【匿名性と間接的】アメリカ人が痛感した日本人の性格

 

東京にある有名ラーメン店で、当事者にとっては大事件がぼっ発。
ラーメンを食べて店を出ていった客の席に店員(か店長)が行くと、そこには小さな白紙のメモが残されていた。
何かと思ったらそこには、「ボッタクリ」「客に並び・座り位置を指示すんな」「カリスマの評価にノせられてサービス悪い」といった文句と大きな文字で「死ね」と書かれていた。
これにキレた店主が店の公式ツイッターで、

「言いたい事があるなら 面と向かっていってくれ馬鹿野郎」

と怒りをぶちまける。
でも、「わざわざネットに上げてるお前も同類」「店主と議論したい訳じゃないんだろ」といった批判が返ってくるのは予想できなかったらしい。
公式が客に「馬鹿野郎」はマズかったし、「麺と向かって言ってくれ」ならまだ反発は少なかったのだけど。

とにかく匿名の書き置きで苦情を伝えるというこの一件で、先日あった理不尽な抗議を思い出した。
「近隣住民」を名乗る人物から、カエルの鳴き声がうるさく眠れないから、騒音対策をしてくれと田んぼの持ち主へ苦情を訴えるビラがあったと誰かがツイートしたところ、「そんなクレームがあるのか!」とネットで反響を呼んだ。

 

何かと文句を言う「クレーマー」は外国人には通じない日本語だけど、そういう人間は世界中にいるが、そのやり方には“文化”があらわれる。
日本人の場合はきっとこんな特徴がある。

・自分の正体を明かさない。
・間接的に、遠まわしに相手へ伝える。

知人のアメリカ人(30代・男性)が来日してすぐに、「こんなやり方は日本人だけだろ!」と思ってしまうような、彼にとっては忘れられない出来事を経験したからこれからそれを紹介しよう。

 

横浜市の中学校で英語を教えていたそのアメリカ人は、ある土曜日の夜、アパートに外国人の友人をよんで4人でちょっとしたパーティーを開く。
もちろんご近所の迷惑にならないように配慮して、音楽のボリュームは小さめに、そして会話の声は控えめにした。
次の週の月曜日は何事もなく一日が終わって、火曜日に学校へ行くと“異変”が起きる。
朝、職員室で自分の席に座って授業の準備をしていると、日本人の英語の先生がやってきて「おはよう、ジェームズ君。実は教頭先生が君と話をしたいと言っているから、今日の放課後、一緒に来てほしい」と浮かない顔をして言う。

で、その日の授業が終わった後、彼が英語の先生とどこかの部屋へ行くとすでに教頭先生が待っていて、パイプ机をはさんで向かい合うようにして座る。
「君の英語の授業は生徒にとても好評で~」とイラナイ前置きをした後、教頭先生は「ところでジェームズ君、君はこのまえの土曜日にパーティーをしたのかな?」と本題へ入る。
「なんでアンタがそれを知ってんだよ?」という内心の驚きを隠して、「ええ、しましたが…」と答えると、本当の衝撃はその次にやってきた。

「きのう学校に、君の近所に住んでいるという人から電話があって、君たちの声がうるさくて迷惑だったと苦情を言われてしまってね。まあ、君はまだ日本に慣れてないし、あの辺は静かな住宅街だから、話し声が意外と響いてしまったかもしれない。ただ学校としては、こういうことが何度もあると困るから、週末に楽しむのはもちろんいいんだけど、もう少し注意してほしい」

と英語の先生の通訳で言われた。

なるほど。
さて、どこからどうツッコもうか?
アメリカ人の彼としてはまず、その「近隣住民」とやらが、なんでその時に自分たちへ注意しなかったのかが分からない。
それを聞くと教頭&英語の先生から、日本人は面と向かって文句を言うのが苦手で、特に相手が外国人だとそのハードルがさらに上がってしまうから、たいていの人は飛び越える気力を失ってあきらめてしまうという話を聞いて驚いた。
その時その場で言ってくれたら、「それはすまなかった」とこちらも謝ってそれ以降は静かにしたのに、何ならその「近隣住民」もパーティーに参加してもよかったのに、そうしないで騒音を我慢し続けるという発想が彼には理解できなかった。
会って言葉を交わせば、お互いの考えや気持ちが分かって、何が問題でどうすれば解決できるかハッキリするのに。
そんなストレスをかかえたまま日曜日を過ごして、月曜日に学校へ電話して、不満をぶちまけるという行動も彼には考えられない。
そもそも名前を名乗らないというのが気持ち悪い。
苦情を言ったのは隣人かアパートの周辺の人かも分からないから、「週末にパーティーを楽しむのはOK」と言われても、どのぐらいの声の大きさで話をすればいいのか判断もむずかしい。

日本にはもう10年以上いる彼にとって、来日直後に経験したこの一件は忘れられない思い出だ。
一般的に日本人はこういう時、面と向かって文句を言うことのほうに強いストレスを感じるから、「泣き寝入り」を選択するのは今なら分かる。
ドアをノックして「やあ、楽しそうだね。ところで君たちの声は少し~」と相手に直接言うタイプの彼からすると、日本人には無駄にガマン強い一面がある。
ただ「泣き寝入り」をしても不満が解消するわけじゃないから、ほとんどの日本人は顔を隠してそれを相手に伝えようとする。

来日してすぐ日本人について、多面的に考えるきっかけがあったおかげで、彼は日本人の考え方や文化を知ることができたし、今でも日本人とアメリカ人の性格の大きな違いは「間接的」と「匿名性」だと思っている。
「客に指示すんな」というメモを残して店を出て行ったり、「近隣住民」の名で苦情を書いた紙を置いたりする出来事には、このアメリカ人の感じた日本人の特徴がよく表れている。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。