて10年ほど前に帰国して、いまはメルボルンにいるオーストラリア人とこのまえ話をした。
そのオージーは最近、シドニーからメルボルンに引っ越したという。
この2つの都市は日本でもよく知られていて、あまりの知名度に、両都市の間にあるオーストラリアの首都キャンベラさんの存在がよくかすんでしまう。
シドニーからメルボルンまでは約700km、日本でいうなら東京都庁から広島の厳島神社ほどの距離があって、車で移動すると9時間ほどかかる。が、日本の約20倍の面積がある広大なオーストラリアでは「ちょっとそこまで」の移動かも。

知人と話をしていて、この世界的に有名な2つの都市はライバル関係にあることを知った。
「シドニーからきた」と自分が言うと、メルボルンの人は「そう。チャリで?」とは言わないが、笑顔で「そうなんだ。ようこそ」と笑顔で迎えてくれる。
でも、親し気に話をする中に、「シドニーには行ったことがあるよ。でも、あそこはちょっと分かりにくいネ」とメルボルン人は”毒”を含ませることがあるという。

シドニーとメルボルンの名称は、イギリスの政治家(シドニー子爵とメルバーン卿)に由来することでは同じだ。
シドニーはヨーロッパ人によって建設されたオーストラリアでもっとも古い都市で、メルボルンはその後に建てられたから、両都市を比べるとシドニーは”雑なつくり”で、計画的に出来上がったメルボルンは整然としている。
日本にいた知人に言わせると、メルボルンは京都のように区画があって分かりやすい。
でも、それは鳥のように空から見たイメージで、実際に街を歩いてみるとメルボルンの風景は同じように見えるから、「あれ? いま自分はどこにいる?」と迷いやすい。
シドニーはあまり計画性の無い都市で、構造や建物に特徴があるから迷子になることはない。
*これは2つの都市を歩き比べた知人の印象。

ということで、「あそこはちょっと分かりにくい」というメルボルン市民のセリフは、「シドニーはぐちゃぐちゃしている」と暗にディスっているのだ。
元シドニー市民の知人からすると、これはまったくの見当外れではないし、ここはアウェーだからそういう時は「だね」と受け流す。

 

では、シドニーとメルボルンのライバル関係はいつ、どのように始まったのか?
まず19世紀中ごろ、金鉱が発見されて多くの人が移住してきた結果、メルボルンはシドニーを抜いてオーストラリア最大の都市になる。
でもその後、不況に見舞われてゴールドラッシュも終了し、20世紀になるとまたシドニーがメルボルンを上回り、オーストラリアでナンバーワン(最大人口)の都市になった。
英語版ウィキベテアの説明によると、1901年にオーストラリア連邦が誕生した際、どっちも首都に選ばれなかったことから、いまに続くシドニーとメルボルンのライバル関係が始まった。

The rivalry between the cities was the reason that neither Melbourne nor Sydney was chosen as the capital of Australia when the nation was federated in 1901.

Melbourne–Sydney rivalry 

 

どっちがオーストラリアの顔、国を代表する都市か? というプライドをかけたライバル意識があるらしい。
この対抗心はスポーツによく表れている。
シドニーはラグビー(ラグビーフットボール)が始まったところで、いまでもこれが大人気。
対してメルボルンでは、現地の人が考案した「オーストラリアンフットボール」が盛んだ。
サッカーでもシドニーFCとメルボルン・ビクトリーのライバル関係があって、それは「ザ・ビックブルー(The Big Blue)」と呼ばれている。
オーストラリア英語で「ブルー」には「戦い、乱闘、または激しい議論」といった意味があるという。

近い将来、人口でまたメルボルンがシドニーを上回って、オーストラリア最大の都市になると予想されている。
でも、それでこのライバル関係が終わることはなく、ラウンド2(3か4?)の始まりの合図でしかない。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。