7月になると日本では各地で警戒モードに入る。
といっても、襲来するのは使徒ではなく細菌だ。
気温と湿度がグングン上がって、食べ物が腐りやすくなるから、全国で食中毒警報が発令される。
日本三大祭りがひとつ、京都の祇園祭がこの時期で行われることは偶然ではない。
これは疫病退散を祈願する祭りで、まだウイルスの存在を知らなかった時代、ご先祖たちは鬼や疫病神などの怪異が人間に病気をもたらすと信じていた。
冷蔵庫もなかったころの日本では、蒸し蒸し&ジメジメにやられて体調を崩す人がたくさんいた。
だからこの時期に、疫病封じの祇園祭が行われるようになったのだろう。
陰陽師の安倍晴明(黒い服)が3匹の病魔と向き合い、祈祷を行なっているの図
鬼や疫病神などの怪異とは別で、神道では病気や事故などの不幸の原因を「穢れ」に求める考え方があった。
日常生活で知らず知らずのうちに穢れが付着してしまい、それが原因で厄災を招いてしまう。
だから、年に2回、茅の輪をくぐることで半年分の穢れを祓い、心と体を清浄な状態に保つことが大切と考えられていた。
6月と12月の終わりに、「大祓」と呼ばれる厄払いの儀式を行うことは日本人の古来からのお約束だ。
「大祓」が6月下旬に行われる理由は祇園祭と同じだろう。
では、こんな日本の神事をルワンダ人はどう思うのか?
茅の輪
「ワンダフルな缶コーヒー」の意味から生まれた「ワンダ」ならコンビニでよく見るけれど、日本で「ルワンダ」と接する機会はなかなかない。
ルワンダはアフリカ東部にあって、四国の約1.5倍の面積しかない小さな国。
海のない内陸国で、ウガンダ、タンザニア、ブルンジ、コンゴと接しているという説明を聞いて、「なるほど。なら分かる」となる日本人は想像できない。
この地域と日本の関係は本当に薄いのだ。
それはあちらも同じこと。
知人の2人のルワンダ人は日本へ来たころ、寿司店で魚の種類の多さに驚き、生肉の感覚が気持ち悪かったという。
ルワンダはかつてドイツやベルギーに支配されていた歴史があり、現在では国民の約95%がキリスト教徒で、彼らもクリスチャンだった。
ただ、1人はカトリックで、もう1人はプロテスタントだから、同じキリスト教徒でもグループは違う。
そんなルワンダ人に「大祓」について説明して感想を聞くと、2人はこんな話をした。
「穢れ」については聞いたことがないけど、キリスト教では「罪」の考え方がある。
自分の「罪」が原因となって、病気や事故などの不幸が起こると信じられている。
日々生活していると、人はつい罪を犯してしまう。
たとえば、他人の妻を見て「キレイだな」と思うことも罪なんだ。
だから、信者は毎週教会へ行って、聖職者に罪を消してもらう必要がある。
ルワンダと日本はまったく違う国なのに、不幸の原因は穢れにあって、「大祓」でそれを除去する神道の考え方は、ルワンダのキリスト教と似ていて興味深いね。
*これは2人から聞いた話で、欧米のキリスト教も同じ考え方をしているかどうかは知らない。
ちなみに、ルワンダは一年中暖かい国で雨季もある。
でも、特にその時期に病気が増えることはないらしい。
だから、日本の祇園祭のように、ルワンダで特定の月に疫病封じの儀式をするという話を2人は聞いたことがなかった。
蒸し蒸して「G」も出てくる梅雨は不快な時期だけど、こんな平安文化が生まれ、現代でも見ることができるのはラッキーだ。
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