日本とタイには重要な共通点がある。
それは天皇と国王という“君主”の存在で、両家の昔からの交流は日タイの友好関係の土台になってきた。
ただし、国民の受け止め方はかなり違う。
タイには駅やショッピングモールなどの公共の場で、国王や王妃のデッカイ写真が飾られ、王室を称える空気が伝わってくる。
歴代の国王のなかでも、特にタイ国民から尊敬されているのがこのラーマ5世だ。
タイでは「神」として崇拝されているラーマ5世の像を見に行くと、ひざまずいて祈りを捧げる国民の姿があった。
こういう日常は日本にはない。
日本では、皇室と国民の距離がもっとずっと近い。
駅で列車の中にいる天皇皇后両陛下を見て、女子高生が興奮し、指をさしながら「やばいやばいやばいやばい!!」「めっちゃ天皇なんだけど!」と叫ぶ動画が拡散されても、日本では特に問題視されなかったが、タイだったら分からない。
神聖な国王を指さして、「やばいやばい!」と大声を出して喜ぶ国民というのはちょっと想像できない。
約150年前のタイでは、王室と民衆の距離は現在よりもはるかに遠く、王族の高貴さが原因となって思わぬ悲劇が起きた。
それを書く前に、3年前に北朝鮮で起きた、当事者にとっては悪夢のような出来事を紹介したい。
北朝鮮の最高実力者である金正恩(キム・ジョンウン)氏がロシアを訪問して、初めてプーチン大統領と会った時のこと。
金正恩氏が歩いてプーチン大統領に近づいた際、人民服の上着のベント部分がめくれ上がってしまい、金正恩氏のお尻の形がはっきりと現れてしまった。
最高指導者に恥をかかせるようなことは、北朝鮮では絶対に許されないミス。
正恩氏の妹である金 与正(キム・ヨジョン)氏がいなかったから、こんな失態が生まれたと朝鮮日報が指摘する。(2019/04/27)
北朝鮮の内部事情に詳しい消息筋は「金正恩氏の身体に唯一触れることができる金与正氏が現場にいなかったので起こったようだ」と語る。
金与正氏さえいれば…ロシアで金正恩氏がミス連発
周囲の人々は「ヤバい」と気づいていた。
でも、高貴な方のお身体に触れることは許されなかったから、衣服の乱れを直すこともできなかった。
帰国後、関係者が炭鉱送りになっていなければいいのだけど。
閑話休題(かんわきゅうだい)
下の女性は先ほどのラーマ5世の妻で、スナンダ・クマリラタナという。
彼女は1880年5月31日にこの世を去った。
下の女性は、スナンダ・クマリラタナとラーマ5世の娘のカーナボーン・ベジャラタナ という。
彼女も1880年5月31日にこの世を去った。
母と娘がまったく同じ日に、同じ理由で亡くなった。
この日、2人はボートに乗ってチャオプラヤ川を進み、バーンパイン宮殿へ向かっていたところ、事故が起きてボートが沈んでしまった。
現場にはたくさんの人がいて、王妃と王女を救いたかったはずなのに、それはできなかった。憚(はばか)られた。
というのは、その場にいた人たちの身分では彼女たちに触れることは許されず、そんな大罪を犯せば処刑されるきまりがあったから。
みんながそのルールを守った結果、多くの人々の前で2人はおぼれて亡くなった。
いや、娘は妊娠中でお腹の中には命が宿っていたから、正確には3人か。
ラーマ5世は妻と娘、そして未来の孫を同時に失うと言う悲劇に見舞われ、その悲しみははかり知れない。
…と一般的には言われている。
タイへ旅行に行った時、現地ガイドもこんな話をしていた。
でも、最新の情報がアップデートされる英語版ウィキベテアによると、その説は今では間違いだ(this is false)。
this is false. The King’s diary records that boatmen dived into the water, pulled the queen and her daughter from the entangling curtains, and carried them to another boat, where attendants worked in vain to resuscitate them.
国王(ラーマ5世)の日記にはこの時、船頭が川に飛び込んで王妃と娘を救い、別の船まで運び、そこで侍従たちが蘇生の努力をしたが、成功しなかったと記されている。
でも、そんな話が信じられるほど、当時は厳しい身分制度が存在したことや、父王が深く悲しんだことは間違いない事実だ。
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